無料 投稿日:2018年12月7日

スペシャルパートナー対談、第三弾!「ICTで地域を元気に。ふるさと納税を通じて地域の自立を目指し走り続けるトラストバンクの挑戦」

スペシャルパートナー対談、第三弾の今回は、日本最大級のふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」を立ち上げた株式会社トラストバンク代表取締役の須永珠代氏(写真右)をお迎えします。ふるさと納税のブームを作り上げ、地域へのお金の流れを生み出した立役者に、日本ファンドレイジング協会代表理事の鵜尾雅隆(写真左)がふるさと納税のさらなる可能性についてお話を伺います!

プロフィール

株式会社トラストバンク 代表取締役 須永 珠代

聞き手

日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾 雅隆

※スペシャルパートナーは、寄付・社会的投資が進む社会の実現のために、日本ファンドレイジング協会と一緒にチャレンジする法人パートナーです。

派遣社員を続けるか、起業するかの二者択一でした

鵜尾:まずは、トランスバンクを立ち上げた経緯と、地域に注目されるようになった流れをお聞かせください。

須永:私は当時、派遣社員でした。就職したくてもリーマンショックが起こった2008年はどこの企業も採用してくれない、派遣社員しか選択肢がない状況でした。このまま派遣社員をずっと続けるか、起業するか、という二者択一だったわけです。

鵜尾:発想の飛び方が面白いですね。中国の起業家で、先日引退を宣言したアリババ創業者のジャック・マ-氏も、就職できなかったので起業したそうです。

須永:同じですね(笑)。自分でやりたい事があったので、私にとって選択肢はこの2つしかなかったのです。



日本最大級のふるさと納税ポータルサイト『ふるさとチョイス』

鵜尾:自分でやりたい事の主軸は、最初から「ICTと地域」だったのですか?

須永:「地域」という軸は、その時はまだなかったですね。IT企業で働いていたので、「ICT (Information and Communication Technology(情報通信技術)」は私の強みでした。しかし、ICTは単なるツールですので、それをどう活かすのかを悩みました。クライアントの要望を満たすだけではなく、社会のどこにニーズがあり、仕事につながるのか?ICTを使っていかに社会に貢献するか?ということです。企業は社会から求められてこそ存在意義があり、利益を生みます。起業してはじめて、その当たり前のことに気がついたわけです。

鵜尾:目の前の顧客から求められたものに単に応えるステージと、社会のために価値のあるものを提供しようというステージは、明らかにレイヤーが違いますね。

須永:価値が人を作ると言われていますが、価値が企業をつくる。起業しないとこの視点は見えてこなかったと思います。

ふるさと納税は、ただの「ツール」にすぎません

鵜尾:御社はこの数年間で急激に成長してこられましたが、はじめからこの成長イメージはありましたか?

須永:全く無かったですね。ゼロです(笑)。ふるさと納税は、当初は誰も見向きもしませんでした。都道府県会館にアポなしで飛び込み、様々な自治体の担当者にパンフレットを渡して説明する、主要メディアにFAXと電話をかけるといった働きかけを地道に続けました。本気で取り合ってくれる人はほとんどいませんでしたが、否定はされず、「ハードルはいろいろあるけれど、取り組みとしては良い」と感じました。

「これはいける」とスイッチが入ったのは、友人に紹介されてある自治体担当者に会ったときです。2012年4月に起業し、その年の9月にサイトをオープンして、12月に日経マネーに小さな記事が載りました。翌1月には日経トレンディに見開きで取り上げられ、テレビでも広がり始めました。2012年の12月がターニングポイントでしたね。



鵜尾:最近では、ふるさと納税から一歩踏み出して新しいことを考えていらっしゃいますね。

須永:当社のミッションは「ICTを通じて地域とシニアを元気にする」ことで、ビジョンは「自立した持続可能な地域をつくる」です。ふるさと納税は単なるツールでしかなく、ふるさと納税だけに頼っていては自立には程遠いと思っています。

そこで現在、電力事業を検討しています。地域の経済的自立を考えたとき、誰もが使うインフラである電力は、地域経済の中でとても大きな割合を占めています。原発の問題もありますし、自然エネルギー由来の電力の地産地消を目指しています。そこに地域の新しい産業基盤の可能性があると考えています。

鵜尾:地域の経済的自立ですね。自分たちの収入の何割を地元で消費しているかを考えると、今は大変難しい時代だと思います。地域にもコンビニや大手スーパーがあって、そこで買い物をすると、利益は東京や大阪の本社に吸い上げられてしまう。昔は当然のように地元で買い物をしていましたが、今は地元で消費しない構造になっています。ネット通販の発達も大きいですね。利便性と引き換えに失った物があるということです。



須永:本社に入った利益の一部は税金として国庫に入り、地方交付税となって地域に還元はされているわけですが、それだけでは地域は元気になれません。地域の産業が疲弊していると、仕事がないので、若い働き手は地域から出て行ってしまいます。エネルギーも消費財も、外から買っているとお金も地域から流出します。人もお金も出て行ってしまうと新たな産業が育たないのです。

今は出ていく資源が多く、入ってくるものが少ない経済構造になっています。入ってくるものは小さくて良いからきちんと伸ばし育てる必要があります。そのひとつが「ふるさと納税」です。小さな経済圏で良いので、人とお金、そしてエネルギーという資源がぐるぐる循環していると地域は自立できると思います。

「地方交付税不交付」の自治体を出すことが私の一つの目標です

鵜尾:地域経済の第一のリソースとして地域にはいってくるふるさと納税、第二のリソースとして地域から出ていくものを抑える。そして地域内で資源を循環させて構造そのものを変えるということですね。これまでのプレーヤーでは仕掛けられなかった改革ですね。
地域経済の地産地消を仕掛けるにあたって、どのような構想をお持ちですか?

