無料 投稿日:2018年12月26日

スペシャルパートナー対談、第四弾!「『モノ』に想いをのせて。寄付者の想いを届ける、物品寄付の可能性を切り拓くお宝エイドの挑戦」

スペシャルパートナー対談、最終回は「もったいない系寄付」のパイオアニア「お宝エイド」を立ち上げた三井恒雄氏(写真左)をお迎えしてお届けします。一般的に「不用品」の寄付を呼びかける物品寄付の世界で、「宝もの」を寄付してくださいというメッセージで寄付者の拡大に挑む三井氏に、当協会事務局長の鴨崎貴泰(写真右)がお話を伺います!

プロフィール

三井 恒雄

物品寄付型ファンドレイジングプログラム『お宝エイド』主宰
1974年生まれ。駒澤大学法学部・慶應義塾大学経済学部卒。2004年マーケティング会社を起業。東日本大震災後、ソーシャルビジネスに関心を持ち、リユースと社会貢献を組み合わせた『お宝エイド』を開始。2015年アメリカ「スティービーアワード:非営利組織資金調達部門」で金賞受賞。一般社団法人相続支援士協会専務理事、相続診断士、准認定ファンドレイザーとして、相続、遺贈問題にも取り組む。

聞き手

日本ファンドレイジング協会常務理事/事務局長

※スペシャルパートナーは、寄付・社会的投資が進む社会の実現のために、日本ファンドレイジング協会と一緒にチャレンジする法人パートナーです。


「社会課題に向き合う何かがしたい」、という想いがまずありました

鴨崎: まずは起業の経緯やファンドレイジングとの出会いを教えていただけますか?

三井:以前はマーケティングのコンサルタントをしていました。一番大きなきっかけは、東日本大震災でした。被災者を支援する中で、いろいろなNPOの方とお話する機会を通じて、私自身もビジネスとして社会課題に向き合う何かをしたいと考えるようになりました。

その頃、「高価買取」という看板を掲げる店舗を街中で目にすることが増えていました。それまでは、質屋など限られた人のビジネスだったのですが、その頃には、街中にそのようなお店が増え、一般の人たちに目に触れる機会が多くなってくると、不要な物を買い取ってもらうということが、一般化しつつあるのではないかと感じました。
そのような中、不要な物を買い取ってもらい自分のためのお金に換えるのではなくて、自分が応援したいNPOなどに換金額を寄付する仕組みができればいいと思ったことが「お宝エイド」のはじまりです。そこから社内に事業部を立ち上げ、古物商を取得し、幅広いモノを効率的に買取売却するリユースビジネスを学ぶところから始めました。



2014年に4団体から始まった「お宝エイド」は、2015年には、アメリカの「Stevie Awards」の非営利組織資金調達部門で金賞をいただきました。その後、社会貢献の一手段として注目され、NGOなどに興味を持っていただいたお陰で寄付先の団体数が増えていきました。自分たちが想像していた以上に、世の中から必要とされていたことが、企業としての成長にもつながりました。

「Stevie Awardsトロフィー」



鴨崎:ビジネスありきというよりも、社会貢献が最初にあって、それができるビジネスは何だろうというところから始まったわけですね。寄付先の団体数も増えてきていますが、今はどのくらいでしょう?希望すれば、どこの団体でも取り入れられるプログラムなのでしょうか?

三井:現在、この取り組みに参加している非営利組織は約140団体です。各団体の呼びかけに応えて送られた着荷数は、11月ひと月で、東京・目黒の二つのセンター合わせて1300個を超えてます。「こんなモノを送ってもいいですか?」といった電話での問い合わせも1000件を超えてます。資金調達以外にも、お宝エイドをきっかけに広く団体への関心を喚起し、知恵や様々な力を集めるきっかけにしたいと、今も毎月多くの団体様からお問い合わせをいただいています。

お宝エイドの仲間に加わっていただくには、法人格を持っていることや活動の理念に共感していただけること、適切な活動が行われていることが参加の要件となります。昨年からファンドレイザー資格保有者のサポーターがいる団体の優遇制度をはじめたことから、この制度を使ってお申込みをいただく団体が多くなりました。また、それ以外にも、非営利組織評価センターが評価した団体への優遇もはじまり、こちらも非営利組織の評価の広がりとともに活用団体が増えることを期待してます。

また、私たちにとってどのような団体とお付き合いするかは非常に重要です。役割は違えども、一緒に心を合わせて、力を合わせて取り組める仲間なのか。志があることはもちろん大切ですが、それを実行していくために必要なアンテナを張り、行動を起こしているかなど、参加団体様とは、一緒に刺激し合える関係でありたいと思ってます。


「もったいない系寄付」の背景には、片付けのニーズがあります



鴨崎:「もったいない系寄付」という寄付の形態について、その現状や今後の可能性をどのように見ていらっしゃいますか?

