投稿日:2022年12月16日

信頼を力に。トラストバンクだからできる新たな地域経済へのアプローチ

鵜尾 雅隆Masataka Uo
認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 代表理事

寄付・社会的投資が進む社会の実現のために、日本ファンドレイジング協会と一緒にチャレンジするスペシャルパートナーの皆さんをご紹介します。今回ご紹介するのは、株式会社トラストバンク。
“新しい資本主義”の文脈のなか、課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現する担い手として、「ベネフィット・コーポレーション」などの議論が進んでいます。その中で、自治体への寄付であるふるさと納税のリーディングカンパニーとして発展してきたトラストバンクに、今後の立ち位置や企業として果たすべき社会的な役割について伺いました。

プロフィール

川村 憲一
株式会社トラストバンク 代表取締役
食品専門商社を経て、東証一部上場企業のコンサルティング会社にて、地方活性化に向けた中小企業の新規ビジネス(小売店や飲食店)の立ち上げからブランドマネジメント、人財開発(採用・教育)に従事。その後、大手EC企業のマネジメント職を経て、自らコンサルティング会社を設立。2016年3月よりトラストバンクに参画。2019年4月執行役員、同年10月取締役。2020年1月より現職。准認定ファンドレイザー。

元岡 悠太
株式会社トラストバンク ふるさとチョイス事業本部 寄付文化部長 兼 休眠預金活用室/ソーシャルイノベーションデザイン室長
Webマーケティング企業に勤務後、ETIC.の右腕プログラムを活用し福島県にIターンし、ふくしま連携復興センターの活動に参画。ソーシャルセクターにおける新規事業開発、福島県復興支援専門員として地域おこし協力隊等の自治体外部人材活用サポート事業の立上・運営等に従事。2017年9月よりトラストバンクに参画し、ガバメントクラウドファンディングのキュレーターや責任者を担当後、2022年4月より現職。准認定ファンドレイザー。
聞き手

鵜尾 雅隆
日本ファンドレイジング協会 代表理事
JICA、外務省、米国NPOなどを経て2008年NPO向け戦略コンサルティング企業(株)ファンドレックス創業、2009年、課題解決先進国を目指して、社会のお金の流れを変えるため、日本ファンドレイジング協会を創設し、2012年から現職。認定ファンドレイザー資格の創設、アジア最大のファンドレイジングの祭典「ファンドレイジング・日本」の開催や寄付白書・社会投資市場形成に向けたロードマップの発行、子供向けの寄付教育の全国展開など、寄付・社会的投資促進への取り組みなどを進める。

熱意と実績で培った信頼関係を基盤にした、持続可能な地域経済づくり


トラストバンクの事業内容(トラストバンク公式Webサイト事業内容ページより)

鵜尾 :ふるさと納税のリーディングカンパニーの御社では、ふるさと納税以外にも様々な事業展開をされていますね。最近の動きなどと合わせて、まずは全体像を教えてください。

川村:トラストバンクと聞くと、「ふるさと納税」をイメージされる場合が多いですが、当社のビジョンである「自立した持続可能な地域をつくる」ことを実現するために必要な手段として事業を展開しています。

地域の経済循環をどう促進させるかという課題に対し、ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」から始まりましたが、最近では、地域の外から中へお金が還流してきたものを、いかに地域内で活用していくかという点にも着目しています。とくに「地域通貨事業」は各自治体からのお問合せも大変増えており、盛り上がりを感じます。

また、経済循環ですから、入ってくるお金があれば「出ていくお金」もあります。地域で消費されるものを地域内で生み出そうという「地消地産」の考えのもと、エネルギー事業も展開を始めました。2021年に鹿児島県阿久根市でマイクログリッド事業に取り組みましたが、「トラストバンクではこんなこともできるのか!」という驚きの声と合わせて多くの反応をいただきました。

本当にさまざまな事業展開をしていますが、「ふるさとチョイス」の運営を通じて培ったノウハウや、自治体や寄付者、地域の生産者や事業者などの方々との関係性をベースとしています。 多くの自治体で「人口減少」が話題に上がりますが、単純に「モノをもらう」ふるさと納税だけでなく、実際に地域に足を運んでもらったり、移住につなげたり、常に試行錯誤を続けています。

鵜尾:自治体と個人を繋いでいくというのが御社らしいですね。社名に「トラストバンク」とあるように、まさに「信頼を貯める」という意味で素晴らしいプラットフォームだと感じます。実際に一緒に働かれる方は、どんな方が多いですか?

