投稿日:2018年10月19日

スペシャルパートナー対談、第一弾! 「10年後の『当たり前』をつくる。ファンドレイジングの今と未来を生み出すファンドレックスの挑戦(前編)」

今年創業10年を迎えた株式会社ファンドレックス。取締役COO(最高執行責任者)のイノウエヨシオ氏と日本ファンドレイジング協会常務理事/事務局長の鴨崎貴泰が、これまでの10年を振り返るとともに、これからの展望について語り合いました。
この10年間に起こった出来事とファンドレイジングの進展や日本社会の変化は、密接に結びついていることが浮き彫りとなった記念碑的な対談を、ぜひお楽しみください。

プロフィール

イノウエヨシオ

株式会社ファンドレックス 取締役COO
NPOの発信力強化のために、「共感を得る活動紹介CM(共感CM)」とコンパクト・ダイアログ等を融合化新たな「発信力強化研修」モデルを開発し、全国各地で大きな変化を生み出す。「共感CM」作成支援実績は800団体を超える。また各地でチャリティイベント企画・運営の仕掛け人として活躍する一方、「志」金循環をテーマにした研修では年間3,000名以上に講演して高い評価を得ている。

聞き手

鴨崎 貴泰

日本ファンドレイジング協会常務理事/事務局長
1978年生まれ。千葉大学園芸学部緑地環境学科卒業。グロービス経営大学院卒業(MBA)。環境コンサルティング会社を経て、2009年公益財団法人信頼資本財団に設立時より参画し、社会起業家に対する無利子・無担保融資事業やNPOのファンドレイジング支援事業を行う。2013年に信頼資本財団を退職後、2014年NPO法人日本ファンドレイジング協会へ入職し、現在に至る。SROI評価やSIB(Social Impact Bond)の日本導入などに携わる。

※スペシャルパートナーは、寄付・社会的投資が進む社会の実現のために、日本ファンドレイジング協会と一緒にチャレンジする法人パートナーです。

ファンドレイジングの「今」をつくった10年

イノウエ:株式会社ファンドレックスは2008年7月に創業しました。ちょうどリーマンショックが日本経済にも暗い影を落としていた時代でした。そして、その翌年2009年2月に日本ファンドレイジング協会が発足しました。
10年前、セミナーなどで「『ファンドレイジング』という言葉を聞いたことがある人」と尋ねても、手を挙げる人はまばらでした。それが今では一般の方々にも「ファンドレイジング」という言葉を使ってもらえるようになってきました。まさに、理解者や支援者を増やすチャレンジを続けてきた10年だったと言えます。

鴨崎:そうですね。今では当たり前のようにつかっている言葉やサービスも、少し前まではなかったというものもありますね。初代iPhoneが発売されたのが2007年でした。今は当たり前のように使っているスマホも、この10年で広がってきたものですね。

イノウエ:現在、寄付の8割がオンラインからのクレジットカード決済だと言われています。10年前にはこのような仕組みは一般的ではなかった。2011年の東日本大震災の時は大手のNGOでもオンライン寄付ができないところがありましたが、Yahoo!ネット募金などが頑張って時代を後押ししていただき、今ではオンライン寄付が当たり前になりました。クラウドファンディングもしかりです。
インターネット上の技術の革新が時代を語る大きな要素となっていますが、それらにリンクして寄付を取り巻く状況も変化してきました。そしてその中でファンドレイジングも次第に認知されてきました。

(年表)2000年以降の社会の動きとファンドレイジングをとりまく変化

「非営利組織向けのサービスを『株式会社』でやるなんて!」

鴨崎:株式会社ファンドレックスがファンドレイジングに特化したコンサルティング会社としてスタートした時には、日本で唯一の存在でしたが、今ではたくさんの同業者がいますよね。イノウエさんは、そのことをどのように受け止めていますか?

