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真の変化を生み出す1年へ|Annual Report 2023-2024

2024.06.21

報告

寄付や社会的投資の促進を担う日本ファンドレイジング協会は、2024年2月に設立15年を迎えました。15年という歳月を経た今、セクターや国境を越えて、社会課題解決に向かうお金の流れを進化させようという新たな取り組みが次々と生まれてきています。
 
大きな変化のただ中にあった2023年度、私たちは未来への投資とも言えるいくつかの重要な挑戦を開始しました。一つひとつの取り組みには多くの困難もありましたが、そこには必ずともに前に進もうとしてくださる会員の皆様の姿がありました。
 
一歩一歩をともに重ねてくださった皆様への感謝とともに2023年度を振り返り、これらの取り組みを未来の社会の確実な変化につなげていくための重要な一年となる2024年度を展望します。
 
2023年度報告・2024年度計画について
さらに詳しくはこちら
 

新しい挑戦
New Challenges for 2023-2024

 
今年度、当会は新たに向こう3年間の中期計画を策定しました。私たちが寄付・社会的投資が広がる先に目指す社会の姿、そしてそのためにどのような変化が必要かを明らかにした「セオリー・オブ・チェンジ2030」が変わることはありません。その中で、当会が組織として注力する領域を定めたのが今回の中期計画です。
 
これからの3年間で、私たち日本ファンドレイジング協会は、寄付・社会的投資が進む社会の実現に向けて、【プロ育成】【市場醸成】【循環拡張】という3つの層のエコシステムを育んでまいります。

寄付・社会的投資が進む社会のための「3つ」のエコシステム

 

 
これらのエコシステムを進化させていく挑戦は、すでに2023年度から始まっています。昨年度、各事業において歩みをともにしてくださった会員の方々へのインタビューとともに取り組みの振り返り、その価値と可能性をひも解いていきます。

第1層【プロ育成】
実績と信頼のあるプロフェッショナルを育んでいく

 
ファンドレイジング・スクール、ファンドレイジング実践プログラム

 
戦略的にファンドレイジングを行いたい組織・団体が増える一方で、実績と信頼のあるプロフェッショナルのファンドレイザーが足りない・出会えていないという現状があります。団体とファンドレイザーをマッチングする新しい試みとして昨年度スタートした「ファンドレイジング実践プログラム」にファンドレイザーとして参加し、2つの団体に伴走支援を行った准認定ファンドレイザーの山本彩海さんにお話しをお聞きしました。

 


山本 彩海さん
NPO法人日本プール利用推進協会代表理事
ファンドレイジング・スクール6期生、准認定ファンドレイザー

 

「ファンドレイジングの実践の場を探していたときにプログラムの存在を知り、ひとりでどこかの団体に関わるよりも、チームを組み、伴走支援の経験豊富なメンターのサポートも得られる点に魅力を感じて応募しました。プログラムを通じて2団体に伴走する中で、団体に対してどこまで踏み込んでいいかなど、教科書では学ぶことのできない実践してみて初めて分かるリアルなコミュニケーションの難しさを感じ、学びになりました。」

 
山本さんはプログラム終了後、新たなNPOでファンドレイザーとしての仕事をスタートされました。「現場に足を運んで寄付者と現場をつなぎ、支援の循環が生まれるための橋渡しになりたい」、力強く語る山本さんの姿に、本プログラムの成果と可能性を感じています。
 
ファンドレイジング経験がほとんどない中でプログラムに参加した団体サイドからも、「一緒に手を動かし、失敗も一緒に楽しみ、学びをともに吸収する中で、ファンドレイザーは単なる外注先ではなく、『苦楽をともにするパートナー』だと感じました」というコメントもいただきました。
 
2024年度ファンドレイジング実践プログラムについてはこちら

第2層【市場醸成】
健全な、より大きな寄付・社会的投資市場を育んでいく

 
社会貢献教育、「寄付白書2025」の出版

 
寄付や社会的投資のすそ野拡大を目指す第2層において、長年の試行錯誤の末、昨年度完成した社会貢献教育のカードゲーム「from Me」は、今年度も事業の要となります。

 
提供開始から1年間で、本カードゲームの体験会参加者数は 2,604 名、公認ファシリテーター数は104名に達しました。from Me公認ファシリテーターと認定ファンドレイザーの両方の資格をもって活躍される江副真文さんに、資格取得の経緯とカードゲームの活用方法についてお聞きしました。
 


江副 真文さん
認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ 広報・ファンドレイジング統括補佐
from Me公認ファシリテーター、認定ファンドレイザー

 

