【メディア掲載】ザッカーバーグ氏が5.5兆円寄付 これって文化の差?
【メディア掲載】2016年1月20日付、朝日新聞に、弊協会代表理事のコメントが掲載されました
「ザッカーバーグ氏が5.5兆円寄付 これって文化の差?」
以下、転載です。
日米の寄付額
フェイスブック社の最高経営責任者マーク・ザッカーバーグ氏が、5兆5千億円相当の寄付を表明した。一方、日本では1年間の総額が約7400億円。この差、日米の制度や文化の違いによるものなのか?
ザッカーバーグ氏は昨年12月、「娘への手紙」をフェイスブックに投稿。保有する自社株の99%を、生涯をかけて社ログイン前の続き会貢献活動に寄付すると明らかにした。表明時の時価総額で約450億ドル(約5兆5千億円)。コメント欄には「次世代へのすばらしい約束」といった言葉が並び、動画は約600万回再生された。
■5.5兆円あれば何ができる?
5・5兆円と言われても、なかなかぴんとこない。いったい、それだけのお金があれば、何ができるのか。2015年度の日本の国家予算のうち、文教・科学振興費がほぼ同額の5・4兆円。待機児童の解消などを目指す「子ども・子育て支援新制度」は、国と地方合わせて約5千億円弱なので、10年分だ。
米国で巨額の寄付をする人たちは珍しくない。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は約9兆5千億円とされる個人資産の95%を投じ、ポリオなど感染症の撲滅などをめざす。ゲイツ氏は投資家ウォーレン・バフェット氏とともに、資産の半分以上を社会貢献活動に寄付する運動を始めた。こうした著名人だけでなく、14年の米国の個人寄付総額は約27兆3500億円にのぼる。
■日本の寄付額、米国の37分の1
一方の日本側。寄付白書を発行するNPO法人・日本ファンドレイジング協会によると、14年の個人の寄付総額は約7400億円で、米国の37分の1にとどまるという。
ここまで差があるのは、キリスト教が根づく米国だからこそでは、という声もある。だが、比較宗教学が専門の保坂俊司・中央大教授は、「寄付の精神は、イスラム圏や仏教圏でも一般的」と言う。富を分かち与えることで、現世の罪の軽減や来世の幸福が得られ、自分の救いにつながるという考え方があるからだ。
保坂教授はさらに、「日本にも寄付精神はあった」と指摘する。江戸時代には、神社やお寺をお金を出し合って支える文化が存在した。「戦前・戦中の社会が、国家神道など公益を極端に強調する方向に突き進んだことへの反動から、戦後は個人主義へ傾いた。結果、自分を生かすために他者を生かすという考え方が薄らいだのでは」とみる。
■税制米国並み、成果見えれば
制度の違いという面では、日本でも11年に寄付税制が変わり、所得税の減税額が上がるなど、寄付する側のメリットが広がった。寄付対象も学校法人や認定NPO法人などがあり、日本ファンドレイジング協会は「制度上は米国と比べても遜色ない」と言い切る。NPOや企業などで作る寄付月間推進委員会が15年から、12月を「寄付月間」とし、ゲイツ氏を招くなど、多くのイベントを催した。
ただ、会社員ならあまりしない確定申告の手間がかかる面もある。協会の鵜尾雅隆代表理事は、「米国では学校で社会貢献について学ぶ機会も多く、社会的な課題の解決にお金を使う考え方が浸透している。日本でも身近な団体に寄付し、目に見える成果を感じられれば寄付は広がるはず」と話す。(小林恵士、仲村和代)