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【ご報告】第31回ファンドレイジング研究会

2012.11.15

テーマ:「かものはしプロジェクトにみる発展段階に応じた『トータルファンドレイジング』」
日 時:2012年11月13日(火)18時30分~20時30分(開場:18時)
場 所:日本財団ビル 第1+2会議室
講 師:山元圭太氏(かものはしプロジェクト 日本事業統括ディレクター)
ファシリテーター:山下竜一氏

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【かものはしプロジェクトとは】
かものはしプロジェクトは、人身売買問題の解決、特に児童買春の解決を目指す活動を行っています。
この問題の背景には、児童買春の需要と供給が存在しています。供給側には貧困や雇用の機会・教育の欠如といった理由があり、需要側には法律の不備や価格の低さなどの理由によって、子どもが騙されて身体を売られてしまうのです。この課題を解決するために、かものはしプロジェクトは、次のような活動を行っています。

  ・供給する側の課題解決のために
   - コミュニティファクトリーの経営を通じた経済的支援
   - 孤児院の支援

  ・需要する側の課題解決のために
   - 警察支援

活動開始から10年を経て、カンボジアでの児童買春の問題は改善傾向にあります。

【日本事業について ― かものはしプロジェクトのファンドレイジング】
 日本事業では、
  1. 現地に必要な活動資金の安定的調達、
  2. 広報PR啓蒙活動、
  3. 組織の基盤強化
 に取り組んでいます。

 かものはしプロジェクトのファンドレイジングは、もともとオフショア開発の事業モデルからスタートしました。それは、IT事業の職業訓練を受けた現地の人たちに簡単な仕事をしてもらい、企業に納品するというものです。
 一方、会員・寄付を集めるサポーター寄付事業は当初は厳しかったのですが、2008年度に急激に伸びました。その外的な要因としては、社会起業家ブーム、カタリバやフローレンスなどのNPOの活躍、さらに子どもの人身売買を描いた「闇の子どもたち」という小説と映画が注目されたことなどがあります。また内的な要因としては、ウェブマーケティングに力を入れ、それにより個人会員が1500人も増えたそうです。具体的には、キーワード広告やSEO対策を行い、例えば「社会起業家」や「闇の子どもたち」といったキーワードを検索ボックスに入れると、かものはしプロジェクトが上位でヒットするようになりました。
 2008年にリーマンショックが起こると、その影響を受けてIT事業の利益は激減しました。そのため、2011年末をもってIT事業は解散しました。
 多くのNPOの場合、定石としてはまず助成金を得て、その間に寄付・会費を増やしていきますが、かものはしプロジェクトはこのように、設立当初は事業収入に支えられ、その後、寄付・会費の割合を増やしていきました。今では個人会費による収入が47%と収入全体の約半分を占め、主要財源となっています。また寄付は25%、事業収入は20%程度を占めています。

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【ファンドレイジングの「5W1H」プランニング】
 次に、活動の初期段階にある団体からの講演依頼を受けることが増える中で生まれた独自のファンドレイジングプランの骨子の立て方が「5W1H」に則って紹介されました。

Why
ミッションは何か?問題解決シナリオは明確か?ソーシャルインパクトを追及する覚悟があるか?
 ⇒ これに応えられない場合はファンドレイジングを行う段階に至っていない。

What
ミッション達成に向けて必要な経営資源は何か?必要なヒト、モノ、カネ、情報は?
 ⇒ かものはしプロジェクトが本質的に望んでいるのは、問題の解決をともに担ってくれる仲間(ファンド・レイジング=フレンド・レイジング)

When
いつ集めるか?組織基盤や事業計画のタイミングに合わせて資金調達できるか?中長期計画における必要な収入・支出は明確か?
 ⇒ 中長期計画では、ソーシャルインパクト→支出→収入の順序で数値化する(ソーシャルインパクトの数値化=成果の可視化)

Who
誰から集めるのか?
 ⇒ ペルソナ分析を行うと、自団体の支援者層を具体的に分析し、明確化できる。

Where
ターゲットにどこでアプローチするか?その適切な方法は何か?

How
具体的な調達施策は何か?
 ⇒ 例えば個人会員を増やすために、ドナーピラミッドを用いてステップアップ施策に落とし込んでいく。

【グループワーク】
 全体のプログラムは、以下のグループワークをはさみながら進行しました。

グループワーク1
 アイスブレイクとして、グループリーダーを決め、各グループごとに自己紹介や活動紹介を行いました。

グループワーク2
 NPOの5大資金源について考え、グループ発表を行いました。
NPOの強みはいろいろな資金調達の手段があることですが、
その5大資金源は、1. 会費、2. 寄付、3. 事業収入、4. 助成金、5. 委託です。
これらの資金源には次のような特徴があります。

  資金調達効率は、1から5に向かって高くなる。
  自由度は、1から5に向かって低くなる。
  安定性は、1から5に向かって低くなる。
  成長性は、1から5に向かって低くなる。

これを踏まえて、事業や組織の成長段階に応じて財源バランスを変えていくことが重要です。

グループワーク3
 ファンドレイジングのソリューションオプションを自団体に当てはめて考え、自分たちの団体の財源バランスを整理して確認しました。

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【質疑応答】
Q:かものはしプロジェクトがロジカルに考え、計画されているのは、山元さんのキャリアなどが影響しているのでしょうか?
A:ロジカルな思考は、かものはしプロジェクトの文化にもともとありました。