【報告】第8回ファンドレイジング研究会~AFPファンドレイジング大会報告会~
第8回ファンドレイジング研究会
■AFPファンドレイジング大会報告■
報告:野村英輔(日本ファンドレイジング協会 インターン)
去る5月20日に、日本財団ビルにて第8回ファンドレイジング研究会を開催いたしました。
「ファンドレイジング研究会」は当協会の会員を主に対象として、NPOの資金調達改善やスキルアップ研修を実施することを目的として開催しています。相互の学び合いの環境を担保するために、参加型で開催することでノウハウや知見の集約・共有を図ります。
今回は、少し大きめの会場にてAFP全国大会の報告を行うという形で行いました。
今回報告したのは、AFP全国大会に招いていただいた、鵜尾と徳永がいたしました。
全体の流れとしては以下のように行いました。
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1.AFP全国大会の概要紹介
2.鵜尾の報告(日本ファンドレイジング協会 常務理事・事務局長)
◆ 参加セッション概要
◆ 5つの気づき
3.徳永の報告(日本ファンドレイジング協会 事務局次長)
◆ 参加セッション概要
◆ 5つの気づき
4.質疑応答
1.AFP全国大会の概要
AFPは今年創立50周年を迎えた米国のファンドレイジング協会。
米国内を中心に世界中に171もの支部を持ち、3万人を越える会員を擁しています。会員は資金調達にあたってファンドレイザー倫理規約に従うこととし、ファンドレイジングの研究や普及活動を行っています。
今回参加したのは、年に1度行われる全国大会。
場所は、アメリカのボルチモアという場所。
到着したのは、前日の夜中。
ホテルに着いてまずびっくりしたのは、AFP世界大会の専用キーが用意されていたこと。
ホテルにまで全国大会の雰囲気が波及していたのはとても印象的なことでした。
このように、研究会当日は、その他、チケットカウンター、その周囲にある本売り場の様子、雰囲気、セッションの様子、また会場のテンションが非常に高くなってバレーボールなどをしたパーティーなどが報告されました。
また、全国大会の合い間の時間を使って、AFPの本部も見学させていただきました。
2.鵜尾の報告
◆参加セッション概要
鵜尾にとっては、4回目の参加である全国大会。
鵜尾が参加したのは以下のようなセッション。
①【How Tweet it is! Mastering Social Media for Fundraising】
FACE BOOKやツイッターを活かしたファンドレイジングや支援者拡大についての方策について、事例を紹介しつつ共有するもの。
②【A Planned Gift is a planned gift, Right?】
アジア、ユダヤ、北アメリカ、ネイティブアメリカン、ゲイのコミュニティにおけるPlanned Givingについて4人のスピーカーが語る。
③【General Sessionツツ大司教】
ノーベル平和賞受賞のツツ大司教がフィランソロピーの重要性を語る講演。
全国大会中には毎日1つ、全体セッションがあります。
3日目には、1984年にノーベル平和賞を受賞されたデズモンド・ツツさん。
「フィランソロピーとは」という講演に会場は静まりかえり、終わるころには会場からは大きな拍手が行われていました。
④【The State of European Fundraising】
Blackbaud社が展開しているSONI調査(主要国寄付動向比較調査)の概要説明。
⑤【Mission Impact: Breakthrough Strategy for Nonprofits】
専門家が、ブレイクスルーできないNPOに向けた考え方を説明。
◆5つの気付き
1、50年間の寄付市場の成長とAFPの歴史は一体となっている
2、携帯テキストメール寄付が455%アップという事実が示す可能性
3、twitter,Facebookの活用可能性
4、各文化圏と寄付傾向(フランス、native american)
5、SMARTのAは、Achievale ではなく、Almost impossible
(鵜尾の感想)
アメリカの寄付の歴史と、協会の歴史は本当に一緒だなと感じた。
今や4000人を集める全国大会でも、初回では400人しか集まらなかった。成長していった歴史を感じる。
アメリカでファンドレイジングが成功しているのは、もちろんノウハウの共有とかもあるけれども、1番感じたのは、ヒーローをたくさん生むことが重要だなと思った。
3.徳永の報告
様々なセッションの説明のところにはレベルや専門性の程度に関しての説明があり、徳永は、ビギナーのセッションに中心に参加しました。
徳永が参加したのは以下のようなセッション。
◆参加セッション概要
①【理事が寄付をしたくなるには?】
50人のエリート理事への調査から、理事に寄付に積極的に参加してもらうためのノウハウを説明。
②【上司をファンドレイジングに参加させるには?】
ファンドレイザーが組織の中で、どのように上司に働きかけて、ファンドレイジングへの行動を促すためのセッション。
③【大型寄付を成功させるには】
小型寄付ではなくて、大きな金額の寄付を成功させるための戦略を成功させるポイントを説明。
④【寄付者が知りたい11のこと】
寄付者が知りたいと思っていることをポイントにして説明。組織内で統一見解をつくることが重要だったようです。
⑤【メルマガの全て】
アメリカで普及してきているHTML形式のメルマガを軸として、それをどのように配信していけばいいかということを説明。そのメルマガ配信の検証の重要性なども指摘されていました。
⑥【キャンペーンが失敗する7つの理由】
成功ではなくて失敗の原因を議論するようなセッション。
⑦【小規模なNPOのための5つのポイント】
小規模なNPOにとってファンドレイジングを進めていくためのポイントを説明したセッション。とにかく人に会うことが大事だという講師の方のお話がありました。
◆5つの気付き
・ファンドレイジングにはコストをかけなくてはダメ(人×時間)
・新しい技術を積極的に取り入れる
・理事会の責任と役割を重要視
・ファンドレイザーは人々のフィランソロピー精神を社会で実現させる人
・コミュニケーションのプロになる
4.質疑応答
・日本では、どのようなドナー教育をしていったらいいと思うか?
