【ご報告】 第2回ファンドレイジング研究会
■企業に対するファンドレイジング■
~企業への伝え方の極意~
9月7日、午後6時半から8時半まで、日本財団ビル会議室で、第2回ファンドレイジング研究会を開催しました。
「ファンドレイジング研究会」は、当協会の会員を対象として、NPOの資金調達改善の事例研究やスキルアップ研修を実施することを目的とするもの。相互の 学び合いの環境を担保するために、人数を20名と限定して、参加型で開催することで、ノウハウや知見の集約、共有を図ります。
その第2回目のテーマは、「企業に対するファンドレイジング ~企業への伝え方の極意~」。
講師は、富士ゼロックス東京株式会社 マーケティング本部CSR部社会貢献推進グループの伊藤清和氏。
企業の人を相手に、非営利組織の活動をうまく伝えることに苦労している団体は少なくありません。伝えるのには、「伝える中身」も重要ですが「伝え方」もと ても大切。そこで、長年、富士ゼロックス東京のCSRご担当者としてNPOとかかわってこられ、あわせて、同社の営業担当者の研修のも携わってこられてた 伊藤さんに講師をお願いしました。
今回は、まず、ロールプレイに挑戦しました。このロールプレイは「否定的態度への対応」を学ぶものとして、伊藤さんは「否定的」な態度に徹され、難攻不落の担当者を演じられました。挑戦者は、日韓アジア基金・日本の大澤龍さんと、かものはしプロジェクトの岩澤美保さん。
はじめに、大澤さんが、ご自身が支援しておられる、フローレンスについて、富士ゼロックス東京のCSR部の伊藤氏に対して支援を求めるという設定でロールプレイを行いました。
大澤さんは、病児保育のシステムが会社で働く女性たちにとって必要なものであるというポイントを挙げながら、法人入会と支援を求めました。それに対して、 伊藤氏は、病児保育のリスク管理がどうなっているかという点についての質問や、病児保育の対象地域が都内に限られているが、自社に勤務の女性のほとんどが 都外に在住していることなどを挙げて、法人契約は難しいと対応されていました。また、寄付については、会社としては予算が確定しているのですぐには無理だ ということ、同社の社員が給与から拠出金を出している「かけはし倶楽部」からの寄付については、原則的に、社員がボランティアに関わっている団体が対象で あるということから難しいと述べていました。
ロールプレイ終了後、伊藤氏は、わかりやすい説明資料がきちんと用意されていたことが良かった、しかし、プレゼンの前半のほとんどが大澤氏の説明を一方的 に聞くだけで終始していたことから、説明の途中で、相手の質問や同意を引き出すような会話術が必要だとコメントされました。
次のロールプレイは岩澤さん。岩澤さんは、伊藤さんを家庭学習用の教材を販売している会社のマーケティング担当者に想定して、かものはしプロジェクトへの 寄付を付けた寄付付き商品の提案を行いました。伊藤氏は、マーケティングとしては、売り上げがどこまで上がるかを常に考えて商品開発しており、かものはし のカンボジアでの買春阻止と女児の自立支援が、小学生を対象にした教材の売り上げにつながるとは思えないと答えていました。
終了後、伊藤氏は、社会的に意義のある活動であることは十分に理解できるが、商品売り上げに結び付ける提案は難しいテーマなので、提案先はマーケティング部門ではなく、社会貢献担当部署の方が良かっただろうとコメントされました。
つづいて、伊藤氏が、「企業への伝え方の極意」をレクチャーされました。
伊藤氏は、「交渉の虎の巻」として、「MANの法則」、「AIDOMASの法則」、そして、「ザイアスの法則」を解説しました。
「MANの法則」では、Money(金), Authority(権限), Needs(必要性)を持っているのは誰かということを見極めて交渉相手にすることが必要だと述べました。なかでも、重要なのは「権限」で、提案の採択に 関して、最も権限を持っているところを訪ねることが大事だとしました。
「AIDOMASの法則」では、Attention(注意),Interest(興味),Desire(欲求),Memory(記憶),Action(行 動),Satisfaction(満足)をいかに喚起するかが重要だと述べ、なかでも、初めの「注意」をいかに引くかが大事であるとしました。「あっと思 わせるようなプレゼン」が出来れば、その後の展開がうまくいくということです。
「ザイアスの法則」では、人間は知らない人には冷淡で攻撃的になる場合が多く、逆に、会えば会うほど好意的になり、相手の人間的な側面を知るとより強い好 意を抱くことになるということを述べ、企業を訪ねたら、たとえ否定的な態度にあっても、めげずに再訪問すること。そのためには、最初の面会で何かしらの 「宿題」をもらって、その回答を携えて再訪問を試みることが必要だとアドバイスされました。
さらに、否定的な態度については、交渉途中に相手がとる3つの否定的態度として、「無関心」、「会話拒否」、「電話での会話拒否」を挙げられました。
その対応として、「無関心」については、まず、受容すること。そして、相手の示した無関心な態度や言葉を尊重しながらその態度に即した質問をするといいとアドバイスされました。
「会話拒否」についても、受容し来意をきちんと告げて再度反応をみる、そして反応があれば、課題について質問するといった工夫が必要だと述べました。
「電話での会話拒否」については、電話では切られてしまうということがあるため、対応が難しいが、その場合は、時間をおいて改めてかけ直す、違う部門にかけてみる、直接訪問する、といったチャレンジをしてみるといいとアドバイス。
いずれの場合にも、今後も継続した情報を提供させていただきたい旨を伝え、辞去することが基本だとしました。
また、交渉の過程では、自分が言いたいことを述べる以上に、「傾聴」の態度が重要であるとし、相手の気持ちや話の内容を受け止め、理解したことを自分の気持ちにして伝えることを忘れないでほしいと述べました。
その後、3グループにわかれて、各々の体験・今日の気づきを話し合いました。
ロールプレイヤーを務めたお二人からは、「これまでも企業に対する提案等の経験があったが、今日は皆さんの前で、しかも時間制限がある中でやったので、と ても緊張しました。でも、具体的なアドバイスを受けたことで、これまで気づいていなかった改善点を知ることができて、とても有意義でした。今日の経験を、 すぐに団体内でも共有して、今後に活かしたいと思います。」との感想をいただきました。
最後に、伊藤氏からは、「企業が社会貢献を行う際に、NPOの皆さんとの連携は不可欠です。ですから、ぜひ、いい提案をどんどん持ち込んであげてください。企業は、皆さんを待っています。」との応援メッセージをいただき、第2回の研究会は終了しました。
毎回、研究会では、終了後に「1時間だけ」の懇親会を開催します。この日も、ほとんどの方が参加され、和やかな交流と、熱心な議論が続いていました。また、協会の事業に対するアイディア等もたくさんいただきました。
なお、研究会では、毎回、終了後の1週間後に、参加者がオンライン上(ファンドレイジングネット:http://frn.npoweb.jp/ )で研究 会を振り返る1日書き込みイベントを行います。研究会の2時間だけではなく、その後に皆で振り返ることで、さらに学びが深まればということで始めました。
研究会は会員限定で開催されるものです。会員となって御参加を希望される方は、こちらから会員申し込みをお願いいたします。