投稿日:2017年5月19日

第2回 Step 1 組織の潜在力の棚卸

徳永 洋子Yoko Tokunaga
認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 理事

いよいよ、今回からファンドレイジングサイクルの各ステップについてご一緒に考えていきたいと思います。
今回は、その最初のステップ「Step 1 組織の潜在力の棚卸」です。ここでやるべき5つのことをあげてみます。

FRcycle

1)ファンドレイジングの重要性の確認

ファンドレイジングで成果をあげるには、その重要性を組織全体で認識していなければなりません。NPOにおいては、ともすれば、ミッション達成につながる諸事業の実施が表舞台となり、ファンドレイジングは「裏方の仕事」と捉えられがちですが、NPOにとってファンドレイジングとは、単なる資金調達の手段ではなく、人々に活動への理解を訴え、共感を呼び覚まし、寄付という行為を通じて活動に参加してもらうというそれ自体に重要な目的を持つ活動です。まず、そのことを組織内で確認してください。そして、事務局内ミーティングにおいて、また理事会において、常に「ファンドレイジング」を案件に入れてください。

2)責任者を決める

ファンドレイジングについての「責任者」を決めましょう。この場合の「責任者」というのは、ファンドレイジング専従の人でなくてもかまいません。理事でも、事務局長でも、あるいは会員管理のスタッフでも、とにかく、その「責任者」が団体内のファンドレイジングにかかる一連の取り組みの進捗管理と、その成果の確認を折々行って、その結果について組織内での情報共有を図っていってください。そうすることで、組織としての戦略的なファンドレイジングが実行できるようになります。

3)組織内の意思統一

団体の構成員は、理事長であれ、着任直後のスタッフであれ、外から見たらそれぞれが団体を表す「顔」です。ですから、外部の人と相対した際に、自団体についてきちんと語ることができなくてはなりません。また、スタッフによって、その説明が著しく異なるようでは混乱を招きます。
そこで、「自分たちの目指すものは何か?」「自分たちは何なのか?」をきちんと言語化して共有しておきましょう。 そのために次のような用紙を使ってワークショップをしてみてはいかがでしょう。

初めて会った人に1分以内で話せるように、まとめてみましょう。
・私たちは          を目的に活動をしています。
・その実現のために          といった事業を展開して
います。
・私たちの事業の特徴は         です。
・あなたも、私たちの活動に参加して、共に        な社会
を実現してみませんか。

 

これは、いわゆる「エレベータートーク」と呼ばれるものです。エレベーターに乗っている短い時間で言いたいことをわかりやすく伝えることです。これは、シリコンバレーの起業家が、投資家と同じエレベーターに偶然乗り合わせたフリをして、そのエレベーターが目的階につくまでの短時間にプレゼンテーションをしてしまうというところに由来した言葉です。「エレベータートーク」のポイントは、「短い時間で、興味を持たせる」こと。その後の本格的な説明の機会や団体ホームページへのアクセス等につなげるものです。スタッフ全員がこうした「トーク」ができるとファンドレイジングの可能性を高めます。

4)潜在力の棚卸

そこで、いよいよ組織の潜在力の棚卸作業を始めましょう。
限られた資源を最大限に活用してファンドレイジングしていくためにも、まずは自団体の持つ経営資源をきちんと把握しておかねばなりません。
その方法の一つとして「潜在力診断チェックリスト」をここに示します。「今、ここにある戦力」としての基本的なチェック項目は8つ。それらのチェックの内容のそれぞれについて確認してみてください。そこから、団体の強みや弱みが見えてくるはずです。それがわかったら、持っているものを活用する方策もたてられます。また、足りないものについては、何で補えるのか、あるいは、どこから、どうやって確保したらいいのかといった改善策も考えてみてください。

潜在力診断チェックリスト

5)寄付者志向の団体になる

すべてのスタッフに何らかの形でファンドレイジングに参加してもらいましょう。国際協力NGOで海外に駐在して支援活動に従事しているスタッフであっても、支援者向けニュースレターのための写真を送ってもらう、一時帰国時に報告会で話してもらうといった形でファンドレイジングのための活動をしてもらうことが可能です。
また、日常業務のなかでの誤った電話応対ひとつで、それまでのファンドレイジングの努力が水泡と化してしまうようなこともあります。トップからボランティア、インターンまで、団体構成員のすべてがファンドレイジングを意識して、支援者との良好な関係づくりを念頭に置いて行動することが大切です。
組織にとって、ファンドレイジングは、団体の目指すものを確認し共有し、各人が団体の運営のために貢献することで、その組織力自体を強化するものだと思います。組織一丸となってファンドレイジングに取り組んでいきましょう。

−−−−−−

この連載では、今回を含めて、以下の全9回の予定で「善意のお金の集め方」の基本を、ファンドレイジングサイクルに沿って、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

第1回 さあ、はじめよう!ファンドレイジング
第2回 Step 1 組織の潜在力の棚卸(今回)
第3回 Step 2 既存寄付者・潜在的寄付者の分析
第4回 Step 3 理事・ボランティアの巻き込み
第5回 Step 4 コミュニケーション方法や内容の選択
第6回 Step 5 ファンドレイジング計画の策定
第7回 Step 6 ファンドレイジングの実施
第8回 Step 7 感謝・報告・評価
第9回 ファンドレイジングサイクルをスパイラルアップさせるには

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Profileこの記事を書いた人

徳永 洋子 Yoko Tokunaga

認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 理事

東京都出身。大学卒業後、三菱商事に勤務。1998年から日本フィランソロピー協会で視覚障害者向け録音図書のネット配信事業「声の花束」を担当。2000年よりシーズ・市民活動を支える制度をつくる会で、おもにNPOのファンドレイジング力(資金調達力)向上事業に従事。そのプロジェクトの一環として、日本ファンドレイジング協会設立を担当し、2009年2月、同協会設立と同時に同協会事務局次長となり、2012年6月より2014年末まで同協会事務局長をつとめた。現在、同協会理事。2015年2月にファンドレイジング・ラボを立ち上げた。

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