投稿日:2019年8月8日

本当に見たかった「ファンドレイジング・日本」が今ここから始まる|FRJ2019特集号 巻頭インタビュー

「日本一、人のスイッチが入る場所」。10年前、アメリカでファンドレイジング大会に出会い、それを日本で実現した当協会代表理事の鵜尾雅隆は、「ファンドレイジング・日本(FRJ)」という場所をそう表現しました。10年という歳月の中での進化とこの先の未来に想いをはせ、第10回大会を記念するFRJ2019特集号、巻頭インタビューをお届けします!

プロフィール

日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾 雅隆

JICA、外務省、米国NPOなどを経て2008年NPO向け戦略コンサルティング企業(株)ファンドレックス創業、2009年、寄付・社会的投資が進む社会の実現をめざし、日本ファンドレイジング協会を創設し、2012年から現職。認定ファンドレイザー資格の創設、アジア最大のファンドレイジングの祭典「ファンドレイジング・日本」の開催や寄付白書・社会投資市場形成に向けたロードマップの発行、子供向けの寄付教育の全国展開など、寄付・社会的投資促進への取り組みなどを進める。

聞き手

日本ファンドレイジング協会 マネージング・ディレクター 宮下 真美

ファンドレイザーの専門家育成プログラムの事業統括、及び、Salesforce(世界最大のクラウド型CRM)の活用を軸に、広報・マーケティング全般の業務を統括。2017年、富山県に移住後も、マネージング・ディレクターとして、リモートワークスタイルで従事。

アメリカのファンドレイジングの「心臓」、AFPとの出会い

──今年10回目を迎える「ファンドレイジング・日本(FRJ)」。ファンドレイジングに関する世界4大カンファレンスの一つに認められるまでになりました。この10年を振り返るにあたって、その出発点となったAFPとの出会い、そしてなぜ日本でFRJを実現しようと思ったのかをまず聞かせてください。

AFP※との出会いは、ファンドレイジングを学ぶため渡米していたときのことです。当時、ファンドレイジングスクールや大学でアメリカのファンドレイジングの仕組みや制度を学びながら、日本に帰って何を最初に実現するのかを模索していました。すでにファンドレイザーの資格制度がありNPOの規模も大きいアメリカに対して、何もかもがない日本。違いすぎるくらいに違いのある国で、頭の中がゴチャゴチャになっていたときに、AFPの会場にたどり着きました。

※AFP International Conference on Fundraising 今年で56回目の開催となるファンドレイジングに関する世界最大の国際カンファレンス。毎年全米を中心に、世界各地から4,000人を超えるファンドレイザーが集う。

アメリカのAFPを目の当たりにして、すぐに「コレだ!」と直感しました。アメリカのファンドレイジングや社会のお金の流れ、様々なエコシステムにエネルギーを与え、収縮させる「心臓」がここにあると感じました。ここが収縮を繰り返すことで、セクター全体が成長してきたということに気がついた時から、このような場を日本につくるというイメージはありました。しかし、これを日本で成功させるためにどうしたらいいのか、そもそもこの学びの場にニーズはあるのか、全くわからない中で手探りの模索がはじまりました。

協賛企業、有資格者、チャプター
ファンドレイジングのエコシステムが育っていった10年間

──10年前、400人ではじまったFRJは、今や1600人もの人々が参加するイベントに成長しました。すべては、このFRJに関わって下さる方々のおかげだと思っています。FRJを10年間を見てきた鵜尾さんは、この成長の原動力となったものが何だと思いますか?

第一回目の大会のとき、開催日約1ヶ月前の時点で、80名しか申し込みがなかったときは焦りました。日本にもってくるのはまだ時期尚早だったのかと。しかし、蓋を開けてみると、400人もの人が参加してくれました。しかも、ものすごくエネルギーと一体感がある場所が生まれました。若い世代の参加者も多く、ここ来たからには、必ず何かを持って帰るのだという空気感にあふれていました。すごく可能性のある場になったことを実感しました。

この10年で大きなターニングポイントになった出来事が3つありました。一つ目は、FRJに集ってくださるサービスプロバイダーの存在です。彼らは、ただの協賛企業としてでなく、あの場所を自分たちのイベントと考えて、一緒に盛り上げようとしてくれます。先頭を切って社会を変えようとしている企業が一堂に会す場所としての「協賛ブース」の存在は、大会に大きな価値とエネルギーを与えてくれました。

二つ目のターニングポイントは、ファンドレイザー資格をもった人たちの存在です。
あの場所が単に成功事例を知るだけでなく、本当の変化を生み出す場所となりえたのは、
認定・准認定ファンドレイザーの存在が大きかったと感じています。彼らの登場で、ファンドレイジングの共通言語化が進み、参加者の議論の質が一気に上がりました。

最後のブレイクスルーを生み出した存在は、チャプターです。チャプターの登場で1,600人のコミュニティの中にいくつものサブコミュニティが生まれ、FRJの場に結集し、全国に広がっていくという有機的な動きが起こりました。また、チャプターができたお陰で、この大会が初対面の参加者ばかりではない「久しぶり!」と言える場になったと感じています。

協賛企業、有資格者、チャプター。各々がこの大会において主導的な役割を果たし、様々なことを自ら仕掛けてくれる人たちがどんどん生まれてきました。そのことが、FRJというコミュニティをとても強いものにしたと思います。ファンドレイジングのエコシステムが一つずつ育っていった10年間だったと感じます。

共感性をマネジメントする時代に問われる、FRJの真価

──最後に、進化し続けるFRJの未来を教えてください!

この10年で、ファンドレイジングに必要な派生的な動きがどんどん形になってきました。社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)や遺贈寄付の全国ネットワーク、休眠預金を社会的事業に活用する仕組みやNPOのガバナンスを評価する非営利組織評価センターの発足。そのすべてがファンドレイジングにつながっていきます。

アメリカには様々なファンドレイジングのインフラがある中で日本には何もなかった時代に、まずは「心臓」を作ろうと思ったわけですが、10年経っていよいよ“本物の”「ファンドレイジング・日本」のステージがきたと感じています。様々なイニシアチブが、FRJという一点に集う相乗効果性、これまでとまったく異なる進化系エコシステムは、もっと幅の広い気づきを参加者にあたえる場となるでしょう。いよいよ、ここからが「ファンドレイジング・日本」のセカンドステージです。10年前、本当に見たかったステージが、今ここからはじまろうとしています。

この先、「共感性」というものを社会が一つの資源としてマネジメントする時代が世界中でやってきます。共感性はビジネス、人間関係などあらゆる側面で必要とされるものです。それが最も必要となってくるのがファンドレイジングの領域です。その時代にFRJをどう融和させていくのか。FRJという場所で、共感性のマネジメントの本質がどんどん進化していくことが、日本社会全体を本質的な意味で「共感体質」にしていくことを期待しています。

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