川村:当社は、「自立した持続可能な地域をつくる」というビジョンを目指すべき社会像としてとても大事にしています。採用の最終面接にはすべて私も出ていますが、ビジョンへのマッチ度を必ず確認しています。地域で起きていることを自分ごと化して、潜在化している地域課題に気づけるメンバーが集まってきてくれていると感じています。各自治体から評価をいただいているのも、一人ひとりが地域の課題に真剣に取り組み、同じ方向を見ていることを実感いただいたからだと思います。

鵜尾:ミッション、ビジョンとの親和性を意識されている点が、ある意味、NPOのような社会課題を解決する非営利セクターの経営や人財採用のアプローチに近いかもしれません。

川村:とはいえ営利企業ですので「論語と算盤(そろばん)」ではないですが、想いだけでなく、自分たちも持続可能な状態になり、想いと営利を両輪でまわすことを意識しています。一人ひとりが主体的に地域の課題解決に挑戦する中で、解決する力を身に着けていけるように人財育成も重視しています。

鵜尾:先日、御社が発表されたふるさと納税のアンケート調査(「ふるさと納税に関する意識調査2022」)を拝見しました。ふるさと納税経験者の約7割が地域課題に関心があり、寄付先を選ぶ際に中小事業者・生産者の応援を意識している人が77%など、寄付者の意識が変わってきていると感じています。


ふるさと納税に関する意識調査2022(トラストバンク公式Webサイトより)

川村:そうですね。最近ではお礼の品を目的とするだけでなく、いかに自治体に繋がっているかを意識する方が増えてきていると思います。お礼の品に同封されるお礼の手紙やイベントの開催など、自治体や地域事業者と寄付者の間のコミュニケーションを通じて、顔が見える関係性になってきたことが意識の変化につながったと考えています。ふるさと納税を通じて寄付の成功体験を積み重ねることができるという点も、国内の寄付文化の醸成に役立っていると思います。

地域のさらなる可能性を追求し、事業会社としてチャレンジを続ける

鵜尾:2021年12月から、ふるさと納税制度を活用して寄付者の賛同を集め、トラストバンクの売上から地域事業者の新規チャレンジ事業を支援する「Power of Choice project」で、社会課題解決の金銭的支援も始められましたね。

川村:コロナ禍の苦しい中でもチャレンジされている地域事業者を多く見てきました。ふるさと納税の広まりの立役者でもある地域事業者・生産者に対して、何かできることはないかと考えた中で、売上の一部を活用した事業支援を始めました。

ふるさとチョイスの運営を通じた地域事業者への想いを、弊社メンバーが変わらず持ち続けているだけでなく、プラットフォーマーとしても事業者支援に取り組む責務があると感じていますので、この基金スキームを継続的な取り組みにしていきます。支援させていただいた地域事業者の皆さんから、素晴らしいアウトプットや成果も生まれてきています。トラストバンクとしても、ふるさと納税の枠を飛び越えた形で、ふるさと納税を起点とした支援の成功体験を一緒に作ることができたのは大きな成果として捉えています。最新版の「Power of Choice project 2023 -地域発の新事業のサポーターになってみませんか?-」は、2022年12月1日に始まりました。


Power of Choice project 2023 -地域発の新事業のサポーターになってみませんか?-

鵜尾:Power of Choice prooject は、地域共創のプロジェクトのショーケース的な価値もあって、他地域へ連鎖していくような効果もあると思います。

共創する仲間として、地域の新たな資金循環にファンドレイザーの皆さんと一緒にチャレンジしていきたい

川村:事業化を進めるなかで、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(略称:JANPIA)の休眠預金等活用法に基づく資金分配団体の公募<通常枠>に採択いただきました。民間企業がコンソーシアム型でない単独申請で選ばれたのは初のことで、地域の方々や関係者の皆さんとこれまで築いてきた関係性や実績が評価されてのことだと、身の引き締まる想いです。


