これまで3回にわたって、新型コロナの影響で寄付に起きている変化や寄付先の選び方について考えてきました。本稿では、コロナ時代の今、改めて寄付が担う役割とは何かを問い直していきます。
▶第1回「「選択する寄付」という新たな寄付のあり方」
▶第2回「寄付先選びの処方箋」
▶第3回「行き過ぎた寄付のリスク」
本原稿を書いている2020年6月22日時点で、世界の新型コロナウイルスによる死者数は累計で46万8,375人にも上ります。日本では緊急事態宣言が全国で解除され、一旦は第一波のピークを乗り越えたと言えます。しかし、まだまだ世界ではウイルスが猛威を振るっており、ブラジルのように感染者が急増している国もあります。今後もアジア・アフリカの最貧国での増加やロヒンギャなどの人口過密の難民キャンプでの急拡大など、懸念材料が山積しています。政府の緊急対策も第一次補正予算25.6兆円、第二次補正予算31.9兆円が決まり、民間支出を合わせた事業規模は233兆円にも上ります。
しかし、この新型コロナの影響は、特に経済面でこれからが大きな影響があり、3-4年は回復が困難だという見方もあります。今はかろうじて内部留保で耐えている企業が存続できなくなる恐れや、貯蓄では対応できなくなる家計も増えていきます。
こうした状況では、「自助(自己責任)」だけではどうしようもない状態が生まれます。そのとき、「公助(行政の役割)」はとても重要で、行政だからこそできる大規模なセーフティーネット支援という側面があります。しかし、行政のお金は将来からの借金でもあるため、すべての影響をカバーし続けることは、逆に増税などで将来の負担を増やすことを意味します。
そこで「共助(民間や個人での助け合い)」によって「自助が機能しやすくなる状態」への回復や、「公助」で抜け落ちてしまう人たちへの支援をボランティアや寄付などを活かして行うことが、「自助」と「公助」の最適性を高めることにつながり、早期の社会の回復のために必要不可欠となります。
例えば、個人レベルでの自助能力の回復という役割では、生活困窮者やシングルマザーの就労支援やその他様々な支援サービスにつないでいくNPOがいます。生活困窮者への行政の支援としてはもちろん生活保護があり、今回のような場合は給付金もあるでしょう。しかし、「自助」が効きやすくするためにはNPOなどが寄り添い、その人の状況に合わせたサポートをしていく必要があります。
さらには、こうした危機下では、予定調和で成立していた社会の資源の配分・バランス機能が壊れてしまいます。誰も気づかないところで、社会システムから漏れ落ちる「想定外」の人達がでてきます。そうすると行政の配分機能だけでは抜け落ちがでやすくなります。これは大規模な災害のときにも、行政だけでは細部まで手が回らなくなるのと同じです。
NPOなどの共助は、ボランティアや寄付という、行政資金以外の社会資源を動員します。その「しなやかで柔軟な支援」がすき間をアメーバのように埋め、現場の声なき声を社会に届けることで、社会システムをリバランス(再調整)させていくことが必要になります。
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