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【報告】第3回ファンドレイジングセミナー2009

2009.11.06

【ご報告】第三回ファンドレイジングセミナー2009

「今、経済危機下で問われる持続可能な企業の社会貢献」
~NPO側の課題は?

10月15日午後6時半から8時半まで、日本財団ビル2階会議室にて、第3回ファンドレイジングセミナー2009が開催された。

当日は、「今回の経済危機は何をうみだすか」をテーマに、第一部には基調講演、そして第二部はパネルディスカッションが行われた。

■第一部には、講師として法政大学教授の山岡義典氏(日本NPOセンター所属・市民社会創造ファンド)が招かれた。

山岡氏は、NPOの財源が行政や企業に比べて複雑であることを述べ、財源構成から組織の特性をひもといた。支援系の財源と対価性の財源と、内発的な財源と外発的な財源のふたつの大きな軸をもとに考えた。支援系として、見返りを期待しない財源が国際協力や自然系の団体であり、対価性として、見返りを期待する財源が、ヒューマンサービス系であることを具体例を持ちいて述べられた。すべての財源の対応として、会員、消費者、寄付・助成・協賛者、企業財団の助成・モノ・サービスの購入者、販売促進の後方協力者として、事業の委託者として、これらすべてがトータルに整備されると、NPOの財源があがることを示唆した。

山岡氏によれば、経済危機下において、持続可能な企業の社会貢献とは、三点あり、第一に、社会的な意味の説得力があること。すなわち受益者がだれであるのか、独自性はなにか、わが社の関わる意味、そしてパートナーとの信頼性があること。第二に、ステークホルダーの理解・共感・参加の促進がはかられていること。社長、役員、従業員、株式、消費者が互いに理解していることが重要であり、さらには社長・役員の活動に「参加」していることがその文化がのびていくのではないかという。そして、最後に、継続的な事業の優位性。金額を縮減してでも継続する意味・可視化できる評価・新規事業の説得性の難しさがあるが、以上の三点が整い実行することが経済危機に持続可能な企業の社会貢献であると述べた。

また、NPO側の課題として、信頼関係を築くことと情報公開、創造性と豊かな発想による提案、顧客満足の高いものや、サービスを創出する点、企画力とマネジメント力における課題をあげ、第一部の基調講演を終えた。

■第二部では、パネルディスカッションが行われた。

パネリストは、以下の4名
花王株式会社 CSR推進部長 兼 社会貢献部長の嶋田実名子氏
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長の高橋陽子氏
トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進室長の中山直人氏
そして、基調講演を行った山岡氏。
ファイシリテーターは日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆が務めた。

はじめに、嶋田実名子氏が花王の社会貢献活動について述べた。

嶋田氏によれば、花王は、社会貢献活動の全体像として「次世代を育む環境と人づくり」をテーマに、環境面では買おうみんなの森作り、みんなの森の応援団、また教育面では、花王・教育フェローシップ理科教育支援、さらに芸術面では、花王コミュニティミュージアムプログラムとしてファミリーコンサートを開催するなど多岐にわたる分野で社会貢献活動に取り組んでいるとのこと。

また、花王の取り組みとして「社員参加型」に重きをおいているとのこと。
その一環として、「ハートポケットクラブ」と呼ばれる花王グループ社員による社会支援を目的とした社会参加型寄付プログラムを立ち上げ、賛同する社員が会員となり、毎月の給与の一部を積み立て、NPO、市民団体、災害支援に寄付売る社員全体の組織を作り上げ、会員数は2008年時点で1860人、寄付先団体はのべ146の支援先を越えた。組織設立当初、「社員が地域のことを知らない」という課題から、この団体が設立され、地域交流の場がうまれることによって、地域のNPOの方が花王のことを身近に感じてくれるようになったという意見がよせられているそうだ。

また、活動範囲は多岐にわたり、忙しい社員に関しても子供には関心がある社員は「カンボジアに絵本を届ける運動」を行った。犯罪の多い時期には、子供向け防犯セミナーを地位きんNPOと開催するなど、企業の「中」と「外」との垣根を下げる、というような活動を繰り広げているそうだ。

次に、中山直人氏がトヨタの社会貢献に関して話した。

トヨタの社会貢献推進部は4年前に設立されたが、昨今の不況のため社内では第一に予算削減の対象とならざるを得ないとのこと。

そこで中山氏はインサイドアウト、アウトサイドインの発想がポイントだと述べた。インサイドアウトとは、自分の考えを外に広めていくこと。他方、アウトサイドインとは、外側から内側をみること。外からせめて、最後に自己をもつこと。経済危機下においては、アウトサイドインの考えが企業においてもっとも有効的な手法であると述べた。