資金分配団体<通常枠>の採択に関するニュースリリース
(トラストバンク公式Webサイトより)

実は、以前にも一度申請していて、2度目のチャレンジが実りました。目の前に現れた地域のさらなる可能性に対して、民間企業であっても諦めずに取り組み、法人形態の垣根を越えられたことは、事業会社でソーシャルベンチャーをされている方々へ少しはお役に立てたのではないかと思っています。

元岡:今回、「地域特産品およびサービス開発を通じた、 地域事業者によるソーシャルビジネス形成支援」で採択いただきました。これから、一緒に取り組む地域事業者さんを募集します。対象は地域で稼働されている事業者さんですが、法人形態の縛りはないので、様々な方からのチャレンジをお待ちしています。また、この事業を一緒に運営していく「プログラムオフィサー兼ソーシャルビジネスプロデューサー」も募集しておりますので、ファンドレイザーの皆さんからご応募いただけると嬉しいです。

鵜尾:新しい資本主義の枠組みの中で、リスクとリターンに加えて、インパクトが価値軸に加わってきていると感じています。そのなかで、トラストバンクさんはまだまだ新しいチャレンジが続きそうですね。

川村:「自立した持続可能な地域をつくる」というビジョン実現に向けて、他にも事業化できるものがあれば積極的にチャレンジしていきます。VUCA時代の何が起こるかも分からない中で、共創する仲間とともに、スピード&アジリティをもって進めていき、広い視野で課題解決・価値創造の当たり前のレベルを引き上げていきたいと思っています。

鵜尾:御社は、これからも新しい社会的な役割を担っていきそうですね。記事をご覧になっている方に向けて、最後にメッセージをお願いします。

川村:私自身、准認定ファンドレイザー資格を保有し、毎年、様々な場面で呼びかけていますが、なかなかファンドレイザーの皆さんと関わりをもつことができずにきました。ふるさと納税型クラウドファンディング(ガバメントクラウドファンディング®)や、基金、休眠預金等活用の実行団体へのご応募、一緒に運営するパートナーなど、ファンドレイザーの皆さんの参画を心からお待ちしています。「トラストバンクだったら、こんなことやったらいいよ」といった提案もいただけると嬉しいです。

鵜尾:本日はありがとうございました!

株式会社トラストバンクの採用情報はこちら
https://www.trustbank.co.jp/recruit/

株式会社トラストバンクは「寄付・社会的投資が進む社会の実現」に向けて、
当会と一緒にチャレンジするスペシャルパートナーです。

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Profileこの記事を書いた人

鵜尾 雅隆 Masataka Uo

認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 代表理事

GSG 社会インパクト投資タスクフォース日本諮問委員会副委員長、全国レガシーギフト協会副理事長、非営利組織評価センター理事、JICAイノベーションアドバイザー、大学院大学至善館特任教授なども務める。JICA、外務省、NPOなどを経て2008年NPO向け戦略コンサルティング企業(株)ファンドレックス創業、2009年、課題解決先進国を目指して、社会のお金の流れを変えるため、日本ファンドレイジング協会を創設し、2012年から現職。認定ファンドレイザー資格の創設、アジア最大のファンドレイジングの祭典「ファンドレイジング日本」の開催や寄付白書・社会投資市場形成に向けたロードマップの発行、子供向けの社会貢献教育の全国展開など、寄付・社会的投資促進への取り組みなどを進める。
2004年米国ケース大学Mandel Center for Nonprofit Organizationsにて非営利組織修士取得。同年、インディアナ大学The Fundraising School修了。
著書に「寄付をしようと思ったら読む本(共著)」「ファンドレイジングが社会を変える」「NPO実践マネジメント入門(共著)」「Global Fundraising(共著)」「寄付白書(共著)」「社会投資市場形成に向けたロードマップ(共著)」「社会的インパクトとは何か(監訳)」などがある。

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