「こども食堂の中間支援団体でファンドレイザーとして活動する中で、寄付に対する意識に大きなギャップがあることを感じ、それを埋めるきっかけを探しているときにこのカードゲームに出会いました。団体内で定期的に体験会を開催し、新しいメンバーと仲良くなるきっかけにしたり、こども食堂という取り組みに対してどのように寄付を募り活動していくかについて、組織一体となって考える機会になっています。」

 
「今後は、こども食堂の運営者や支援企業と一緒にこのカードゲームを行い、対話のきっかけにしていきたい」という江副さんの言葉に、本カードゲームのさらなる活用の可能性を感じました。今年度は、カードゲーム「from Me」の企業や学校での着実な展開に引き続き取り組んでまいります。
 
また、「寄付白書2025」の発行に向けて、今年度より出版プロジェクトをスタートさせます(2025年発刊予定)。最新の寄付市場を把握するだけでなく、調査結果がエビデンスとしてファンドレイジングの実践に活かされる状態を目指してまいります。

第3層【循環拡張】
寄付・社会的投資市場に隣接するコミュニティとの接続

 
アウトカムファンド for IMM、AVPN日本代表パートナー

 
海外や富裕層、遺贈寄付など、日本の寄付・社会的投資市場と隣り合って、大きな可能性を秘めているコミュニティとの接続を目指すのが第3層【循環拡張】です。昨年度、大きな進展となったのはアジア最大の資金提供者のネットワーク「AVPN」の日本代表パートナーに当会が就任したことです。

 
認定ファンドレイザーとしてAVPNとの連携に携わっている伊藤麻里子さんに、本取り組みの価値や可能性についてお聞きしました。
 


伊藤 麻里子さん
AVPN Manager、認定ファンドレイザー

 

「2017年に認定ファンドレイザーの資格を取得後、財団で主に企業や富裕層から寄付をいただく仕事をしていた経験が、アジアの資金提供者のネットワークであるAVPNでの今の仕事につながっていると感じています。これまでは主に日本の社会課題に注目してきましたが、一つ視線を上げてアジアを見渡してみると、同じような課題感を感じて、それぞれの場所で戦っている現状があります。アジア全体でつながり、手を取り合うことで、一国では突破できない壁が突破できるようになる、そんな事例をたくさん作っていきたいと思っています。」

 
「立場の異なるステークホルダーをつなぐ通訳者になりたい」という伊藤さんの言葉に、国や立ち位置が変わっても、ファンドレイザーに求められる媒介者としての役割が変わらないことを実感しました。
 
当会は今年度の総会において定款変更を行い、「日本の寄付・社会的投資」の「日本」の部分を「国内外」に置き換えるスコープの見直しを行いました。国境を越えた視座、リソースを募る側だけでなく、リソース提供する側のインサイトをもつことで、寄付・社会的投資に向かうお金の流れを、より立体的に、そしてよりダイナミックなものにしていきたいと考えています。

挑戦と応援が生まれるエコシステムを育む
 
年次カンファレンス「FRJ|ファンドレイジング・日本」

 
昨年度は、コロナ禍以降オンラインでの開催が続いていた年次カンファレンス「FRJ」を4年ぶりに対面で開催しました。FRJ2024には、対面イベントとオンデマンドを合わせて1000人以上の方々にご参加いただき、公募制の「セッションチャレンジャー」によるセッションも多数実施されました。(FRJ2024の開催報告はこちら
 
セッションチャレンジャーとして、FRJ2024の対面イベントに登壇された松浦史典さんに、挑戦の経緯と登壇にかけた想いをお聞きしました。

 


松浦 史典さん
metaLink 代表、准認定ファンドレイザー
FRJ2022・2023オンデマンドセッション、FRJ2024対面イベント登壇

 

「国際協力分野のファンドレイザーとして10年近く活動してきましたが、FRJは正直自分が出る幕ではないと感じていました。応募するきっかけとなったのは、「自分がやっていることは意外と価値があり、他人のヒントになる可能性がある」と言われたことです。登壇を自分の知識や経験をアウトプットする機会にしたり、それを伝えることでアップデートしたいという気持ちでFRJ2024に挑戦しました。ファンドレイジングには色んな切り口があり、その経験やノウハウが他の人の役に立つ可能性は大いにあると感じています。」

 
「次回も2つほどセッションを応募してみようと思う」という松浦さんの言葉に、挑戦と応援の循環を実感しました。人々の挑戦を可視化し、つながりを力に変えていく場として、今年度もFRJ2025の開催に取り組んでまいります。
 
FRJ2025(2025年1月18日東京・有明開催)についてはこちら
セッションチャレンジャーの募集についてはこちら

新しいパートナーを迎えて
Welcome to the JFRA!

