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【メディア掲載】<市民活動とお金> (下)善意を橋渡し

2015.10.16

メディア掲載

10/8(木)付け中日新聞に、評価に関する研修をご取材くださり、コメントとして掲載してくださいました。
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2015100802000004.html
 
以下、記事です。
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<市民活動とお金> (下)善意を橋渡し
 
 「私と同じように障害に苦しむ人に、役立ててほしい」。大阪府内の女性(75)は昨年三月、大阪コミュニティ財団(大阪市)に百万円を寄付した。財団は個人や団体から寄付を集め、市民活動などに助成している。
 
 女性は五歳で結核性脊椎カリエスを発症し、呼吸器に障害がある。手術のため入退院を繰り返して満足に学校に通えず、高校は半年で退学した。
 
 寄付金は、夫婦で営んだ事業による収益などから出した。財団を寄付先に選んだのは、取引先の信託銀行担当者から「寄付先を指定できる」と聞いたから。過去にも国などに寄付したことがあるが、財団の名を聞いたのは初めてだった。調べてみると、「自分の願いを生かせるのでは」と思った。
 
 寄付金をもとに設けられる財団の基金は、寄付者が自由に名称を付けられる。女性は「戦中戦後の苦しい時代に病気の私を必死に育ててくれた母へ感謝を示したかった」と、母親の名前の一部を名称に使った。助成対象も「社会福祉の増進」に指定。助成団体はまだないが、「満足しています」と女性はほほえむ。
 
 財団は、大阪商工会議所が一億円、大阪府と大阪市も各二千五百万円を拠出して一九九一年に設立された。当初、ほぼ全てが企業など団体からの寄付だったが、二〇〇二年度に個人が逆転。一四年度は個人が66・3%を占めた。
 
 事務局長の勝山英一郎さん(54)によると、個人の寄付者が最も気にかけるのは「ちゃんと目的通りに使われるのか」という点だ。財団設立時に、行政や経済界から出資してもらい、助成先は大学教員ら選考委員八人が決めるなど、透明性と公平性を担保した。
 
 寄付者が好きな名称を付けられたり、助成先を十一分野から選べるようにしたのは、寄付者の思いを目に見えるようにした仕掛けだ。「篠田重晃障がい者大学進学助成基金」「森下泰・美恵子記念癌(がん)研究基金」などの名前を用いた基金が多い。
 
 勝山さんは「社会に貢献したいと思っている人は意外と多い。善意をどう形にするかです」と、寄付者と市民活動の橋渡し役を自任する。最近は年平均で百五十件ほどに約七千万円を助成している。
 
 一方、助成する企業や団体は事業実施による効果や影響を重視するが、助成を受けようとする市民活動の側が把握していることは少なく、助成を受けにくい要因のひとつになっている。
 
 「通常の活動報告書は、実施した事業を示すにとどまっている。寄付や投資を受けるには、事業が社会やサービス対象者にどんな変化を与えたかを明確にするのが大事だ」。資金集めの方法を教えるNPO法人「日本ファンドレイジング協会」(東京都)が九月に都内で開いた研修会。事務局長の鴨崎貴泰(よしひろ)さん(37)が強調した。
 
 協会によると、寄付先を選ぶ際は「活動や目的に賛同できること」や「寄付の使い道が明確で有効に使ってもらえること」が重視される傾向にある。市民団体の職員は日々の業務で手いっぱいで、社会に与えた影響の評価まで手が回らないことが多いが、最近は評価が手軽にできるインターネットサービスも登場している。
 
 「寄付者にとって、お金がどう使われ、どう社会を変えたのかは大きな関心事。その点を明らかにすることが、寄付を考えている人へのアプローチになる」。鴨崎さんは呼び掛ける。

 (諏訪慧)