投稿日:2022年7月29日

海外で仕事がしたい!原さんが発展途上国を志した理由と現地で直面した困難

鈴木 大悟Daigo Suzuki
准認定ファンドレイザー
フリーランス・ファンドレイザー

原 光一郎(はらこういちろう)さん
1993年生まれ。IT企業のシステムエンジニアを経て、現在は青年海外協力隊としてジンバブエで活動中。発展途上国のインフラを改善すること、ひいては貧困や格差問題解決に貢献することが自身のミッション。趣味のギター&バイオリンを活かし、現地の方々と音楽や踊りを通じて楽しい時間を過ごすのが好き。
(※ 原さんの発言は個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません。)

「自由にあなたらしいNPOキャリアを描く」というテーマで、ワカモノ人材にインタビューする連載企画。
6人目は、青年海外協力隊としてジンバブエ共和国で活動されている原さんにお話を伺いました。

なぜ海外で、なかでも発展途上国でキャリアを描こうと思われたのか、原さん個人のミッションにかける想いをお聞きしました。

きっかけはドイツで出会ったある清掃員の男性だった

中学1年生のとき、ドイツである光景を目の当たりにしました。
父と電車に乗っていると、私たちの向かいに一人の男性が座りました。
父がその方といろいろと話す中で、西アフリカの島国から来て、今は清掃員の仕事をしていることが分かりました。

その時、私は、父が仕事で海外に赴任しきれいなオフィスで働いている一方で、この方は同じように自国を離れてドイツに来ていても、清掃員の仕事をしている事実に衝撃を受けました。

生まれた時から就職の選択肢が制限されてしまっているのではないか、この違いは何なんだろう、と感じました。

この時から、お金のある国とそうでない国を意識するようになり、いわゆる発展途上国のようなインフラが整っていない国に関わる仕事がしたいと思うようになりました。


アフリカの日常的な風景

本当に得をしているのは誰なのか?大手IT企業で感じた疑問

青年海外協力隊を志願した理由は大きく2つあります。

1つ目は、「単純に海外で働きたかったから」です。
子ども時代をドイツで過ごし、毎日とても楽しく暮らしていたのですが、その生活がある日、中途半端な終わり方をしてしまったことが心残りでした。

海外で働きたいだけなら、民間企業の駐在員というキャリアもあったと思うのですが、実現するまでに時間がかかるかもしれません。
「今すぐ海外で働きたい」という私の願いを叶えるためには、青年海外協力隊は最も現実的な選択肢に思えました。


協力隊訓練所でのひとコマ(左手前が原さん)

2つ目には、「テクノロジーは本当に人を幸せにするのか」という自分への問いがありました。
インターネットへアクセスする権利は人権の一つとも言われますが、ネット上で検索するだけでも、個々人の行動は企業にトラッキングされています。
そして、その情報は様々なマーケティング活動に活用されます。情報がお金と同じか、それ以上の価値を持つ現代で、巨大IT企業が利益を独占している事実があります。

その現状に、どうしても「テクノロジーやITは本当に人を幸せにしているのか」と感じずにはいられませんでした。
ITと資本主義の関係や、ITが社会に果たす役割とは何かという問いに、民間企業で働いているだけでは答えが見つかりそうになかったので、海外でボランタリーな組織に属することでその答えに近づけるかもしれないと考えました。

青年海外協力隊に入隊する前に、まずは今できることを始めようと思い、日本国内の子どもの貧困問題に取り組む認定NPO法人キッズドアのボランティアに参加しました。
本業のシステムエンジニアとしての仕事と、空いた時間でのボランティア活動の両輪が、一層ソーシャルセクターへの転身を後押ししました。

前回の記事でインタビューさせていただいた難波真人さんは、同じくキッズドアでボランティアをされていました。今回のインタビューは、難波さんからのご紹介で実現しました。)

民間企業からソーシャルセクターへキャリアチェンジする際に、不安を感じる人は少なくないと思いますが、私の場合は青年海外協力隊の任期が終わった後の展望もある程度想定していたので、不安はほとんどありませんでした。

グローバルに働くチャンスを増やすことが大きなテーマなので、任期終了後は大学院で修士号を取得し、国連で働きたいと考えています。

どうすれば人のやる気を引き出せるか?


青年海外協力隊の活動風景

青年海外協力隊の仕事は、ジンバブエの首都ハラレにある教員養成校で、コンピュータの管理および環境整備や、システム周りの環境改善などを任されています。

ジンバブエは、2000年代にハイパーインフレを経験しました。
前はできたことができなくなったという膝を折られるような出来事に多くの人々が直面し、なかなか人のモチベーションが湧きづらい状況にあります。

その中で、「自分たちでやってみよう!」という気持ちを起こしていただくためには、どうすれば良いのかと考えています。

前職では、自分がロールモデルになれば、周りの人にも良い影響が波及して変化が起きることを経験していたので、同じことをジンバブエでも試してみたのですが、うまくいきませんでした(笑)。今はまた別のアプローチを模索中です。


バンド演奏を通じて心を通わせています

あなたの職場に人生のお手本となるような方がいれば素晴らしいことですが、そのような方がいないケースも少なくないと思います。
私の場合は、会社で経験できないことや、会社では出会えない人と出会うために、NPOでボランティアを始めました。
そこで本当に濃い経験ができたので、他のコミュニティに目を向けてみる、というのも一つの手だと思います。

原さん、今日はありがとうございました!原さんに限らず、今回の連載を通じて、まずは行動を起こすことの大切さを皆さんが口を揃えて仰ることがとても印象的で、取材をさせていただいている私が最も学んでいることの一つです。次回のワカモノ人材は、一般社団法人Earth Companyの島田颯さんを予定しています。ご期待ください。

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Profileこの記事を書いた人

鈴木 大悟 Daigo Suzuki

准認定ファンドレイザー
フリーランス・ファンドレイザー

1994年埼玉県生まれ。慶應義塾大学商学部卒。大手証券会社でリテール営業に従事し、2018年に認定NPO法人かものはしプロジェクトの社会人インターンとして、NPOキャリアをスタートする。法人や個人大口の寄付開拓を担当する中で、日々たくさんの支援者の方々と実際にお話しさせていただき、寄付は”未来の社会への応援”であることを強く実感する。2019年にフリーランス・ファンドレイザーとして独立し、Webメディア事業の運営をはじめ、寄付募集のLP及び記事の制作や、遺贈寄付獲得のための設計支援などが特長。自らも収入の1割を寄付し続けることを信条とし、寄付を通して幸せや豊かさを実感できる方を、一人でも多く増やすことを使命とする。

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