 
これからの世界を生きる世代とともに
CFO(最高未来責任者)に18歳の髙田結愛さんが就任

 
当会は、この度、未来をともに創るパートナーとして、新たに18歳の髙田結愛さんをCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)に迎えました。これからの世界を生きる世代との対話を通じて、私たちが目指すべき社会・組織の方向性を形作ってまいります。

 


髙田 結愛さん
日本ファンドレイジング協会 CFO(最高未来責任者)
高校3年生(18歳)

 

「この度、初代CFOに就任いたしました。私は、より多くの若者の声が届く社会、そして、より多くの若者が社会貢献に役割をもって取り組める社会を目指して活動しています。日本ファンドレイジング協会のCFOとして、二つの社会の実現のために1年間かけて、新しい道を開拓していきたいと思います。」

 
当会は、髙田さんを私たちに未来世代の声を届ける役割だけにとどまらず、未来をともに創っていくパートナーと位置づけ、これまでの経験を活かしていただきたいと考えています。

新理事にフリーランスファンドレイザーの浅井 美絵さんが就任

 
伴走支援のプロフェッショナルとして、数多くの団体やファンドレイザーに寄り添い、ファンドレイザーコミュニティの中で長年活躍してこられた浅井美絵さんを当会の新理事にお迎えしました。

 


浅井 美絵さん
日本ファンドレイジング協会 新理事
フリーランスファンドレイザー、認定ファンドレイザー、認定講師

 

「日本ファンドレイジング協会が立ち上がり、日本でファンドレイジングが学べることにワクワクしながら勉強したのが、もう10年以上前のことになります。以来、協会の活動を通じて出会った皆さんに支えられ、育てられてきました。何か自分にできることでお返しできればという気持ちで今回理事をお引き受けしました。会員の皆さんと同じ目線に立ち、今後関わる人が増えれば増えるほどコミュニケーションを緊密にし、皆さんと一緒に歩いていける組織にしていきたいと考えています。」

283人の声がしめす
ファンドレイジングの現状と多様なキャリアの可能性

 
当会は、昨年に引き続き、6月の総会開催に合わせて、ファンドレイジング業務に関する関心や取り組み状況をたずねるアンケートを実施しました。会員を対象とした本アンケートには、283件の回答が寄せられ、ファンドレイジング実務従事者ならびにファンドレイジング関心層の現状やニーズが明らかになりました。

 


資金調達状況や収入見通し、キャリア展望など
アンケート結果の詳細はこちら

 
会員の皆様が当会に期待することとして、ファンドレイジングのスキル習得の機会に加えて、団体とファンドレイザーのマッチング機会の創出が挙げられました。また、今回新たに追加した「信頼と実績のあるファンドレイザー」として思い浮かぶ人数をたずねる質問には、約7割が「1人から10人くらい」と回答しました。この結果から、そのようなファンドレイザーが未だ少数であること、あるいはそれらのスキルや経験の可視化、会員相互のつながりを強化するための土壌作りが必要とされていることが明らかになりました。

真の変化を生み出す道すじを求めて

 
2024年度は、昨年度の先行投資的な取り組みを確実な未来の社会の変化につなげていくための重要な一年となります。私たちは、日本を課題「解決」先進国にするために、社会のお金の流れを進化させる道すじを覚悟をもって追求してまいります。

 
また、社会、日本、アジアといった広い景色を見渡す目をもつと同時に、お一人おひとりの挑戦に目を凝らし、光を当て、その傍らをともに歩く毎日を大切にしていきます。なぜなら、会員の皆様の挑戦や応援こそが当会の活動を前進させる原動力であり、皆様と一歩一歩の歩みをともにするあり方は私たちが目指す社会の姿そのものだからです。
 

寄付・社会的投資が進む社会とは、
 
「応援し、分かち合える社会。」
「何度でもチャレンジできる社会。」
「誰かの役に立つことが自分自身の幸せとつながる社会。」
「困った時、助けてくれる人がいる。そう、信じられる社会。」

 
日本ファンドレイジング協会10周年宣言より

 
この社会に向けて一層歩みを深めていく一年に、どうぞ皆様のご参加とご支援をお願い申し上げます。

Special Thanks to Our Partners

 
最後に2023年度をともに歩み、2024年度の新たな挑戦をともにしてくださるスペシャルパートナーの皆様を、心からの感謝とともにご紹介させていただきます。

 

Special Partner 2023-2024
 

 
 

 
スペシャルパートナーは、寄付・社会的投資が進む社会の実現に向けて、一緒にチャレンジする法人パートナーです。