投稿日:2022年3月9日

実践編・法人寄付事例から学ぶ【法人寄付を語るシリーズ4】

御手洗 薫Kaoru Mitarai
認定ファンドレイザー
認定NPO法人フローレンス みんなで社会変革事業部 寄付担当

前回まで、「NPOと企業が連携する意義」や「法人寄付獲得ポイント」についてお話してきました。今回は、私自身の失敗談などもお伝えしながら、実際の寄付事例をご紹介していきます。

最初の失敗で気がついた、一番大切だったこと

私が認定NPO法人フローレンスに転職し、最初に対応した企業の事例をご紹介します。結論から言うと、私の提案は受け入れられず、ご寄付はいただけませんでした。

その企業のCSR担当の方は、「寄付先を探している」と、ある日フローレンスのお問い合わせフォームにご連絡を下さいました。

  • CSR部門が寄付先候補を数団体ピックアップした(フローレンスはそのうちの1団体)
  • 寄付先の決定は全社員の投票によって決まる
  • そこで、フローレンスを全社員に紹介するための素材(写真や文章)がほしい
  • 素材は企業が指定したフォーマットに記載してほしい
このお問い合わせに対し、私は以下のようなメールを先方企業へお返ししました。

このメールを送った3ヶ月後、この企業から「支援見送り」のメールが届きました。
見送りとなった理由は教えてもらえませんでしたが、全社員の投票で選ばれなかったのは事実です。

「なぜ社員の方はフローレンスに投票しなかったのか」「他の団体はどこだったのか」「CSR部門はなぜフローレンスをピックアップされたのか」、自分に問いかけたのですが、答えは分かりませんでした。そして、「なぜ、分からないのだろう」と考えた時、気がついたのです。

私はこの企業に「何も」聞いていなかったのです。

いただいたお問い合わせに対し、何のコミュニケーションもなく、メールを1通返しただけだったのです。

シリーズ2回目でご紹介したように、企業は「社会貢献をしたい」という思いを持っていると同時に、「いかにお金(利益)を生み出すか」「いかにお金(利益)を守るか」「いかにリスクを管理するか」を考えています。つまり企業ごとの「あるべき姿」を持っています。

私は、この企業が描いている「あるべき姿」もたずねもせず、想像もせずに、対応していたことに気がつきました。

法人寄付のさまざまなカタチ

企業が行う社会貢献活動にはさまざまな種類があります。「近代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラーの分類によれば、主に次の 6 つの類型に分けられます。

  • コーズプロモーション
  • コーズ・リレーティッド・マーケティング
  • ソーシャルマーケティング
  • コーポレート・フィランソロピー
  • 地域ボランティア
  • 社会的責任に基づく事業の実施
フローレンスではさまざまな法人寄付を受け付けていますが、今回は「コーズ・リレーテッド・マーケティング」と「コーポレート・フィランソロピー」の事例をご紹介いたします。

互いの「あるべき姿」を一緒になって実現する
~コーズ・リレーティッド・マーケティングの事例~

コーズ・リレーティッド・マーケティングは、商品などの売上の一部を社会問題の解決に対して寄付する手法で、売上寄付とよく呼ばれています。企業がNPOに代わって寄付を集めてくれ、さらに団体の認知拡大も期待できるので、団体側にとって非常に魅力的な手法の一つです。

最初にご紹介するのは、人工宝石“モアサナイト”を用いたジュエリーブランド「Brillar(ブリジャール)」を展開する株式会社Brillarとのコラボレーションの事例です。

同社は、フローレンスとコラボしたチャリティジュエリーラインを新たに販売し、売上の30%を寄付してくださいました。

売上寄付となると、「一体いくら寄付がもらえるのか」「企業の知名度はどの程度か」「どれだけ団体をPRしてもらえるか」について企業と会話してしまうことが少なくないと思います。

しかし、それぞれの企業が「あるべき姿」を持っています。NPO側に、なかなか企業の思いに耳を傾ける余裕がないのは事実です。ですが、自団体の「あるべき姿」だけを考えたコミュニケーションをするのではなく、互いの「あるべき姿」を実現しようとすることが重要です。企業に寄付集めをしてもらうのではなく、企業に寄付集めの協力をしてもらうというマインドが大切になってきます。

