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【ご報告】第26回ファンドレイジング研究会

2012.04.16

第26回ファンドレイジング研究会

【講師】
水谷 衣里氏 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
【ファシリテーター】
木内 満氏(株式会社ウイズダムバンク)
【記録】
藤根 洋平

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【講演要旨】
1.ソーシャルファイナンスとは何か
1)ソーシャルファイナンスの特徴
 ソーシャルファイナンス…「経済的(金銭的)利益と社会的利益の双方を追い求める組織によって提供される金融」
2)ソーシャルファイナンスとは
 ソーシャルファイナンス=Social (社会)+Finance(金融)
 ・NPO等ソーシャルビジネスに資金供給をする主体という考え方。
 ・社会性に配慮(環境ビジネス等に積極投資/兵器産業等に投融資しない)する金融という考え方。
 二つの議論
 ・既存の金融機関を変える、金融機関が変わる、という点に力点がある議論。
 ・オルタナティブな金融を担う主体を新たに作り出す、という点に力点がある議論。
3)なぜソーシャルファイナンスが必要とされてきたのか
 ・金融排除の存在…差別的理由、地理的理由等による金融サービスの空白地帯の存在。
 ・民間非営利活動からの資金需要の増大。
 ・小規模ファイナンス(マイクロファイナンス)の振興。
 ・協同組合セクターへの回帰。

2.世界の潮流とその議論
1)様々な形態
 マイクロファイナンスファンド、クレジットユニオン、ソーシャルバンク等
2)海外の事例
 ①トリオドス銀行(オランダ)
 1980年にオランダで誕生した世界的に有名なソーシャルバンク。
<取組みと特徴>
 ・融資分野の限定…融資分野は「自然環境分野」「文化福祉」「ソーシャルビジネス」に限定。また、貸出に関する基本的方針(Triodos Bank’s Approach to Lending)を表明。
 ・革新的商品の開発と流通…グリーンファンドスキームによる環境事業の牽引等。
 ・融資先の公開…融資先について積極的に公開。(Web公開等)
 ・複数地域での事業展開…現在はイギリス、ドイツを含む5カ国で営業展開。
②コーポラティブ銀行(イギリス)
イギリスの共同組合(The Cooperative)傘下の金融機関。80年代は既存金融機関との競争激化から一時業績を落としたが、92年に倫理方針を顧客参加の下に制定した結果、差別化戦略が功を奏し、顧客や社会からの支持が拡大。
<倫理方針とは>
 ・融資可否判断にあたっての銀行の方針を指す。
 ・顧客(預金者)の積極参加による継続的な見直しが行われている点が特徴。
<倫理方針の実際の運用>
 ・倫理方針は全ての融資案件に適用。
 ・融資可否を最終判定するのは「倫理方針委員会」。
 ・却下案件について、企業名は公表されないが、却下理由は公表される。
3)ソーシャルバンクが支持されるポイント、成功のポイント
 ・差別化戦略の徹底。(拡大競争からの戦略的転向)
 ・「自らがソーシャル」であることにより、新しい市場を開拓。
4)CDFIとは
 CDFIとは…コミュニティの再生を主たる目的とする金融機関。アメリカ建国以来の歴史をもつ。
 ・CDFIの組織形態
 コミュニティ開発銀行、コミュニティ開発クレジットユニオン、コミュニティ開発ローンファンド等
 (例)Philadelphia Development Partnership (Entrepreneur Works)、Nonprofit Finance Fund (NNF)、Chicago Community Loan Fund (CCLF)等
5)CDFIのアメリカ社会に対するインパクト
 ・CDFIのネットワーク組織作成の統計によれば、CDFI全体で貸付残高は約200億ドル。
 ・組織形態、構造によって貸出先には差異あり。ソーシャルビジネスだけではなく、スモールビジネスや個人にも貸し出している。
6)政府による支援策
 ・最大の支援策は、政府によるCDFI基金の設立。
 ・2000年にはCDFIに対する投資減税「NMTC」が成立。CDFIへの民間投資の還流が意図された。
 ・その他、金融支援のみならず技術支援も行うCDFIプログラムなど、様々なプログラムを通じての支援もあり。

3.日本では?
1)市民出資・市民金融という選択へ
 目の前に課題があり解決したいが資金調達手段が乏しい→仕組みが無いなら自分達で作ろう、というという民間の動きが、市民ファンドという形で結実。
2)日本に置けるオルタナティブの動き−NPOバンク
 NPOバンクとは…市民が自発的に出資した資金により、地域社会や福祉、環境保全のための活動を行うNPOや個人などに融資することを目的に設立された「市民の非営利バンク」
 (例)未来バンク、北海道NPOバンク、コミュニティユースバンクmomo
3)金融機関の変化
 西武信用金庫のようにコミュニティビジネス支援に力を入れている金融機関もある。(「西武コミュニティローン(コミュニティビジネス支援ローン)」…既に100件を超える融資が実行されている)
4)マイクロファイナンスを推進するNPOと金融機関との連携
 プラネットファイナンスジャパンと気仙沼信用金庫による「三陸復興トモダチ基金」…地域再生や雇用創出に向けた助成、融資を実施。
5)震災を機に誕生したもの
 セキュリテ被災地応援ファンド…半分寄付、半分出資というモデル。出資だけではなく、「購入=消費」による応援も可能。
6)個人投資家を募り、意思あるお金を循環させる仕組み
 合同会社SVP東京、ARUN LLCなど。

4.これからに向けて
1)日本に必要なこと
 ・お金の出し手へのインセンティブが作れるか?…「参加したい気持ち」をいかに作り出すか?寄付控除やエンジェル税制など。
 ・受け手側のキャパシティビルディングができるか?…受け手側は共感のお金を効果的に使うことが求められる。
 ・透明で、市民的感覚に裏打ちされた運営ができるか?…担い手と資金支援先の双方が情報公開、社会に還元できるか。
2)今後に向けて(どう創る?ソーシャルファイナンス)
 ・ソーシャルバンクの成長を支えたいなら…経営支援をどう行うか。経営支援ができる人材をどう創るか。
 ・オルタナティブ金融を作りたいなら…法制度の問題。共感をどう広げるか。
 ・既存金融を変えたいなら…預金者としての意思表示。

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【質疑応答】
Q1.海外のソーシャルファイナンスは銀行が貸せない先に貸しているわけだが、リスクヘッジはどうしてるのか?

A1.審査は厳格にしているし、門前払いにもしてない。信用の考え方がそもそも違って、サービスの必然性や共感の有無に重きをおいている。コミュニティからのアドバイスをもって信用補完している例もある。(イタリア)

Q2.オーバーバンキングになった場合はどうするか?

A2.ソーシャルファイナンスから借りた方が借り手にとってプラスになる場合もある。(momoの事例、差別が化戦略)

Q3.ソーシャルファイナンスの発展に関して日本に足りないものは?

A3.お金の出してのインセンティブが作れるか/受け手側のキャパシティビルディングができるか/透明で、市民的感覚に裏打ちされた運営ができるか

Q4.財団の資産運用先としてソーシャルファイナンスも考えられるか?

A4.もちろん考えられる。海外でもそういう事例はある。