【ご報告】ファンドレイジング研究会in大阪
事務局の徳永です。
「ファンドレイジング研究会」は、おもに日本ファンドレイジング協会の会員の方々を対象として、NPOの資金調達改善のために必要な事例研究やスキルアップ研修を行っているものです。参加者相互の学び合いの環境をつくるために、定員は20人程度として、全員参加をモットーにノウハウや知見の集約と共有を図っています。
協会では、これまで東京で10回のファンドレイジング研究会を開催してまいりましたが、8月2日、大阪ボランティア協会に御協力いただき、はじめて東京を離れて大阪でファンドレイジング研究会を開催することができました。
今回のテーマは「コーズ・リレイテッド・マーケティング(CRM)は救世主になれるのか!?」。CRMとは、企業が製品やサービスを販売した際の対価の一部をNPO等に寄付をすることで社会に貢献するマーケティング活動。昨今、日本ではCRMに取り組む企業が増えており、テレビのコマーシャルなどでもCRM関連商品を目にする機会が増えています。
講師は、CRMの研究と普及の第一人者で、「世界を救うショッピングガイド」の著者、野村尚克氏(Causebrand Lab.代表兼プロデューサー)。講演では、たくさんの事例を紹介しながら、CRMが流行する背景とNPOから見た協働のヒントについて解説されました。
野村氏によれば、CRMのポイントは、関係する企業・NPO・消費者の3つのステークホルダが全てwin-winとなる、理想的な三方よし(3win)。企業にとっては、積極的なCSR活動を求める声が高まる中で費用対効果を求める声に応えることができ、かつ、売上の低迷の中でも商品価値を高めて他の商品との差別化が図れるというメリットがあり、NPOにとっては、支援企業の減少やNPO間の競争激化の中で新しいファンドレイジングの手法となり、消費者にとっては社会貢献意識の高まるなかで負担の少ない社会貢献活動となること等が、この3winモデルを実現しているとのことです。実際、消費者調査でも、「参加してみたい社会貢献活動」の上位を、「お買い物募金」、「社会貢献につながる商品の購入」が占めているそうです。
また、野村氏は、CRMに関してNPOが押さえておくべきポイントとして、以下の5点を挙げました。
1.CRMの第一要件は「消費者の参加」であることから、消費者、すなわち「生活者」から支持される団体(わかりやすい・共感されやい)を目指すこと。
2.対象企業としては、差別化効果がでやすい食品、飲料、日用品を扱うで企業にアプローチすること。
3.商品としては、団体の受益者、活動内容にマッチするものを選ぶこと。
4.一般に外資系の大手NPOがCRMに強いのは、そのブランド力が社内説得時に有効だから。逆にいえば、それがクリアできれば国内の小さなNPOも対象となりえる。
5.小さい知名度の低いNPOでは無理というのではない。なぜなら、消費者への訴求点は団体名ではなく、「売り上げの一部を寄付して何々をつくる。」という点にあるから。
さらに、ユニセフがCRMの対象になることが多いのは、社内説得時に安心感を与えること以上に、何よりも、日本一と言われるほどの寄付収入がありながら、その8割が個人ドナー(企業にとっては見込み客となる生活者)であるという点が評価されているからだと述べました。
研究会の後半では、前半の野村氏の講義をうけて、皆で最新のCRM事例などを検証しながら、消費・寄付低迷期に注目されているCRM戦略が寄付市場の拡大をもたらすための課題について話し合いました。
・CRMの多くが商品で、サービスではない理由は、日用品などと違い、サービスは、それ自体に差別化がしやすいものだからCRMの必要性が低いため。
・商品に付けるのは、団体のロゴよりも活動を象徴するシンボリックなロゴがいい。
・NPOが提案する際には、企業の論理、「売上を上げたい」という本音を理解する必要がある。理想論ばかりの建前だけの付き合いでは、良い連携が出来ない。
・経営者が出資者を納得させるには、CRMは、売り上げアップと同時に、社員のモチベーションやロイヤリティの向上にも役立っていることを示せばいい。
・人権、買春反対、HIVといった、深刻なテーマは、CRMには不向きかもしれない。むしろ、社会的課題解決に熱心なCSR部門で理解されやすい。
こういった中身の濃い議論が続きました。
また、多くの参加者の方が、研究会に備えて色々な事例を収集してこられ、サンプルやチラシとともに発表したり講師に質問をしたり、あっという間の2時間でした。
最後に、野村氏は、「日本でのCRMは始まったばかりNPOも企業も学び始めの段階。失敗を恐れず、果敢にチャレンジしてください。」と締めくくり、研究会は終了しました。
なお、毎回、研究会では、終了後に「1時間だけ」の懇親会を開催します。この日も、ほとんどの方が参加され、講師を交えて和やかな交流と熱心な議論が続いていました。また、終了後の週末には、参加者がオンライン上(ファンドレイジングネット:http://frn.jfra.jp/)で、研究会を振り返る「書き込みイベント」も行います。研究会の2時間だけではなく、その後に皆で振り返ることで、さらに学びが深まればということで始めたものです。
協会では、今後とも地域の皆様の御協力を得ながら、各地で研究会を開催していきたいと考えています。皆様も、会員となってファンドレイジング研究会に御参加されてはいかがでしょうか。よろしくお願い申し上げます。
会員お申し込みは下記からお願いたします。
https://jfra.jp/wp/join/
今年度の研究会の予定(東京)は下記をご覧ください。
https://jfra.jp/wp/2010/06/29/2010frkenkyuuka/
次回のお申し込みも受付中です。
https://jfra.jp/wp/2010/07/22/frk11/