【ご報告】第27回ファンドレイジング研究会
テーマ:「擬似私募債を活かしたファンドレイジング徹底解説」
日時:2012年5月8日(火)18時30分~20時30分
会場:会場:日本財団ビル 第1+2会議室
講師:全国NPOバンク連絡会 多賀俊二 氏
ほっとコミュニティえどがわ 理事 露木尚文 氏
記録担当:村松正彦(日本ファンドレイジング協会ボランティア)
【多賀氏の講演】
擬似私募債とは、関係者、支持者、サポーターにローンを組むイメージ。「市民債」「コミュニティボンド」も同じようなもの。NPOはなかなか銀行から資金を得るのが難しいため、こういう仕組みが出来た。NPO、ソーシャルビジネスが銀行ではなかなか理解されにくい。
一方で、擬似私募債はメリットが多い。擬似私募債は実質的には「ローンの束」。擬似私募債についての法律は無いので、法律に囚われずに自由に設計が出来る。
NPOと擬似私募債は相性が良い。その理由は、NPOの支援者のネットワークを通じて資金を集められる事。なので、彼らから信頼関係をベースにお金を借りる事が出来る。応援したい団体から高い金利を取ろうとは思わないので、金利を安く設定する事も出来る。
【露木氏の講演】
ほっとコミュニティえどがわの理事をしている。高齢者の住宅を作る時に疑似私募債を発行した。それを振り返り、現状と課題を話したい。
高齢者へのサポートは、ヘルパーを頼むか老人ホームに住むかが主な選択肢だが、ほっとコミュニティえどがわは「グループリビング」というものを提案している。これは、1日に何度か知人と顔を合わせる程度の共同住宅。
2000年頃に、“NPOを設立し自分達で資金を集めて高齢者グループ・ハウス「ほっと館」を作る”と決めて資金集めを始めた。しかし銀行からの借り入れは難しかった。
そこで「まずは入居したい人を先に集めよう」と考え、イベント・シンポジウムを開催し、賛同者を集めた。賛同者を中心に借入(ほっと債)の協力をお願いしたところ、1000万円以上を借り入れる事が出来た。
ほっと債への協力者が多数出てきた事が団体の信用力を高めたため、その後、金融機関から融資を受けることができた。また、ほっと債の協力者の中から、大口の融資に応じても良いという人達が出て来たので、彼らに大口の借り入れ(ほっとゆうし)の協力を呼びかけたところ、2000万円以上の資金調達出来た。
【質疑応答】
質問者: 1000万円の公募で2000万円の申し込みが来る場合、途中で公募額を変える事が出来るか?
多賀氏:疑似私募債は柔軟なので、1000万円の公募で2000万円集めることも可能。ただし、返済のリスクがあるので団体の体力にあった借り入れを勧める。
質問者:ほっと債は10年後に一括償還との事だが、本当に「返してください」という人はいるか?その場合のその人の出資の扱いは?
露木氏:資金繰りが厳しい時期があったが、今は結構収入がある。今は全額返済するつもりで用意しているが、
借り換え等の可能性もある。貸し手の顔がわかっているので彼らと相談しながら進めて行き易い。彼らが次回も出資してくれる可能性が高い。疑似私募債は法律的には曖昧な面も多いので、実際に行う場合は専門家と相談しながら進めるのが良い。