須永:地域の資源を循環させる小さなロールモデルを作って発信していきたいと思っています。トップダウンで成功したロールモデルは既にあるので、ボトムアップのロールモデルを作っていきたいです。まずは、地方交付税頼みの地域経済に活を入れたいですね。

日本では、昔は繊維産業が主要産業でしたが、高度成長期にそれが自動車産業に切り替わりました。現在、地方交付税の交付を受けていない自治体は、東京23区とそのベッドタウン、自動車産業や原発の地元しかありません。産業としては自動車と原発しかないのです。それら以外の産業で、地方交付税不交付の自治体を出すことが私の一つの目標です。

鵜尾:ふるさとチョイスでアカウントを持っている自治体は全国で1400以上、全自治体の80%以上にのぼると伺っています。そのネットワークの中で、何かをきっかけにパラダイムシフトが起こるかもしれません。



2018年10月時点で、1400団体を超える自治体(全国自治体数:1788自治体)がふるさとチョイスに参加している

鵜尾:例えば、ハリケーン・カトリーヌの被害を受けたアメリカのニューオリンズは、ハリケーンの被害にあった2005年当時、経済が低迷し、人口が流出する状況にありました。そこに全米史上最悪の災害がおこり、全米および世界各国から寄付金が集まったわけですが、それが転換点になりました。財団が主導し、雇用が伸びる分野に絞って起業家を誘致し、彼らを支えるシステムを整備しました。その結果、経済が活性化し、今では「起業家のまち」として、全米レベルでサステナブルなアイコンのひとつになっています。

ふるさと納税の課題は、それをどう活かすかです

鵜尾:総務省がふるさと納税の過分な返礼品を取り締まる動きが出ていますね。ふるさと納税の今後についてはどうお考えですか?

須永:今回の総務省の決定で、ふるさと納税の伸びはひとまず落ち着くと思っています。
ふるさと納税は住民税12兆円の中の最大で2兆円規模の話です。この制度は、首都圏に集まりすぎた税金を、国が地方交付税として地域に分配するのではなく、国民ひとりひとりが自分たちの意思で分配できるようになった画期的な制度です。課題はそれをどう活かすかです。

ふるさと納税の返礼品は、納付額に対して原価3割以下と定められています。返礼品は、仕入れ値ではなく売り値で自治体が買い上げているので、農家や返礼品の産業にかかわっている人々にとっては大変利益率が高いのです。その利益をどのように投資するかだと思います。

寄付金の残り7割は自治体に入ります。これも投資するべきです。自治体には投資という考え方はありませんが、創意工夫が必要です。現在は一般財源に入れているか、基金を作って積み立てているだけの自治体が多いのが現状です。



ふるさと納税の使い道をより具体的にプロジェクト化し寄付を募る仕組み
「ガバメントクラウドファンディングⓇ」

鵜尾:確かに、地方交付税と同じような使い方をするだけでしたら、大変な手間がかかるふるさと納税の仕組みは必要ないですね。交付税とは違う、自治体が自由に使えるふるさと納税は、産業を活性化させ、働き手が流出しないだけでなく新しい住民を増やすような新しい施策をうてる貴重な資産です。

御社は、地域全体の戦略の中で、ふるさと納税をきっかけにして、地域経済の地産地消をアイディアのレベルから一緒に作っていこうとしているわけですね。その熱い想いがひしひしと伝わってきます。

未来から逆算して、必要な人材を巻き込んでいく

鵜尾:日本ファンドレイジング協会は、今年度10周年を迎えます。今、改めてゼロから再構築するために色々なステークホルダーの方々と議論を重ねています。御社が私たちに期待することは何でしょうか?

須永:社会課題を解決するためには、桁違いに大きなお金の流れを変える必要があると思っています。今、お金は社会の中の一部の限られた分野である、金融と不動産、そしてIT産業に偏在しています。それらの分野の人々を、社会問題をともに解決していく側に引き込んでほしい、と思っています。彼らはお金を生むスペシャリストなので、その人たちを巻き込まないと桁違いのお金は動かせないと思うのです。



須永:先日、米国の世界的に有名なサービスを日本に導入した方とお話する機会がありましたが、彼らのスケール観は並外れており、そのスピード感は行政組織の300倍だと感じました。様々なアイデアを持っていて仕事はゲーム感覚。動かしているお金は桁外れに大きい。この人たちを巻き込めたら、地方創生など楽勝だと感じます。この人たちを巻き込んでほしい。言い方を変えると、10年後には当然巻き込まれていなければならない人たちをバックキャスティングしてほしいということですね。

鵜尾:未来から逆算して、必要な人々を巻き込んでいく。社会全体を変える力を持っている人たちと同じテーブルについて、最初からともに考え、創っていく。そんな時代を一緒に作っていきたいですね。また須永さんのお力を借りたいと思います。今日はありがとうございました!

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