投稿日:2023年7月5日

ファンドレイジング戦略の質を上げる“データ活用”の可能性と展望

大石 俊輔Shunsuke Oishi
日本ファンドレイジング協会 マネージング・ディレクター

近年、国内のNPOでも数値や分析といったデータに基づいた意思決定や施策改善への機運が高まってきました。特にファンドレイジングや組織運営では、データを活用することで、今まで見えていなかった成長の可能性に気がつくことができます。こうした背景から、当協会のスペシャルパートナーである株式会社ファンドレックスは、最新のファンドレイジングの状況を分析した「ファンドレイジングDATABOOK 2022」を公開しました。この企画をリードした相澤順也氏に、データ活用の重要性についてお伺いしました。

プロフィール

相澤 順也
株式会社ファンドレックス コンサルタント
長野県出身。大学卒業後、出版社、NGOを経て2012年にファンドレックスへ入社。主にファンドレイジングを中心とした、非営利組織・大学・文化芸術施設などソーシャルセクター全般におけるコンサルティング業務に従事。
実現性の極めて高いファンドレイジング戦略の策定、また具体的な成果を生み出すために施策の実行までをサポートする伴走支援を得意としている。大規模案件ではチームマネージャーとして関わることも多い。
近年は、データ分析がファンドレイジングに与える効果を最大化する手法「データ・ドリブン・ファンドレイジング」に力を入れている。
聞き手

大石 俊輔
日本ファンドレイジング協会 マネージング・ディレクター
2008年3月法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。学生時代より、まちづくり、文化芸術分野のNPOでのボランティアを経験。同年4月より特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンターに勤務。2010年6月より現職。2010年日本で初めての寄付白書の編纂で中心的な役割を担うとともに、次世代向けのフィランソロピー教育である「寄付の教室」実行責任者として活躍中。

データに基づいた財源戦略の必要性|感覚からの転換

大石 :相澤さんは様々な団体のファンドレイジングのコンサルティングを行っていらっしゃると思いますが、最近の変化について教えていただけますか?

相澤:はい、NPO(非営利団体)や大学など幅広い分野の団体から相談を受けて、ファンドレイジング関する支援を行っています。ここ2〜3年では、「事業をより拡大したい」「スタッフのスキルアップを図りたい」といった組織や事業全体に関する相談が増えてきました。

また、団体側からの要望として、「これまでは感覚的に財源確保や事業戦略を立てていたが、今後は数値や分析といったデータに基づいた戦略を策定したい」という相談が非常に増えています。

大石:先日、貴社のウェブサイトで、「ファンドレイジングDATABOOK 2022」が公開されました。最新のファンドレイジングの状況を分析されていますが、その制作の背景について、教えていただけますか?

相澤:私は4〜5年前から、数値や分析などのデータに基づいたコンサルティングを行ってきました。
ファンドレイジングに関するデータには、過去の寄付者数や寄付額など、数値で比較できる要素だけでなく、寄付集めの具体的なアクションの事例など、数値では表現しにくい情報も含まれています。どちらのデータも活用次第では、自団体のファンドレイジングを大きく成長させられることがわかりました。

しかし、これまでこれらのデータをまとめて提供しているところはほとんどありませんでした。そのうえ、多くの団体では、他の団体のファンドレイジングに関するデータを調査する時間を割くことが難しい、もしくはデータを得る機会に乏しいという現状があります。

日本ファンドレイジング協会が発行している『寄付白書2021』では、市場全体の概要を俯瞰することはできますが、各団体の具体的な状況を把握することは困難です。「ファンドレイジングDATABOOK 2022」は、団体の財務諸表などの公開情報をもとに収集し分析したデータのため、自団体と市場全体や他団体との違いを客観的に比較検討することが可能です。

例えば、「自団体の寄付金額が昨年よりも増えてよかったが、この増え幅は市場全体や他団体の増減幅と比べて高いのか低いのか」という疑問をよく耳にします。こうした声に応えるとともに、今後のファンドレイジング戦略を考える一助となることを目指して、「ファンドレイジングDATABOOK 2022」を作成しました。

大石:確かに寄付白書とは全く別の切り口ですね。「ファンドレイジングDATABOOK 2022」の分析では、個々の団体の様々な傾向が見えてきます。改めてデータの重要性を感じます。6つの法人格ごとの具体的なデータが示されているのも大変興味深いです。

また、「ファンドレイジングDATABOOK 2022」は調査対象年が2019年から2021年ということで、コロナ禍が寄付市場に与えた影響も読み取れますね。

ファンドレイジング戦略の改善に向けた他団体との比較から見える示唆

大石:今後のデータ活用への期待を教えてください。

相澤:まず1点目は、「ファンドレイジングDATABOOK 2022」を活用することで、データを使って戦略をたてる最初の一歩を踏み出すきっかけにしていただきたいと思います。様々な団体のデータを参照し、自団体が参考にできるベンチマークとなる団体はどこなのか、その団体はどのような施策を行っているのか等を知ることで、自団体の今後のアクションにつなげることがきます。これまでデータ活用に躊躇していた方々も、「自分たちもやってみよう」と前向きになってくれることを願っています。

2点目は、業界全体にデータ活用が当たり前であるという気運を広め、「データ活用文化」を築いていきたいと思っています。
ファンドレイジングの施策がうまくいかなかった場合に、「なんとなく自分たちの団体には合わなかった」「タイミングに乗り遅れた」といった主観的な振り返りで終わってしまう傾向があります。こうした主観的な見地も大切ですが、例えばデータをもとに施策を立案した場合は、振り返りにおいてデータ“も”活用することで、客観的な分析と考察が可能になります。ファンドレイジングや組織運営にデータ活用を組み入れることで、成長を実感する団体が増えることを期待しています。

大石:データ活用の文化を広げていくことは非常に大切ですね。最後に、本記事を読んでいるファンドレイザーに向けてメッセージをお願いいたします。

相澤:ファンドレイザーとして日々試行錯誤をされていると思います。データも活用することで、現状の利点や要検討事項が可視化され、説得力のある施策を打ち出すことが出来ると考えます。

データによって見えるものが増えると、次のアクションの幅が広がります。また、データによって明らかになった現状を、寄付者や様々なステークホルダーと共有しコミュニケーションすることで、その団体に関わるすべての人が、より主体的に活動できるようになると考えます。このようにデータも活用して団体の成長に繋げていただきたいと思います。

最後になりましたが、ファンドレックスと一緒にファンドレイジングを取り組んでみたい方は、お気軽にお問い合わせください。団体に特化した分析なども承っておりますので、自団体の詳細な分析にご興味がある方も是非ご相談ください。

大石:今日はありがとうございました!

<参考情報>
「ファンドレイジングDATABOOK 2022」は、こちらからダウンロードいただけます。

株式会社ファンドレックスは「寄付・社会的投資が進む社会の実現」に向けて、
当協会と一緒にチャレンジするスペシャルパートナーです。

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大石 俊輔 Shunsuke Oishi

日本ファンドレイジング協会 マネージング・ディレクター

2008年3月法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。学生時代より、まちづくり、文化芸術分野のNPOでのボランティアを経験。同年4月より特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンターに勤務。2010年6月より現職。2010年日本で初めての寄付白書の編纂で中心的な役割を担うとともに、次世代向けのフィランソロピー教育である「寄付の教室」実行責任者として活躍中。

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