枠をこえる一年へ|Annual Report 2024-2025
私たち日本ファンドレイジング協会は、2024年度を、これまでの先行投資的な取り組みを着実な社会の変化につなげる年として位置づけてきました。そして、2025年度、私たちはあらゆる枠を超え、社会のお金の流れを進化させるため、私たちをとりまくエコシステムを健やかに、しなやかに、拡張する新たな挑戦をスタートします。
新しい挑戦
New Challenges for 2024-2025
当協会の原点である、ファンドレイジングのプロフェッショナルを育む取り組みは、学びと実践のかけ橋を通じて、さらなる進化を目指してまいります。また、昨年度スタートした「CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)」に18才(当時)の髙田結愛さんを迎える試みは、今と未来に新たな息吹をもたらし、今年度さらに進化しようとしています。
そして、グローバルな連携はさらなる深化を目指すと同時に、ローカル(地域)においても、お金の流れを生み出す新たな挑戦を開始します。その一つが、年次カンファレンス「FRJ(ファンドレイジング・日本)」の2026年11月の京都開催と、島根県雲南市において自治体・コミュニティ財団・ビジネスセクターと協働して進める新たな資金循環モデル創出の試みです。
挑戦をともにする会員の皆様の声に耳を澄まし、その軌跡をたどりながら、そこから見えてきた次なる一歩を見つめます。
一緒に踏み出した最初の一歩
ファンドレイザーと団体、挑戦をともにした9か月
研修や資格制度、専門スクールを通じて、ファンドレイジングを学んだ方が実践力を磨くために、ファンドレイジングに取り組みたい団体とのマッチングをを行う「ファンドレイジング実践プログラム」は2年目となりました。同プログラムに参加した伴走支援ファンドレイザーの石谷絢さんにお話をお聞きしました。
石谷 絢さん
(伴走支援ファンドレイザー、ファンドレイジング・スクール6期生)
ファンドレイジングの伴走経験を積みたいという想いから、ファンドレイジング実践プログラムに参加しました。ファンドレイジング経験がほとんどない団体さんに伴走させていただき、チームづくりやビジョン・ミッションの策定など、ファンドレイジングの最初のステップに9か月間、一緒に取り組みました。経験がなくて迷うこともありましたが、ペアで入ったもう一人のファンドレイザーや、メンターのファンドレイザーからフォローしてもらいながら進められたことが、とても心強いと同時に大きな学びになりました。
実務と研究のかけ橋に
寄付白書2025で「寄付とはなにか」に挑む
2025年12月には、4年ぶりとなる「寄付白書2025」を発行します。クラウドファンディングを通じた多くの皆様のご寄付によって世に送り出される同白書の発刊に向けて、寄付白書発行研究会の委員に新たに加わり、執筆を進めてくださっている京都大学特定准教授の渡邉文隆さんにお話を伺いました。
渡邉 文隆さん
(京都大学成長戦略本部 特定准教授、寄付白書発行研究会委員、
京都大学iPS細胞研究財団 社会連携室 特命専門業務職員、准認定ファンドレイザー)
ファンドレイジングの実務者が、研究に取り組むケースが増えてきていると感じています。そうしたメンバーが寄付白書の執筆に加わることで、「実務」と「研究」がシームレスにつながった寄付白書が生まれるのではないかと感じています。私は今回、寄付がこれまで日本でどのような役割を果たしてきたのか、また、寄付は一般に思われている以上に大切な財源なのではないかという視点から、歴史的な資料をひもときながら執筆を進めています。また、日本の寄付市場において重要な位置を占める「法人寄付」の中身に迫るため、全認定NPO法人に独自調査を実施した結果にもご期待いただきたいです。
事業と財源の成長をともに目指す
新たな資金提供モデルの構築に挑む
当協会では、インパクトの創出に向けて企業や海外の財団とさまざまな資金提供モデルの構築に取り組んでいます。今年からは、JPモルガン・チェースの協賛のもと、困難な状況にある女性の就労やキャリア形成を支援する新たな助成プログラム「HERstory Career Partner Program」を開始しました。本プログラムの企画・運営にファンドレイザーとして携わっていただいているファンドレイジングコンサルタントの御手洗薫さんにお話をお聞きしました。
御手洗 薫さん
(株式会社岡澤商店 ファンドレイジングコンサルタント、認定ファンドレイザー)
IT企業からNPOに転職し、2022年にはファンドレイザーとして独立。現在は、さまざまな団体にアドバイザーとして関わっています。ファンドレイジングの教科書では、事業・財源・組織の三位一体の成長が重要だとされていますが、実際の現場では、どうしても事業が生み出すインパクトよりも、財源の獲得に意識が偏りがちです。このプログラムでは、ファンドレイジングとインパクト・マネジメントの両方に同時に取り組みます。目指すゴールに対して「自分たちが今どこにいるのか」を確認し、それを伝えることでファンドレイジングの訴求力も高められることを実感しています。
