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【報告】ファンドレイジングセミナー2010 第4回「幸せの循環をつくるDRM」

2010.11.04

ファンドレイジングセミナー2010 第4回「幸せの循環をつくるDRM(ドナー・リレーションシップ・マネジメント)」

講師:株式会社ファンドレックス 取締役 吉田憲司氏

記録:横尾洋和(ボランティア・スタッフ)

第四回は、株式会社ファンドレックスの吉田氏による「幸せの循環をつくるDRM(ドナー・リレーションシップ・マネジメント)」をテーマに、そもそもの顧客との関係のあり方からデータベースの活用法まで幅広く学べるセッションとなりました。

冒頭に、吉田氏から、「本日のテーマはデータベースという事で、専門的な内容を扱います。
質疑応答を踏まえながら、終りの方に参加者の声を取り入れつつ、話を展開していきたいと思います。」という言葉を皮切りにセミナーはスタートしました。

まず、吉田氏は、「今回は、データベースの説明の前に、DRMに関して考えていきたい。それを活用するためのデータベース、という位置づけとして、話をしていきたい。」と述べました。

初めに、吉田氏は最近、”猫の気持ちがわかる本”という本を読んでいるそうで、それを買った理由は表紙の猫の写真がかわいかったからという説明をされまし た。そのさい、「実は”支援”という形もこういった買い方に似ている。最初のインパクトが、支援者の行動にかかわってくるから。」と述べていました。吉田 氏は、今回のセミナーは”売り方は類人猿が知っている”というマーケティングの専門家が書いた本を参考にしていると述べた上で、上記の行動もその専門家の 購買理論に当てはまるそうです。

○寄付について
その後、吉田氏は日本において寄付が広まらない理由、また寄付を促進させるにおいて重要な点を述べられました。
まず、日本人が寄付をしない理由については、「そもそもそういった意識がない、では話が広がりすぎてしまうので、ただ単に今まで寄付が身近でなかった分、 単に寄付になじんでないと考える方が展開しやすい」と述べ、慣れていない支援者に対して、どうアプローチすべきか、と考えるとわかりやすいと説明しまし た。
そして、その後先ほどの参考にした本より、「人間は、古くは飢餓から身を守るため目の前の生存がなによりも重要で、それは現代人も同じため、将来得られる ものより、目先のものに重きを置く」と述べ、寄付もそれ似ていて、お金を失うことに対しての不安感があり、失うことによって、どういった事が起きるのかが 明確でないと、寄付がしにくいと説明されました。
また、”人間は周りの人のやっている事が非常に気になる”という習性を寄付に利用する事が重要だとも述べられました。あるホテルの例では、タオルを再利 用してほしいために、” これまでおとまりいただいたお客様の大半がタオルを再利用しています”というカードを設置したところ、たくさんの人が再利用をしたそうです。吉田氏は 「メッセージひとつで人間の行動は変わる。」と述べられました。
最後に、吉田氏は、「ファンドレイジングはただ説明するのではなく、なるほどと思わせ、やらなきゃと行動を変えることを意識する必要性がある。」と述べられました。

○DRMとは
次に、吉田氏は、DRMの説明をされました。「DRMは、CRM(Customer Relation Management)のNPOバージョン。かなりCRMのコンセプトに近いが、対価が成果報酬ではなく、社会的な対価であるため、区別をしている。」と述べました。

吉田氏は、「学生時代、同学年(200名程度)の人の顔と名前を全員覚えていますか?」の問いを始めに、記憶は2・30人、多くて300名程度しか覚えら れないのに対し、データベースは、上にあげたものも含め、すべてを記憶する事を述べました。そのため、「NPOでも支援者が1000人を超える様な場合に は、何を求めて支援しているのかがわからなくなり、データベースなしでのよいコミュニケーションは難しくなる。」と述べました。

-感情の力

その後、Dog or Catという米国の愛好家団体を例に取り上げ、その団体は入会時に犬、猫を飼っているかを聞き、それをデータ・ベースに蓄積している事を述べられました。 収集した情報を利用し、その団体では犬を飼っている人には犬を、猫を飼っている人には猫の絵をついたDM(ダイレクト・メール)に変更したところ、寄付の 反応率は、通常のDMと比べ、2倍強(230%)になったそうです。この様に、「感情による行動の変化は、NPOにおいては非常に大きく、簡単な情報を収 集し、データベースの技術を生かして工夫するだけで、これだけ効果が違う。」と述べられました。