たとえば、ホンダの創設者である本田総一郎氏はお客様の立場を第一に考えた。そのエピソードとして、ある時、ある技術者が、高級志向な車を作れと命じられたが、技術者は「自分自身が高級志向ではない」「自分は最善とつくしている」と主張した。そこで本田総一郎氏は「君はお客さんの立場にたっていない」と言った。本田氏は、ホンダ自動車は、どういう車を作り出したいのか、自分の立場だけで言い訳をするような発想だけではいけない、外から求められていることに対して常に意識を集中させることが重要であると主張したそうだ。

中山氏は昨今の経済状況下に、「赤字だから・・・」という考え方はまさしくインサイドアウト。今求められているのはアウトサイドイン的考え方であり、発想の転換が必要であると述べた。

高橋陽子氏は、NPOの強みについて述べた。

予算や人件費は軒並み減少しなければならず、能力のある人材は営業部へと異動となる。しかしやるべき業務は減らすことはできない。セミナーに出る時間があればなかで仕事を迫られる。そうするとどんどん外の仕事がわからなくなっていくという悪循環が繰り返される。
そこで人を雇うよりも、NPOからの情報を得るほうが効果的だと企業は考え始めている高橋氏はいう。

また、本業を生かした社会貢献のが昨今の主流だと述べた。そして、本業を生かした社会貢献の利点として、第一に、社員のステークホルダーが出しやすい点、第二に、他の部署とのかかわりも必要になるので、イノベーションが起こりやすい点をあげた。

高橋氏は、企業の社会貢献は、儲かるために行うのではなく、企業として、いいサイクルを作っていくための漢方薬としての役割を果たすと述べた。従業員のメンタルヘルスを改善するため、また、困難を克服するためのチームワークが必要とされている昨今、本業を生かした社会貢献が有効的に企業内の関係を円滑にし、コミュニケーションの場となりうると述べた。

次に、ファシリテーターが、各パネリストに対して経済危機下で行われるべきことについて意見が求められた。

嶋田氏は、社内で寄付先の見直しをしていく必要があると述べた。本当に必要なものは何かを探り、それを残していくこと。さらに社会企業家を育成していくことが必要だとした。

中山氏は、長期的な活動を継続的に行うことは重要であるが、何のためにしているのかをひとつひとつの中身を問われたときにそれに対応できることが必要であると述べた。企業とNPOのできることや目的をはっきり区別し、企業(トヨタ)に関しては、なぜ「これ」をトヨタがしなくてはならないのかの理由を問い、トヨタはその後何を得るのかを問う。疑問を問い続けることで、持続可能な社会貢献を可能にしていくと述べた。

高橋氏は、NPOのメリットについて述べ、企業の援助によって活動範囲がひろがることを主張し、相互の関係を築いていくことがNPOがすべき課題だとした。

最後に、各パネリストが以下の意見を述べた。

はじめに、労働組合経由でNPOに4年勤務した経験をもつこと中山氏は、NPOにはお金ではない大切なものがあり、世界から求められている日本はなにか、ひとりひとりができることを広げていく、自分なりにヒントを求めていくことが必要であるとした。NPOには、手段よりも目的を歩んでいってほしいという希望を述べた。

高橋氏は、NPO側としては、企業内の上層部にもっていきやすいような提案をし続ける必要があると述べた。必要なニーズのあるところに売るのは営業ではなくサービスだと主張し、潜在的な能力を掘り起こすことが企業との関係性を築き、志をさげず高め続けていくことが必要であると述べた。

嶋田氏は、バブル以降ミッションやビジョンを変更した団体が多いことを問題としてあげ、ミッション・ビジョンを明確に示すことが必要だとした。自分の団体がいいことをしているのに社会は理解してくれない、ではなく、視野は広く、足元をみて活動をしていくことが重要であると述べた。

山岡氏は、共感が循環すること、そして経済が悪化した今だからこそ、企業とNPOが真剣に会話をしなければならない時期にさしかかっていると述べた。

最後に、鵜尾が、5年後に今日の経済危機を振り返った時、それを機に企業とNPOの結びつきが強まったということになっていることを希望すると述べ、セミナーは閉会した。

報告:東洋大学社会学部 高木佳
   (日本ファンドレイジング協会ボランティア)