今回から新連載となる「実践!フィランソロピー教育」。全6回に渡り、フィランソロピー教育・寄付教育の日本での歴史や国内事例、海外事例、そして日本ファンドレイジング協会が取り組む「寄付の教室」(2010年から4年間で、のべ約70教室・2200人の子どもたちと実施)の実例などを交え、フィランソロピー教育・寄付教育を実践していくためのヒントをお届けしていきます!
これは、日本ファンドレイジング協会が全国の小中高校で行っている「寄付の教室」という体験型学習プログラムを受講した小学校6年生の女の子が、授業の振り返りで書いた感想です。
子どもたちの自己肯定感が低下しているといわれている中で、フィランソロピー教育を行う意味・価値というのは、“寄付やボランティアを通じて誰かを支援し応援する経験を得ることで、自分が社会にとってかけがえのない存在であることに気づき、自分に自信を持てるようになること”ではないかと思います。
日本社会では「寄付を行う」ということを体系的に学ぶ機会が圧倒的に不足しているということが、日本の寄付文化の醸成をミッションに掲げた日本ファンドレイジング協会が、フィランソロピー教育に取り組み始めた理由です。
様々な識者が指摘するように、“個々人の多様な価値観に基づき主体的な選択をし、社会的な課題を支援することを通じて自己が社会にとってかけがえのない役割を持つことを知る”ということがフィランソロピー教育の本質であるといえます。その上で、フィランソロピー教育における大切な価値観は次の3つであると考えています。
これから、日本社会の中でフィランソロピー教育を行っていく上では、これら3つの価値観を踏まえつつ、まずは、“子どもたちが自分の価値観を大切にして、共感した活動や団体を応援すること、そしてその楽しさを体験する”機会を意識的に提供していかなければならないと思っています。自分の価値観が受け入れられ嬉しい、そして応援して感謝されることは楽しい、ということがフィランソロピー実践の原動力になるからです。
日本では、フィランソロピー教育はボランティア教育が先行する形で始まりました。1970年代後半からボランティア学習という言葉が使われ始め、80年代頃から教育における社会参加評価の必要性がいわれ始めました。
90年代に入ると総合的な学習の時間の導入と軌を一にするように高校でボランティア活動の単位認定が認められたり、大学でのボランティアセンターの設置、生涯学習、ボランティア活動の推進が図られたのです。
他方で寄付に関する教育機会は、これまで散発的に提供されてきましたが、大きな流れとして教育現場に導入されてこなかったというのが現状です。
これまで行われきたフィランソロピー教育プログラムを図のように整理してみました。
ポイントは、4に該当する、寄付を体験しながら体系的に学べるフィランソロピー教育の提供が不足しているということなんです。寄付を行うということはどういうことかとか、どういう効果があるのかとか、どんな社会問題がどういうふうに解決されるのかなどを、授業の中で楽しんで体験しながら学ぶプログラムは、いまの日本社会の中では大変重要でありながら、取り組まれてはきませんでした。
次回は、日本ファンドレイジング協会が独自に創り取り組んでいるフィランソロピー教育「寄付の教室」プログラムをご紹介するとともにその効果や反響などもお届けしていきます。
2010年12月から取り組み始めました日本ファンドレイジング協会のフィランソロピー教育「寄付の教室」。授業の終了後のいろいろな気づきを学びが毎回あるいのですが、それをまとめた「じゅぎょうまなび」を最後に紹介していきたいと思います。
これは、昨年の3月に北九州市の鞘ヶ谷小学校4年生たちと行った「寄付の教室」後に出た質問です。実は、これって結構すごいことだと思っていて、「知らない」から「知る」は受動的なインプットなんですけど、「知る」から「興味を持つ」って能動的なアクションに変わるんですよね。
【インプット】NPOや社会貢献活動を知らない → 「寄付の教室」で知る → 【アクション1】興味を持つ → 疑問がでる → 調べてみる → 【アクション2】コンタクトを取る → 参加する → 楽しい → 支援する → 支援の輪を広げる
「興味を持つ」は、他人事を自分事に近い問題や課題として捉える段階だと思うんです。
明らかにこの「知る」と「興味を持つ」の二つの行為の間には大きなステップがあって、これを上ると後は自分でどんどん関心のある団体や分野を調べていくんです。
「寄付の教室」の役割は、まずは、NPOや社会的な活動を応援する楽しさや難しさを知って関心を持ってもらい、興味を持って調べてコンタクトを取って活動に参加した時に、
楽しさやワクワク感を感じてもらえるようなプログラムを提供することにあるんだと実感した機会でした。
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