フローレンスでは、お問い合わせをいただいてから発売に至るまで、何度も打合せを行いました。同社が考える「あるべき姿」をお伺いし、商品開発の場にも参加しました。また、販売促進のためのPR企画でもフローレンス側の意見を取り入れていただき、一緒になってこのチャリティージュエリーラインの企画を作り上げていきました。

Brillar社とフローレンスがコラボしたチャリティーライン第一弾「Smile」

また、同社が実現したい社会貢献についてインタビュー記事も作成しました。このようにして、思いをたくさんの方と共有することで共感的なお金の流れを作っていきます。

(インタビュー記事)

コミュニケーションを通じて寄付に価値をつけていく
~コーポレート・フィランソロピーの事例~

コーポレート・フィランソロピーは、社会問題解決に対して企業が直接関与する活動です。NPOなどへの直接の金銭寄付や物資の寄付がこれにあたります。

企業とのキャンペーンなどを企画することなく、単純に寄付金を受け取ることができるため、限られたリソースの中でファンドレイジングを行う団体にとって、非常に貴重な寄付の形態となります。

次に、アメリカ生まれの大型会員制倉庫店「コストコホールセール」の事例をご紹介します。同社は、2018年から毎年、寄付金と店舗で利用できるお買い物券をフローレンスにご寄付くださっています。

金銭寄付は、受け入れに伴う事務的なやり取りがメインになってしまいがちです。しかし、何度もお伝えしているとおり、それぞれの企業が社会貢献を通じて「あるべき姿」を持っています。

フローレンスとタッグを組むことで、相手企業はどのような未来を作りたいのか、私たちに何を期待しているのかをお伺いし、また団体側からも、企業とタッグを組むことでどのような未来を作ることができるのか、企業に期待していることを伝えることが重要です。

このコミュニケーションを踏まえた上で、いただく金銭寄付に価値を付加します。コストコホールセール社では、企業の強みを活かしより多くの方の共感を得るために、お買い物レポートをニュース記事として企画しました。

寄付金を受け取るだけではなく、フローレンスがそれを積極的に広報することで、記事を読んだ方が企業に対しポジティブな感情を抱き、フローレンスに対しても共感する。そういった価値をつけていきました。

もちろん、すべての企業に対して同じ取り組みができるわけではありません。寄付額や将来の関係性などを戦略的に考え、時々でとりうる最善の方法を実施していきます。

ほんの少し意識するだけで変わることがある

今まで、自分たちの「Win」だけを意識した提案活動を行っていませんでしたか?しかし、何度もお伝えしているとおり、それぞれの企業はそれぞれの「あるべき姿」をもっています。

Win-LoseでもなくLose-Winでもなく、Win-Winを実現するよう企業と対話し、団体側から提案することがとても重要になってきます。

ほんの少し、このWin-Winを意識してみるだけで、メールや電話の対応など、日々のちょっとした行動が自然と変わってくるかもしれません。

(フローレンスの企業コラボ事例はこちら

【関連記事】法人寄付を語るシリーズ
(1)なぜ、企業は社会貢献活動をするのか
(2)なぜ、NPOと企業は連携するのか
(3)実践編・法人寄付獲得のポイントとは(会員限定記事)
(4)実践編・法人寄付事例から学ぶ

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Profileこの記事を書いた人

御手洗 薫 Kaoru Mitarai

認定ファンドレイザー
認定NPO法人フローレンス みんなで社会変革事業部 寄付担当

東京生まれ。日本女子大学理学部卒。外資系IT企業にて、エンジニア、マーケティング、営業を経験。この間、二度の育児休職を取得し、待機児童問題、病児保育問題に直面し、同時に多くの育児中の父親、母親が同じ悩みを感じていることを知る。すべての親子が心豊かな人生を送れるよう行動したいと決意し、2017年フローレンスに入社。現在は、法人向け寄付・遺贈寄付を担当。

Web: https://florence.or.jp

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