進化するFRJ
枠をこえて、システムチェンジを目指す
複雑化する社会課題を前に、従来の課題解決の枠組みそのものの限界が明らかになりつつあります。その中で、当協会はこれまで15年にわたって私たちのコミュニティの中核をなし、多様なエコシステムを育む役割を担ってきた年次カンファレンス「FRJ(ファンドレイジング・日本)」を、これから3年をかけて段階的に進化させていくことを決定しました。(2025年12月のスペシャル版開催、FRJ2026の京都開催について、詳しくはこちら)
今年1月に開催したFRJ2025で、当協会の学生インターンとしてU24学生無料招待の取り組みをリードしていただいた小室拓巳さんにお話をお聞きしました。小室さんは、ECサイトで買い物と同時に寄付ができるサービスの開発を通じて、社会をより良くする人や組織に、リソースが十分に行き渡る社会を目指して活動しています。
小室 拓巳さん
(横浜国立大学4年生、日本ファンドレイジング協会 学生インターン)
U24学生招待によって学生が参加しやすくなったことで、FRJ2025の会場には若い人の姿が多く見られ、これまでとはまた違った熱気や活気が感じられました。日本にはおよそ5万のNPOがありますが、30歳以下の代表の比率は0.1%にとどまっています。FRJを通じて、学生が若いうちからNPOで働く人に触れる機会をこれからもつくっていきたいと思います。
また、次回のFRJスペシャル版のテーマ「システムチェンジ」は、まさに私の関心領域で、既存の枠を超えて社会の構造そのものを変革していくことが、今後ますます重要になってくると感じています。ぜひ参加したいと思います!
新しいパートナーを迎えて
Welcome to the JFRA!
新理事にICMG Group 代表執行役副社長の辻悠佑さんが就任
経済同友会と新公益連盟によるボードマッチプログラムをきっかけにご縁をいただき、以来、当協会が今後、社会の中でどのような変化を生み出していくかという議論をともに重ねてきました。ソーシャルセクターとビジネスセクターの連携を力強く牽引していただくことを期待し、このたび辻悠佑さんに当協会の理事にご就任いただきました。
辻 悠佑さん
ICMG Group 代表執行役副社長
ビジネスセクターとソーシャルセクターの力をかけ合わせて、インパクトイノベーションがあふれる日本をつくっていくうえで、日本ファンドレイジング協会は、これからますます重要な役割を担っていくと感じています。信頼関係を土台としたJFRAのエコシステムは、日本にとって唯一無二の貴重なアセットです。私もその仲間に加わらせていただき、皆さんと信頼関係を築き、ともに未来を創っていきたいと思っています。
支え合い、ともに学ぶ、
健やかなコミュニティを
例年、総会前に実施しているファンドレイジング調査も、今年で3年目となりました。約300人の会員の皆様にご協力をいただいた結果から、新たな道筋と課題が見えてきました。
ファンドレイジング業務の中でのコミュニケーション上の課題に関する新たな設問からは、多くの方が立場や背景の違いによる認識のズレを感じながら活動していることが明らかになりました。一方で、現場でのさまざまな工夫や配慮のアイディアが示されました。
また、外部支援者として有償でファンドレイジング業務に従事されている方への設問からは、報酬設計に関してさまざまなジレンマや葛藤を抱えながら団体と向き合っている姿が浮き彫りになりました。
「ファンドレイザーの仕事と意識に関する調査(2025年度版)」の結果全文はこちら
本調査の目的は、会員の皆様が直面する課題やニーズを明らかにして、当協会の事業に反映していくことにあります。同時に、一人のファンドレイザー、あるいは一団体では解決へ向かうことが困難な課題に対して、現場の実践やアイディアの共有を通じて、会員の皆様同士が支え合い、学び合うきっかけを作っていくことを目指し、今後も毎年調査を重ねてまいります。
ひとりの行動から、社会は変わる。
枠をこえ、大きなうねりを
2009年の団体設立以来、私たちは信じてきたことがあります。それは、一人ひとりの想いや行動こそが、一つひとつ周囲へと広がり、それがやがて社会を変える大きなうねりとなるということです。当協会が取り組むあらゆる事業の根底には、その信念があります。
世代、国境、資金の種類、出し手と受け手という関係性ー。私たちはこれらすべての枠を超えて、社会課題解決に向かうお金を呼び覚まし、意志あるところへ流し、届け、この社会により大きなインパクトを生み出すために、あらゆる挑戦を行ってまいります。
その過程で生まれる試行錯誤や感情を明日へのエネルギーへ変え、より遠くへ、より一層歩みを深めていく一年に、どうぞ皆様のあたたかなご支援とご参加をお願い申し上げます。
Special Thanks to Our Partners
最後に、2024年度をともに歩み、2025年度の新たな挑戦をともにしてくださるスペシャルパートナーの皆様を、心からの感謝とともにご紹介させていただきます。
スペシャルパートナーは、寄付・社会的投資が進む社会の実現に向けて、一緒にチャレンジする法人パートナーです。