投稿日:2016年10月13日

他の先進国に比べ、日本の寄付やボランティアが少ない原因は教育だと思うーバフェットファミリーによる寄付教育「Learning by Giving」の授業からー

大石 俊輔Shunsuke Oishi
日本ファンドレイジング協会 マネージング・ディレクター

「学生が1万ドルの寄付先を決める。」世界一の投資家として知られる、ウォーレン・バフェット氏。彼の甥であるアレックス・バフェット氏が取り組むユニークな寄付教育「Learning by Giving」が米国以外で初めて、日本において日本ファンドレイジング協会により実施されています。

Learning by Giving とは

米国で展開されている当プログラムは、Learning by Giving Foundationによる資金を基にして、大学生に寄付を託します。学生は地域のNPOに対し、実際に寄付をする体験を通じ、個人としての社会貢献の在り方や可能性について学びます。寄付金額は、一つのプログラムにおいて1万ドル(約100万円)とされることが多く、本物かつ多額の資金を扱うため、学生の参加意欲や学びも多いようです。2003年以来、Learning by Giving Foundation は学生たちの参加により、500以上のNPOに助成をしてきました。この活動にはGoogleといった世界的な企業がパートナーとして参加しており、ウォール・ストリート・ジャーナルやフォーブスなどにも取り上げられております。

日本での取り組み

革新的な当プログラムが、米国以外で初めて、それも、高校生を対象に、日本において当協会との提携により実施されています。きっかけは、当協会が2016年3月に実施した、「社会貢献教育オープンシンポジウム」において、アレックス氏に社会貢献教育の先駆者として登壇していただいたことから始まりました。

記念すべき第一号として、プログラム導入を決めていただいたのが、東京学芸大附属国際中等教育学校、6年生(高校3年生相当)です。具体的には、2016年度、2学期~3学期のおよそ半年間、日本の社会貢献の現状や、非営利組織の必要性寄付の可能性などをワークショップ形式の授業で学びます。後半では東京で活動する三つの分野のNPOを生徒が調べ、最も効果的に寄付を活かせるNPOを一つ選び、提供された寄付を贈ります。(贈呈式は12月の寄付月間内で行う予定。)

learningbygiving2

授業の様子

2016年9月、Learning by Givingプログラムが実施されました。授業では「人はなぜ社会貢献をするのか。」「日本の社会貢献意識、他国との比較。」といった内容を、生徒自身の体験を基にディスカッション形式で行われました。実際に挙がった意見として、

「誰かが誰かを救うことは素敵だとわかった。」
「友達に『ボランティア一緒にしてみない?』と誘われると『行こう。』って思いやすい。」
「社会貢献をする理由は、自己肯定に近い。寄付といった社会貢献活動を通じて、自分にできることがある、役にたてるという実感が喜びにつながる。そして、その喜びを感じられる人間であるという実感もある。」
「他の先進国に比べ、日本の寄付やボランティアが少ない原因は教育だと思う。」
(ボランティアをしていて、意識高い系と言われたりはしないかという問いに対して)
「ボランティアしている人が特別視されすぎている。でもボランティアをしていて『すごいね。』っていわれると、『そんなことないですよ。』と言いつつ、実際うれしい。」

といった意見が挙げられました。今後は「社会変革のためのお金の使い方。」「ファンドレイジングプランを作成する。」といった授業を通じて、寄付先の選定が行われていきます。

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今後の展開

新たな社会貢献教育プログラムとして動き出したLearning by Giving。2017年以降は展開の仕組み整備を行い、当協会がすでに実施している「寄付の教室」「社会に貢献するワークショップ」も組み入れた、社会貢献教育のプラットファームを全国展開していく予定です。
 

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大石 俊輔 Shunsuke Oishi

日本ファンドレイジング協会 マネージング・ディレクター

2008年3月法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。学生時代より、まちづくり、文化芸術分野のNPOでのボランティアを経験。同年4月より特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンターに勤務。2010年6月より現職。2010年日本で初めての寄付白書の編纂で中心的な役割を担うとともに、次世代向けのフィランソロピー教育である「寄付の教室」実行責任者として活躍中。

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