【ご報告】ファンドレイジングセミナー2012 第1回「NPOのリスクマネジメント」
テーマ:「NPOのリスクマネジメント」
日時:2012年9月27日(木)18時30分~20時30分
会場:会場:日本財団ビル 2階大会議室
講師:中原美香 氏(NPOリスク・マネジメント・オフィス)
コメンテーター:樽本哲 氏(弁護士・準認定ファンドレイザー)
記録担当:村松正彦(日本ファンドレイジング協会ボランティア)
【講師の紹介】
中原美香 氏:日米での人権団体勤務等を経て、2000年12月「NPOリスク・マネジメント・オフィス」を設立。よりよい社会を実現するために、リスクマネジメントの観点から市民活動団体を支援する。差別をなくす取り組みや企業の社会的責任(CSR)、ソーシャル・ビジネスなど社会を変える仕組みづくりや実践、その評価に関連した活動を続けている。
樽本哲 氏:弁護士・準認定ファンドレイザー。赤坂シティ法律事務所パートナー弁護士、企業法務全般を取り扱う。
「リスク」そのものにはがマイナスだというわけではない。皆さんのNPOがある活動をする・しない、という選択により、社会に変動を起こす不確実性、これを「リスク」と呼ぶ。なので、リスクマネジメントは同時にチャンスを作る事でもある。リスクマネジメントとは、「組織としてここまではやっておこう」と安全基準を作って守るもの。
リスクマネジメントは事故の対応だけをさすのではない。盗難に会う/人権侵害をする・される/資金源が途絶える/個人情報が漏洩する/人間関係が悪化する/契約上のトラブルに会う/風評被害に会う、などへの対応もリスクマネジメントの範疇となる。
ファンドレイジングに関わるリスクには以下のものが考えられる。
・お金のある方へある方へ活動が移ってしまうリスク
そもそもの活動理念が揺らぐリスク。その団体の顔が見えなくなるリスクでもある。
・ファンドレイジングに対する方針がないというリスク
「とにかく集めよう」はリスク。「いつまでに、いくら集める。」という指針を立てること。
・助成金や寄付が減る事により、活動が停滞するリスク
助成金に頼った運営だと、それが無くなると一気に活動が鈍るリスクがある
・想定しない相手から寄付を申し出が来るリスク
団体のミッションに反する相手方からの寄付の申し出など。
リスクをどう見つけ、対処していくのか?そのためのリスクマネジメントの手法を紹介する。
1.リスクの洗い出し
ヒト・モノ・カネ・情報・信用のチェック
2.取り組むリスクと目標を決める
リスクを洗い出したら、対応の優先順位を決める。
3.リスクへの取り組み方を決定し、実行する
取り組みのルールを確立する。実行にはコミュニケーションをとり、研修などを行いながら、確実に行っていく事。
4.実行した結果を振り返り、1へ戻る
まずは、ミスをきちんと記録しておく事が大切。そこから、やらないといけない事が明確になったら、直ぐ行ってみる事。手をつければよいサイクルは回っていく。
提示されたNPOのリスクは以下の様に纏められる。
・業務上のリスク
実際の業務の中で起こるリスク。活動中の事故など。これはPDCAサイクルで対応する事。
・組織運営のリスク
人権侵害、犯罪、スタッフの燃えつきなど。これは人事のマネジメント、組織復旧の計画マネジメントで対応する事。
・財務上のリスク
これは、ファンドレイザーの戦略策定が重要。
・外部からのリスク
自然災害などがそれに相当する。こちらは、起きた時に迅速に対応出きるように準備しておく事。
質問者:NPOの運営で、単発ボランティアを活用している。そのリスクマネジメントを考えていなかった。合意書も考えていなかった。どうすると良いか?
中原氏:単発ボランティアでも、その団体の一員として活動するので、1日でも1年でもボランティアである事に変わりは無い。事前研修はして貰いたいが、その時間が取れない場合は、メール等で事前に研修資料を送るなどが考えられる。保険も確認をしっかりする事。
質問者:途上国支援の活動をしている。先日、法人代表に誹謗中傷のメールが来たり、その内容がネットに掲載された。ネットは情報の拡散が早く、実行者の特定も難しい。この対策を教えて貰いたい。
中原氏:ネットの対策は難しい。1つ1つ潰していくのは難しい。それが事実無根であれば、プロバイダに削除を求める。自身のホームページに「事実を明確にする」という宣言を載せる。
樽本氏:難しくて、頻発している事象。まず対応することは事実確認。違ったらそれを否定する。自身のHPやメルマガ等で事実を明確にする。粛々と信頼回復に努める事。