全ての寄付を一律に規制するような新法制定の議論について
今般、消費者庁において設置された「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」において、10月17日に報告書がまとめられ、現在与野党で様々な検討が進んでいます。生活困窮者や虐待被害者、孤立孤独にある人達を常日頃から寄り添い支援する私たちや私たちの仲間も、霊感商法はじめ、本件検討の対象となる深刻な被害にあわれた方々の救済を迅速にすすめることは重要であると考えています。
一方で、今回の一連の検討の発端となった宗教法人だけではなく、NPO法人、公益法人、学校法人、社会福祉法人等までを含む「全ての寄付を一律に規制」する新法「寄付規制法案(仮称)」が検討されているという報道があります。この点については、慎重・丁寧な議論が必要であると考えるものです。日本における寄付は、寄付者の寄付動機、寄付主体、寄付対象分野・使途、寄付方法も多様であります。また寄付を受け入れる法人の立法根拠、ガバナンス、情報公開等も法人格により様々であります。このような現状に鑑み、寄付の一律規制については慎重・丁寧な議論が必要です。
寄付は多様な価値観やニーズに基づく個人の共感的な社会貢献活動であり、法律で一律に規制することになじまない側面があります。私たちは、「寄付者の権利宣言」「ファンドレイジング行動基準」などの倫理基準を多様な議論を経て民間として制定し、有資格者のファンドレイザーには署名を求めています。しかし、いったん法律が制定されると、所轄庁において法の定めることを一律的に実施せざるを得ず、場合によっては社会の実情には最適ではない対応が行われる可能性があります。寄付を一律に規制する法案は、制度のはざまにあって困難な状況にある人たちへの支援を減少させ、社会問題を増大させる恐れがあります。
重ねて本件検討にあたっては、実情や法案が及ぼす想定外の影響を把握するためにも寄付者・NPOや公益法人等の当事者との丁寧な対話を行い、拙速な法律制定のないよう求めます。
認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会