投稿日:2015年3月7日

募金箱でムーブメント、というイノベーション

連載
鵜尾 雅隆Masataka Uo
認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 代表理事

 

ファンドレイジングにとって、新しいツールや仕組みによるイノベーションは常に必要不可欠です。世界でも次々と新しい発想や新しいメカニズムでのファンドレイジングが誕生していますが、この連載では、そうした世界、そして日本のイノベーションの最先端を解説することを目的としています。是非、この連載にヒントを得て、あなた自身の手によるイノベーションを仕掛けてください。

 

ファンドレイジングの殿堂にも登録された韓国の「募金箱」

お隣韓国で、世界的にも注目された、ファンドレイジングキャンペーンは、意外にも、「募金箱」。あるいみ、オーソドックスすぎて、「え、募金箱がイノベーション?」と思われる方もいるかもしれませんが、これがまた、興味深いんです。

この10年間の韓国のファンドレイジングをけん引してきたともいえるのが、Beautiful Foundation(美しい財団)。魅力的なキャンペーン設計や企業を中心とした支援の輪を広げることに成功したこともあり、一躍、世界的に有名な財団となりました。創設者の一人は、今の韓国ソウル市市長でもある朴 元淳(パク・ウォンスン)氏。彼はThe Hope Institute(希望製作所)の創設者でもあり、韓国のソーシャルセクターを代表するリーダーで、そのあと政界に転身し、前回の大統領選のときには大統領候補として最後まで名前があがっていました。

その「美しい財団」が進めたキャンペーンが、レゴのような募金箱を活用したキャンペーンです。これは、みていただきますと、カラフルな色で10センチ四方くらいの立方体の募金箱です。プラスチック製で、軽いんですが、なんといってもその上部に、レゴと同じく、重ねて組み立てられるようになっているということろ。

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この「レゴ型募金箱」が韓国で大ブレイクしたんです。
ブレイクしたのには理由があります。
第一に、自分の「マイ募金箱」を好きな色から選んで、自宅でコツコツ貯金箱のように寄付を貯められるという活用がしやすいこと。もちろん、公共スペースや職場の食堂に置いたって構わないのですが、いろんな色があることと、サイズが丁度いいので、「マイ募金箱」的な感覚になりやすい。
第二に、これが重要ですが、みんなが集めた「募金箱」をいろんな形に組み合わせて集められること。写真を見ていただいたら分かる通り、みんなの募金箱でハートをつくったり、ツリーに見立ててみたりと、いろんな形が出来上がっているのが分かります。

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これが、学校では子どもたちが各自募金箱を家に持ち帰って、また持ち寄ってひとつのオブジェを創ったり、職場で各部署で募金箱をまとめて、ひとつの形にしたりといったことがムーブメントで広がりました。

 

ある職員のアイデアからはじまった

私が、このレゴ型募金箱を知ったのは、オランダで開催された国際ファンドレイジング大会(International Fundraising Congress)の中のあるセッションで、「韓国のこのファンドレイジングのアイデア、面白いね~」と事例紹介されていたのを聞いたときでした。既に「ファンドレイジングの殿堂」といわれるsofii.orgにも掲載され、世界的にも評価されたファンドレイジングキャンペーンとなっていました。

隣国韓国のファンドレイジングの成功事例が世界で評価されるのは嬉しいことでしたし、興味もあったので、後日「美しい財団」を訪問する機会があったときに、「どうやってこのアイデアを思いつたのか?」という質問を事務局長にしたんです。「美しい財団」は企業支援者が多いこともあって、パンフレットなどのデザインなどのクリエイティブもいつも素敵な団体なので、きっと韓国版の電通のような広告代理店とか、トップデザイナーがプロボノでアドバイスしたとか、なんだかそんな背景があるのかなとも思っていました。そうしたら、「ああ、うちの財団のシステム担当の男の子がいてね、彼がこんなのしたら面白いんじゃない?って会議でいったのがきっかけだったの。」といういうんです。「1階にいるわよ、会っていく?」と聞かれたので、「是非会いたい」といって、1階の、日本でいう「総務部」の部署に伺うと・・・・書類が山と積まれた少し暗い雑然としたオフィスの端っこに、たくさんのスタッフの中に、その彼がいました。どっからどうみても、普通のシステムとかパソコン好きな感じで、なんだろう、失礼を承知でいえば、日本でいえば秋葉でAKBのおっかけやってそうな感じ。
「すごいね、あれ、思いついたんだ。素晴らしいキャンペーンで、世界の大会で評価されていたよ。」と伝えると、すごくはにかんだ感じで、「嬉しいです。」って答えてくれました。何故、あの企画を思いついたのかを聞くと、「なんだか、みんなで募金箱組み立てたら、面白いんじゃないかって、ただ、それだけだったんです」っていうんです。

ここに、ファンドレイジングのイノベーションのひとつの本質があると思いました。
「みんなが楽しいと感じる」ということ考える。寄付ってそのままだとちょっとマジメすぎる。だから、少し、「遊び」を入れる。そこには、すごいクリエイティブのセンスも、デザイン力も最初は必要ない。ちょっとしたアイデアを拾い上げる風土を持つかどうかなんだと感じました。

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Profileこの記事を書いた人

鵜尾 雅隆 Masataka Uo

認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 代表理事

G8 社会インパクト投資タスクフォース日本諮問委員会副委員長、社会的投資促進フォーラムメンバー、日本ボランティアコーディネーター協会副代表理事、(株)ファンドレックス代表取締役なども務める。JICA、外務省、米国NPOなどを経て2008年NPO向け戦略コンサルティング企業(株)ファンドレックス創業、2009年、寄付10兆円時代の実現をめざし、日本ファンドレイジング協会を創設し、2012年から現職。認定ファンドレイザー資格の創設、アジア最大のファンドレイジングの祭典「ファンドレイジング日本」の開催や寄付白書・社会投資市場形成に向けたロードマップの発行、子供向けの寄付教育の全国展開など、寄付・社会的投資促進への取り組みなどを進める。2004年米国ケース大学Mandel Center for Nonprofit Organizationsにて非営利組織管理修士取得。同年、インディアナ大学The Fundraising School修了。
著書に「ファンドレイジングが社会を変える」「NPO実践マネジメント入門(共著)」「Global Fundraising(共著)」「寄付白書(共著)」「社会投資市場形成に向けたロードマップ(共著)」などがある。

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