三井:一般的であった募金が苦戦していると言われるのと対象的に、今後、物品寄付は浸透していくと思いますし、丁寧に日本に浸透させていきたいと考えています。日本では、モノの豊かさが幸福感につながった時代から、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災などを経て、必要以上にモノを持たなくてもいいのではないか、というマインドの変化が起こり始めています。さらに重要なことに、社会高齢化が加速する中で、モノを片付ける際の選択肢として、それを自分の利益のために売るというだけでなく、誰かの役に立つのであれば譲る、ということが寄付パッケージの一つとなっています。

高齢になればなるほどモノがたまっていく。それをどのように片付けるかということになったときに、モノを送ることが共感する団体の役に立ち、活動を応援する団体を通じて社会を良くすることに関わっているということは、ある意味で寄付が消費と同じように、気分を高める手段ともなりうることを意味します。




届けられるのは「不用品」ではなく、気持ちのこもった「宝もの」です

三井:寄付者から届くお荷物を見ていると、3割ぐらいにちょっとした手紙が添えられています。私たちは、それを必ず支援先の団体に届けています。社会問題の解決にチャレンジしている人たちがいて、それについて呼びかけがあって、自分ができることでそれに応えようとする、そこが物品寄付の大きな可能性です。

その中でうまくいくかどうかは、きちんと自分たちの活動を伝え、共感を生むことができているかにかかっていると思います。単に気軽な寄付方法という呼びかけでは、なかなか「モノ」は集まりにくいですし、送っていただいても支援者の気持ちが伴っていないお品物は総じて価値がつきづらいと感じています。

「お宝エイド」という名前には、一人ひとりの想いのこもった「お宝」を、団体を応援する気持ちと一緒に譲ってほしいという願いが込められています。きちんと団体のことを伝えて共感してもらい、換金型の物品寄付という手法に賛同してくださった方は、大事なものを譲ってくださいます。そのようなものには価値があるものも多いのです。



鴨崎:寄付をしてくださる方は、従来の団体の支援者の方が多いのですか?

三井:今は半々です。元々お宝エイドが想定していたのは、団体との距離感が近い人でした。団体がどんな社会課題にどのように向き合ってチャレンジしているか、すでに分かっている方々に、お金やボランティアといったこれまでの支援の仕方以外の形として、こんな方法でも支援できますよといった形で呼びかけてもらうことを最初は考えていました。団体の活動にすでに共感されているので、あとは手法の提供かと。しかし、それが最近変わってきています。すでに団体の活動のことを分かっている人であれば、「モノによる寄付」という手法だけをお伝えすればいいのですが、団体のことをまだあまり知らない人であれば、支援方法以前に、団体を知ってもらうところから始めなければいけない。それによって広報のチラシなども変わってきます。

鴨崎:面白いですね。既存の支援者に働きかけると同時に、潜在層が1回目の寄付をする入り口としても機能し始めているということですね。

三井:それはあると思います。加えて、どのような会員にアプローチしているかによって寄付金額や寄付者数も変わってきます。ただ、私たちは一人当たりの単価という考え方は基本的にあまりしたくないと思っています。不要なモノであればなんでも送っていいというわけではなく、受け入れるアイテムもある程度限られるので、該当するアイテムを持っているということが参加の前提になります。それは、少なくとも団体の呼びかけに対し共感し、我々の手法に賛同し、アクションを起こしてくれた結果の一つです。例えば、300人から100万円分を集めた団体と、4~5人から100万円分を集めた団体では、私たちとしては後者のほうが作業効率はいいのかもしれません。しかし、その団体の呼びかに対して300人がアクションを起こしているということは、間違いなく大きな力となりますし、金額以上の価値があると思います。

鴨崎:ファンドレイジングの戦略を組み立てる上で、非常に重要な視点ですね。


「王道」の、もう一歩先をいく「スタンダード」をつくりたい

鴨崎:2015年に米国で賞を受賞されたときには、超高齢化社会を迎える先進国が今後増えていくなかで、非常にポテンシャルのあるビジネスとして評価されたと思います。今後、海外も含めてどのような可能性があるとお考えでしょうか?

三井:お宝エイドのモデルは、色々な国で取り組むことができます。そのお手伝いは今後行っていきたいと思っています。しかし、私たちの基本的なスタンスとして、同一の経済圏の中でモノを回していく、という考えがあります。日本で出た古物を日本の中で使ってもらうことが基本になっているのです。ビジネスを優先するのであれば、マーケットギャップを使って収益を最大化するという戦略もあるかと思います。日本の中古品を途上国に持っていったほうが高く売れるかもしれません。しかし、それでは、同時に途上国の産業が育たなくなる可能性があります。かつてのメイドインジャパン、そして今では製造元がどこであれ、日本人が使ったことに対するブランドとしてユーズドインジャパンという言葉も世界で聞くようになってきました。技術を育成している国で、中古とはいえ高品質な品物が新品より安価に大量に流入してきたら、その国の産業の成長を阻害してしまうかもしれません。基本的には、同一の経済圏のなかで価値を決めていく。グローバル化する一方で、ローカライズしていくことも重要だと思っています。それは現代の経済に逆行しているようで、どこの国でもできる取り組みであるという意味で、大きな可能性を秘めていると思います。

鴨崎:面白いですね。経済圏を独立したものとして捉えていく、というのは独特の哲学だと思います。



三井:おそらく、「あまのじゃく」なのだと思います。今のスタンダードに乗って考えるのであれば、グローバル展開は王道的な考え方だと思います。しかし逆に、そのようなトレンドがあるからこそ、そのもう一歩先にスタンダードになるものを創りたい、と考えています。すると、今のスタンダードを追うよりも、違う考え方が必要になってくるのです。

鴨崎:物品寄付を含むファンドレイジング全体を見て、今後注目している動きはありますか?

