投稿日:2016年11月14日

“ひとりおかんっ子”を救わなあかん! ポジティブな発信で、さまざまな人を巻き込むファンドレイジング

今回は、ファンドレイジング日本2016でファンドレイジング大賞を受賞し、病児保育問題の解決に取り組む大阪のNPO法人ノーベル代表・高亜希さん。5年間無事故で4,000件を超える病児保育の実績をもち、大阪というひとり親家庭が全国で一番多い地域だからこそ必要な支援と、たくさんの人からの応援を得るそのコツを教えていただきました。

プロフィール

高亜希

NPO法人ノーベル代表
03年、関西学院大学卒業後、JTB・リクルートに勤務。
先輩や同僚から、子育てと仕事の両立の難しさ、病児保育問題を知る。NPO法人フローレンスで修業後、
ノーベルを立ち上げ、10年2月から関西初となる共済型病児保育事業を開始。
子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会を目指し、ひとり親向け支援や行政との協働も積極的に取り組んでいる。

聞き手

三島理恵

日本ファンドレイジング協会
大学卒業後、国際協力機構にて勤務。2009年6月より設立スタッフとして入職。学生時代は、障がい者のご家族の家族関係学を研究。
現在は、広報やボランティアマネージメント業務とともに寄付月間~Giving December~を主に担当している。

お涙ちょうだいではなく、楽しくポジティブに発信してさまざまな応援を得る

私たちが事業でなによりも大事にしているのは、現場の声です。病児保育という社会課題に関して、親御さんがどういった支援にどのようなベネフィットを感じるのか、利用者の観点を大切にしています。親御さんからは、いざという時に預けられるという安心感から、余裕をもって子どもと接することができるとか、仕事に集中することで昇給や正社員になったという声をお聞きします。サービス利用者である親御さんが、安定して働き続ける環境をいかに提供するかという点にこだわっています。

こういった共感の輪を広げるために、お涙ちょうだいではなく、“おもしろおかしくちょっと笑える”、そんなメッセージの発信に努めています。そういった観点で考えた支援者のネーミングが、「ひとりおかんっ子応援団プロジェクト」です。不条理を訴えるのではなく、楽しくポジティブに発信することで、たくさんの人の参画と応援をいただいています。

働くマインドの問題ではない、“どうしようもない状況”に衝撃をうけた自分

私はもともと民間企業勤務で、「NPO」も「病児保育」のことも知りませんでした。同僚の女性が辞めていく現実を間のあたりにし、働くマインドの問題ではなく、37.5度以上の熱を出した子どもたちは保育園で預かれないというどうしようもない状況に衝撃を受けました。そこで、病児保育で著名な団体さんで1年間社会人インターンとして学び、子どもを産んでも当たり前に働き続ける社会を目指して、大阪で病児保育問題の解決に取り組むNPOを立ち上げました。大阪は、ひとり親家庭が全国で一番多い地域です。支援者には、同じ境遇で育った方が多くいらっしゃいます。

資金をつのるだけでなく、当事者以外に社会課題をどう伝えるか

先ほどもお話しした通り、私たちは現場の声を大切にしていて、現場に答えがあると思っています。私自身、たくさんの親御さんと出会いました。そこで得た知見を、いろんな人に伝えてきましたが限界がありました。この経験がもとで製作したものが「働く!!おかん図鑑」です。社会問題は当事者だけでなく、課題を取り巻く周囲の人に知ってもらわなければなりません。そして、伝えるには、伝わるためにどうすれば良いか考えなければなりません。私たちはそういった点を伝えるプロである電通さんにアシストしていただき、楽しく伝える工夫をしています。プロの手ひとつで、印象は大きく変わります。今後は、現場の声をもとに生まれた相談支援や障害児支援の事業の拡大も視野に、企業連携や遺贈なども含めて大口寄付に挑戦していきたいと考えています。

いかに多くの資金を得るかはとても大切なことですので、寄付に対して可能性を感じてはいますが、同時に、不安定なものであるという危機感も持っています。寄付をどう集めてどのように還元するのか。社会が可能性を感じるような寄付の流れのデザインを可視化していきたいと考えています。寄付者が、サービス利用者と同じように、ベネフィットを感じてくださる。そんなデザインが明確になって確信に変わるよう、引き続き寄付について学んでいきたいと思います。

——
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