イノウエ:とても嬉しく感じています。同業者がいることで、この業界をもっと盛り立てていこうと思います。今ではコンサルティングサービスだけでなく、ウェブサービスやマーケティング、システムなど様々なサービスの提供者がいますよね。非営利組織向けのサービスを「株式会社」が提供することを疑問視された創業時とは、隔世の感があります。

そういえば、よく名前が似ているので、「ファンドレックス」と「日本ファンドレイジング協会」はどう違うのですか?という質問を受けることがあります。
協会は、認定ファンドレイザー資格制度などの仕組みを作り、研修を行い、『寄付白書』などの信頼性のあるデータを公表すると同時に、アドボカシーを行い業界全体の底上げを担っていますね。
一方、ファンドレックスは「株式会社」として、特定の顧客、例えば個別のNPOや公益法人などに対してファンドレイジングのコンサルティングを行っています。すなわち、共感を得て支援者を増やすための戦略提案、研修、支援者との関係を深めるデータベース活用や、ファンドレイジングイベントの企画運営などを担っています。両者は、事業を行うスタンスが異なります、と説明しています。


ファンドレックス社が提供する戦略コンサルティング

鴨崎:まさに共に連携して歩みを進めてきた10年でしたね。協会の事業を展開する際にも貴重なアドバイスをいただいたり、互いに協力し合ってここまで来たという感じがします。ところで、ファンドレックスのクライアントはいま増えているのですか?

イノウエ:ありがたいことに、数多くのNPOや公益法人、学校、企業等のソーシャルセクターから依頼をいただいています。最近、特にご相談が増えてきたのは大学、特に国立大学等ですね。また、個別の団体でコンサルティング費用を負担できないケースでは、自治体や中間支援組織からその地域で活動するNPO向けに話をしてほしいというご依頼をいただくことも多々あります。いわば「地域全体の底上げをしたい」というニーズで、こうした場合には比較的、数年にわたって継続的にお手伝いをさせていただくことになります。さらに、地域の商工会などからも、寄付の話や社会貢献の現状について講演してほしいというご依頼を多くいただきます。

地域は、人もお金も情報も乏しい。だからこそ知恵を絞る。
それが地域の処方箋なのです。



鴨崎:「地域における『志金』循環」をテーマに、イノウエさんが全国で行っている講演はとても人気があるとお聞きしました。2017年の内閣府の調査(注1)によると、NPOなどの団体のうち、実に52%が「寄付について特に取り組んでいることはない」と回答しています。その点に関して、何か気にかけていることはありますか?
(注1:内閣府が2017年度に実施した調査(6437法人を対象とし、3471法人から回答)によれば、年間収益1000万円以下のNPOが半数を超え、4割は常勤の有給職員がゼロ人と、収益基盤、活動基盤ともぜい弱な団体が多いのが実情。個人からの寄付額0円が47%、0円超~10万円以下が17.7%であるにも関わらず、52.1%の団体が「寄付について特に取り組んでいることはない」と答えた)

イノウエ:成功事例を数多く示していく中で、これまで取り組んだことがないファンドレイジングに、「何とか自分たちもできそうだ」、「やってみたい」と仕向けていくことが自身のミッションだと思っています。すでに「学ぼう」という決意が固まっている人に対しては、協会が主催する研修や「ファンドレイジング・日本」などがありますが、まだそこまでの決意には至っていない人に、一段意識を高めてもらうことが必要だと考え、全国を回っています。
地域は、人も、お金も、情報も乏しい。しかし、資源が限られているからこそ数ある課題に対して、知恵を絞って、何とか実現できるようにする、というのが地域での処方箋なのです。成功事例は、実はそうした苦心の末に生まれたものです。後に続く人は、それをトレースしていくことで、小さな成功体験が生まれる。そのことで少し自信が生まれる。そしてそれを積み重ねていくことで、段々と共感が広がっている実感を持つようになっていくのです。

鴨崎:なるほど。確かに、「ファンドレイジング・日本」に参加されている地域の方々も、活き活きと顔が輝いて、地域に戻って「やるぞ!」という熱い想いが伝わってきますね。


株式会社ファンドレックスは「寄付・社会的投資が進む社会の実現」に向けて、
当会と一緒にチャレンジするスペシャルパートナーです。

本インタビューの後編はこちらから

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