三井:昨年、サンフランシスコで開催された世界最大のファンドレイジングカンファレンス(AFP)に参加しました。また、バンコクで開催されたアジア圏初のファンドレイジングカンファレンス(IFC-ASIA)にも参加させていただきました。日本ファンドレイジング協会の鵜尾代表をはじめ、日本からの多くの参加者と行動を共にしました。海外のファンドレイザーと交流を持つことや、世界のトレンドなどの知見を得ることも貴重でしたが、日本から行ったメンバーと交流を深められたのは、とても貴重な時間だったと思います。普段交流を持つことが少ないメンバーとの出会いも刺激的でしたが、普段から交流のあるメンバーでも景色を変えて行動を共にすると様々な話が出てきました。注目している動きは個別にありますが、それよりもファンドレイザー一人ひとりが現場から離れる機会も大切だと思います。「書を捨て、街に出よ」と言います。毎日が大変で忙しい状況だとは思いますが、少し無理をしてでも機会を作り、非日常からファンドレイジングを見つめてみることが重要です。海外までいかなくても、日本の「ファンドレイジング・日本」も、参加者の方々にとってそのような場になれたら嬉しいですね。私自身、「顔合わせ、心合わせ、力合わせ」をポリシーにしていますので、様々なバックグランドや才能を持つファンドレイザーの方々と、一人でも多く、まず顔を合わせたいと強く思うようになりました。お声がけいただければ全国どこへでも、フットワーク軽く出向きたいと思っています!

鴨崎:ソーシャルセクターとビジネスセクターの垣根をなくし、もっと大きな社会の変革を起こしていくために、今後のご自身の役割について、どのように考えていらっしゃいますか?

三井:私自身、大学を卒業後、広告会社でマーケティングを学び、独立起業し創業15年目、ソーシャルビジネスとしてお宝エイドをスタートして4年目という今があるので、企業セクターと非営利組織のコミュニティとの懸け橋的な役割を担っていきたいと思います。ソーシャルセクターと一緒に社会を良い方向に進めるための取り組みを考えていけるような、色々なプレイヤーに興味関心を持ってもらい、様々なバックグランドや才能をもった人たちが自分の強みを出し合いながら関わっていけたら、そのほうが社会が幸せになるような気がします。

企業セクターにいたために様々な経営者とのつながりも多いので、両方の橋渡し役をうまくできればと思います。そして、様々なプレーヤーがそれぞれの課題に各々のアプローチでチャレンジし合い、「その手があったか!」「その視点とアクション、スキームともに素敵!」というような、いい意味で嫉妬し合える仲間が増えてくれたら嬉しいです。まずは、半径5メートル以内の身近な人たちに、半歩、こちらに足を踏み出しませんかという活動を行いたいと思います。そうやって、仲間が増えることが一番楽しいところかもしれません。


ソーシャルセクターの入口となるような存在に

鴨崎:最後に、日本ファンドレイジング協会の今後の10年に期待することをお聞かせください。

三井:他のセクターの人がソーシャルセクターに興味を持ったときに、最初に接点を持ちやすいのは、間違いなく日本ファンドレイジング協会だと思います。そうやって興味を持ってドアを開けてくれた人たちを歓待してほしいと思います。

私自身も、2014年に、FRJのイベントに参加したことがきっかけでした。当時は、このセクターのことも、どういう人たちがいるのかもよく分かりませんでしたが、このイベント中だけでも、多くの方と接点を持つことができました。

ビジネスセクターに属して、何かをしたいときに、NPOの人たちと接点がないと、NPOのことがまったく分からないわけです。せっかく興味を持った人が、よく分からないからといって、何もできずに出口に向かうのは、もったいない。新しく扉を開いてくれた人に対して、NPOのコミュニティーの中でその人が役に立てるようなところにつなぐ、土壌を作ってあげるような存在になっていただけるといいのではないかと思います。



同一性が高ければ効率的です。似たような人がいるのでコミュニケーションコストもかからないし、阿吽の呼吸も通じます。しかし、あえて非効率になるように意識的に会を運営していくほうが今の時代に合っていると思います。

鴨崎:多様性を持たせるというのは、確かに大切な視点ですね。今後も、私たち日本ファンドレイジング協会とともに、社会全体を盛り上げていってください。今日は貴重なお話をありがとうございました!

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