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【ご報告】ファンドレイジングセミナー2012 第2回「利他的行動論」

2012.11.09

テーマ:「利他的行動論」
日時:2012年10月31日(水)18時30分~20時30分
会場:日本財団ビル 2階大会議室
講師:坂本文武 氏(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科准教授)
記録担当:村松正彦(日本ファンドレイジング協会ボランティア)

【講師の紹介】
坂本文武 氏(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科准教授)
イノベーション等の組織論や利他的行動を研究するかたわら、企業の社会戦略や企業文化変革の経営コンサルティングのほかNPO支援を行う。著書に『NPOの経営』、『ボーダレス化するCSR』、『環境CSR宣言―企業とNGO』等。日本NPO学会理事、ガールスカウト日本連盟評議員のほか、神奈川県や神奈川県藤沢市、東京都中野区などの行政委員など。米大学院にて非営利経営学修士号習得。

【坂本氏の講演】

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・問題提起
普段は大学にて、利他的行動論について講義を行っている。利他的行動は様々な見方があるが自分はボランタリー行動論の見地から研究をしている。
ファンドレイザーの皆さんは「共感が大事」とよく言われる。「共感」とは何だろうか?今回のセミナーを、「共感」や「利他」の知見を深めるきっかけとしてもらいたい。

・文化人類学における「利他」
文化人類学者は「贈り物をする」という利他的行動を、「自己の社会集団での位置確認」と見る。
送り/受け取るという贈答行為でこのことを確認する。例えば、トロブリアンド諸島のクラなどが事例。これで助け合いのネットワークを作っていると考えられる。

・感情科学における「利他」
感情科学の見地では、感情とは「必要だから、その感情を起こして、行動を制御する。」という応急処置システム。
「感情によって、短期的な利害より、長期的な利害に向かわせ、その個体の遺伝子の生存可能性を高める」ということが、利他の理由と考えられている。
欧米は「相互独立的自己観」、東アジアは「相互協調的自己感」を持つと考えられている。

・脳科学における「利他」
脳科学での「利他」の扱い方は、基本的に感情科学と同じ。
己の属する生態系総体の利益を考慮し優先する利他の動きは、利己一辺倒の生命を圧倒する生存戦略と考える。
中脳腹側被蓋野のA-10神経系は、メタ認知(自分を客観視する能力)を可能にする。これにより、脳は生態系総体の利益を考慮する事が出来る。人間はA-10神経系のオートレセプターが欠如しており、これが人の利他的行動に関係していると考えられる。

・法哲学における「利他」
公の為に何かすると、「利他的」と言われる。しかし、自分が良かれと思ってする事を、他人に強要は出来ない。
つまり、「制度として強要しない、利益の負担や配分を行うのは無理がないか?」というのが、法哲学者の立場。

・消費行動論における「利他」
消費行動論では、消費を「一次的消費」と「二次的消費」とに分けて考えている。
一次的消費とは、欠乏を解消する為の消費。二次的消費とは、金銭的な見栄である。そのために、ブランド品を買い、新しい商品も買う。

・孤独と共感
人間は一人では生きられない。人間は多数の同類の人と生きると、生存確率が飛躍的に上がる。
集団からの阻害は強烈な精神的痛みを感じる。孤立感・孤独感は肉体的な痛みとして感じるよう人間はプログラミングされている。疎外感を感じると、他者の精神状態を理解する能力が圧倒的に落ちる。

近代社会に至る以前は、「同情」「哀れみ」での繋がりが多かった。「哀れみ」に対する寄付はしやすい。しかし、近代社会は「同情」を嫌い、経済復興の中で「共感」が出て来た。「共感」を如何に寄付に繋げるかがファンドレイザーの腕の見せ所となる。

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【質疑応答】

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質問者:欧米と日本とでは、自己観が違うとの事。地域によって価値観が違うのは何故?
坂本氏:歴史・職業・自然環境などにとって、適切な価値観の形成は変わってくる。

質問者:CSR部門で仕事をしている。今日の話しは個人の話が多かったが、組織となった時に行動に違いは出て来るか?
坂本氏:集団の作用がある。複数の人間が組織化する時に、考えが凝り固まったり、考えが浅くなったりしてしまいやすい。