投稿日:2021年3月3日

日本ファンレイジング大賞受賞団体に訊くファンドレイジングの可能性(後編)

本記事では、寄付・社会的投資が進む社会の実現のために、日本ファンドレイジング協会と一緒にチャレンジするスペシャルパートナーの皆さんをご紹介します。今回は、創設以来スペシャルパートナーとしてご支援いただいている株式会社ファンドレックスのイノウエヨシオ氏が、「日本ファンドレイジング大賞」を受賞された2つの団体の代表をゲストにオンライン対談したものをお届けいたします。

前編はこちら

プロフィール

「第11回日本ファンドレイジング大賞受賞」
公益財団法人佐賀未来創造基金 代表理事 山田 健一郎氏

「同 新型コロナウィルス支援大賞受賞」
認定NPO法人抱樸 理事長 奥田 知志氏

聞き手

株式会社ファンドレックス シニアパートナー イノウエ ヨシオ氏

誰かのせいにしていないか。自分たちは何をするのか

イノウエ:NPO法人の制度が生まれて23年が経ちました。これまでを振り返ってどのように感じていますか?

奥田:活動をはじめた最初の10年間は、国や行政が悪いと、その責任を押しつけていました。当時は、ビラ撒きしながら、何十人ものホームレスの方と一緒に支援を求め、市役所へ突入したりしていました。しかしながら、そうした行動を起こしても何も変わらない。「私たちに出来ることは全てやっているのか?誰かのせいにしていないか?」それに気づいてからは、協働できる相手とは、どことでも協働する「社会的協働」を目指しました。その姿勢を日和った態度だと批判する人もいましたが、「何をするのか」が大事で、「誰がするのか」は重要ではないのです。

イノウエ:対立では進まないので対話して手を携えていく「協働」を進めてこられたわけですね。「どんな社会をつくるのか、何をするのか」の視点は、寄付者にとっても可能性が広がっていくと思います。「協働」ということでは、佐賀未来創造基金もまさに地域の中でそのハブになろうとされてきました。

山田:私たちが新しいチャレンジを実施すると、それは、コミュニティ財団の在り方として間違っていると、批判を受けることもあります。しかし、目の前に困っている人がいるときに大切なのは、自分たちの在り方を論じることではなく、そこで「何をするのか」ということです。「出来ることは全てやっているのか?誰かのせいにしていないか?」という奥田さんの言葉は、重く心に響きました。批判に疲弊することもありますが、出来ない理由を探すのではなく、今持つ力でどこまでできるかを試行錯誤しながらも胸を張って実践していく、これまでの姿勢を貫いていきたいと思います。

イノウエ:佐賀未来創造基金の取り組みはとても先駆的です。また佐賀県の掲げる「自発の地域づくり」を後押しするために、自治体側でも「ふるさと納税でNPO指定寄付」ができる仕組みを取り入れておられます。同様のしくみを持つ都道府県や市町村は全国にいくつもありますが、社会の課題解決に繋がる実績を出しているのは、佐賀県が一番で、年間10億円にも及んでいます。

山田:いわば、佐賀県版「NPO指定のふるさと納税」は県外の先進的な団体を誘致する「CSO誘致」と並んで、既存の行政システムや制度を、CSOが地域課題解決のために活用できるように可能性を拡げた行政システムととらえることができ、返礼品での地場産業の振興ということだけにとどまらず、どの団体に託すかという目的がはっきりしている、これこそまさに「寄附」であることと税金の使い方を選択できるということで共感の輪が拡がり、これだけの実績が積み上がったのだと思います。

地域から未来へ。出会った責任をはたす

イノウエ:これからの未来への展望についても聞かせてください。

奥田:抱樸のミッションのひとつである「ホームレスを生まない社会の実現」です。地域でホームレスの支援施設を作ろうとすると住民の反対にあいます。「奥田さんの自己満足を住民に押し付けるな」とも言われます。しかし困窮者は地域から生まれています。困窮者だけではなく、犯罪者、非行少年も、その地域から生まれているのです。北九州では中学卒業後、進学も就職もしない子どもたちが毎年100人います。この行き場のない中学3年生が頼るのが暴力団組織だったのです。私たちは今、暴力団組織の本部跡地を再開発し、「希望のまち」を作ろうと動き出しています。暴力団の組織しか受け止められなかった子どもたちの居場所を作る、ホームレスを生まない町を作る、全ての世代のための「希望のまち」をつくろうと思っています。もう一つは、国の制度に困窮者の視点をいれることです。私たちは、これまで「出会った責任」を胸に、一人ひとりの感情と向き合いながら徹底した個別支援を行ってきました。この仕組みを国の制度にしていくことを目指しています。

山田:私たちはこども、災害、コミュニティ(教育、命、共助)を三本柱に、様々な社会課題に地域で助け合って、自分たちに出来ることを愚直にやり続けていきたいと思っています。そして、志を同じくする仲間を佐賀だけにとどまらず、全国のファンドレイザーの方々とも繋がっていきたいと思っています。奥田さんの「出会った責任」という言葉にとても感銘を受けました。奥田さんのように現場で真剣に向き合っている団体は佐賀にも沢山あります。それらの団体が地域でチャレンジし続けることができるように自分たちも成長しながら応援し続けていきたいと思います。

イノウエ:最後に読者の皆さんへひとことお願いします。

奥田:コロナ禍の社会や経済への深刻な影響を考えると、本当に恐ろしいですが、コロナ禍をきっかけに、クラウドファンディングを実施して皆さんと出会えました。1億円を託して応援していただいた責任をどう果たすか、背筋が伸びる思いです。いろんな出会いが私たちを形成していく事を、身をもって教えられました。授賞いただきありがとうございました。今後もよろしくお願いします。

山田:地域で生まれた課題を地域の皆で解決できるように、様々な方々と力を合わせて、ひとつひとつを大切にして乗り越えていきたいと思います。このような機会をいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

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