感情に関する情報としては、上に上げた様な正の情報も蓄積し、適切なタイミングで活用する事も重要ですが、同時に、
-メルマガは不要である
-領収書が毎回必要

といった様な知らないと支援者がマイナスの感情を抱いてしまう情報は、蓄積しておく必要がある。と述べられました。
そういった情報を管理し、「相手(寄付者)を共感させ、自分(所属団体)がそれに対してどこでフィードバックするかが重要である」と述べられました。現 在、NPOでは寄付者の立場に立ったフィードバックをしている事は少なく、支援者を金額別、関係別に分けて、それぞれに合わせ、フィードバックをする量を 変えたりして、フィードバックの工夫をする必要性を述べていました。支援者が増えた場合、この差異をどうつけていくかで、その後の関係性の発展が変わって くるそうです。

この様な、

1、支援者が共感して寄付をする

2、非営利団体がそのお金を元に活動を行う

3、支援先から感謝される

4、支援者へ感謝・フィードバックする

5、更に寄付・・・

と言った流れの循環を、吉田氏は”幸せの循環”と述べていました。

○データベースの活用法
次に、吉田氏はこういった関係性向上の上で、データベースがどのように役立つかを述べました。

まず始めに、データベースの重要な観点として、”ムーブ・マネジメント”があると述べられました。データベースは現在の関係性のポイントを管理すると思われがちですが、ポイントをムーブさせるところを管理すること、が重要だそうです。

そのため、例えば、イベント参加者をどうすれば、マンスリーサポーターにするには、
マンスリーサポーターを大口寄付者に変えるにはどうすればよいのか、こういったムーブを考えていく事が重要。その後は、図を参照し、各々ある関係性のポイントをどうムーブさせ、また繋げていくかを空間的に考えていくことが重要だと述べられました。

また、団体として、来年度の目標設定を設定したりしている所は多いが、その数値を年間を通し、意識していない事が多い。現在のデータベースは、そんな際も、数値を入力すれば、即集計され、数値が常に最新のものになる利点を述べました。

○データベースの活用可能性
次に、吉田氏は今後のNPOに対してのデータベース導入可能性について述べられました。

まず、「日本のNPOのデータベース導入は世界的にみると遅れている。」と述べた上で、現在は、「日本では、今まで導入していなかったが、使いやすい最新 のデータベースを一気に導入できる。しかも、通常最新の技術は使いにくいものだが、データベースはあらゆる人に使えるよう設計されているので、最新でもと ても使いやすい」と述べられました。

データベースを導入する際は、全ての団体共通で利便性が向上する部分と団体固有の課題である部分が存在します。現在は、どう共通部分を活用し、固有の課題部分をどう構築するかをアドバイスする企業も現れてきているそうです。吉田氏のファンドレックスもその一つです。
そのため、データベースは、全てをゼロから考えるのではなく、既にセールスフォース〈http://www.salesforce.com/jp/〉の様 な既にパッケージ化されているものを導入し、団体固有の部分でシステム化する必要がある場合、そこに予算を使うべきだと述べられました。

その後、吉田氏は、「従来は管理業務で必要なもののみ蓄積していたが、今後は、寄付者がどういった関心があり、年齢は何歳で、どういったイベントに参加したのか、という部分まで管理する必要がある。」と述べました。
そして、「これを踏まえて戦略的なコミュニケーション、経営戦略へのフィードバックを出来るようなデータベースの導入を考えていくべき。」

○まとめ:
最後にまとめとして、

・DRM
支援者の関係は、点で考えるのではなく、線でとらえることが重要。

・サイクル・オブ・ハピネス(幸せの循環)
支援者が共感し、団体側もそれに共感することが大事。それがサイクル・オブ・ハピネスという循環になり、そのサイクルにより、たくさんのお金が回りだす。

・非営利団体の寄付者のデータベース
-泥臭い活動もいいが、非常に現場の人は疲れている。
-その点において効率化をキーワードに考えてみてはどうか

と述べられ、吉田氏のご講演は終了しました。

その後、会場からは、データベースの製品そのものに関する質問や、団体としての現状の顧客管理における悩み等、多くの質問が飛び交い、参加者の方々の熱気に包まれながら、今回のセミナーは終了しました。