→寄付者の権利憲章のように寄付者が自信を持てるような仕組みをつくっていくこと、そして、子どもの頃からのフィランソロピー教育を行っていくことが重要。
・大型寄付の成功率はどのくらいか?
→成功率としては全体でもそこまで高くはないと思う。トライする回数を高めること、そして、ドナーをマンスリーサポーターから育てていき、お願いする層をしっかり狙うことが重要。
・共同募金会など1番参考にしてほしいポイントは?
→共同募金会に1番近いのは、United way。日本のフィランソロピー教育を担ってきたのはそのような共同募
金。そこに今後の可能性があるのではないかと感じた。
・アメリカで感じた、これは日本では少し参考にするのはむずかしいなと思うものは?
→個人情報を簡単に手に入れること。アメリカではヨットの購入者リストなどを業者が集めてそれを手にして大型寄付などを狙っていくことが可能になっているが、個人情報に厳しい日本では難しいのではないか。
同時に細かい情報を集めてデータベースを形成していくことはまだまだ日本では難しいのかもしれない。
・Twitter, Facebookに関して具体的な話を教えてほしい。
→いきなりそれが寄付につながるという考え方はやめたほうがいい。そうではなくて、ゆるやかなコミュニケーションとして使うべき。あとは、お金持ちの方や、社長さん、会員さんの最近の考えを知っていることは、ファンドレイジングにとってプラスになるかもしれない。
・メルマガの話、具体的な数字的なデータの話はあったのか?
→具体的なデータなどは、サイトから自分でダウンロードしてみることができる。
・金融機関の寄付への関わりが可能性あるのではないか、と考えている。アメリカの場合はどうだろうか?
→アメリカで金融機関は富裕層だけじゃなくて、かなり身近にある。
自分のお金の使い方に関しての相談とかをよくやっている。
信託銀行が、NPOとの間にはいって仲介していくということには非常に可能性があるのではないか。
・とても元気な印象を受けたが、金融危機による落ち込みを打ち破るようなものは感じられたか?
→景気に関しては、来年は上がると思うという雰囲気の持っていきかたをしていたのが印象的でした。
経済危機だから何をすべきかという話に対しては、会長のマエハラ氏から「基本に立ち返れ」とのお言葉にありました。多くの団体に支援している人が寄付者の中には多い。だから先に嫌われないように、基本をしっかりやっていくことが大事。
その他質疑応答を多くいただきました。
その後は恒例の1時間1本勝負の食事会を行い、今回もほとんどの方にご参加いただきました。
今回鵜尾と徳永は4日間アメリカに行かせていただきました。
招待された形ではありましたが、今回渡航させていただいたのは、会員の皆さんや日本財団様のおかげだと思っております。ほんとうにありがとうございました。
今回の研究会は、報告会ということで、講義形式でしたが、いつもの研究会は会員同士の横の議論もしております。
なお、研究会では、終了後の1週間後の週末に、参加者がオンライン上(ファンドレイジングネット:http://frn.npoweb.jp/ )で研究会を振り返る週末書き込みイベントを行ってます。
研究会の2時間だけではなく、その後に皆で振り返ることで、さらに学びが深まればということで始めたものです。
研究会は会員限定で開催されるものです。会員となって御参加を希望される方は、こちらから会員申し込みをお願いいたします。