”newdea”(日本総代理店:(株)ファンドレックス)は、NPO、企業、財団、行政などすべての「社会を良くしたい」と考える組織のために創られたプラットフォーム。「社会に生まれた変化」や「変化を生み出すプロセス」を簡単に「見える化」させることができ、現在130か国以上の現場で活用されています。
この”newdea”の創設者であるStremler氏にお話をうかがいました。
ビジョンを共有できるパートナーとともに
私がこの“newdea”を日本でリリースしようと思ったのは、ビジョンを共有できるパートナー企業と日本で出会ったことが大きいですね。
私は、単に、このサービスを日本で展開しようとしているのではありません。より良いものを提供するために、現地のパートナーが、その現場で耳となり目となってくれることで、サービス自体もより良くなると考えています。さらには、同じビジョンを持った企業が、その地域でさらに同じビジョンを持った組織や人とつながることで、より一層広がりを持ちます。そういった波及効果を日本でも期待して、今回のリリースにいたりました。
失敗から、学んでいく
実は、このプラットフォームを提供し始めた頃は、失敗もありました。「このサービスを売ろう」「マーケットを作ろう」として、現地の文化や習慣を理解しないままで、うまくいかなかったのです。その経験を得て、現地のニーズを的確に理解する必要があることにきづきました。そのためには、現地で同じビジョンを持つ組織とパートナーを組むことだ、という結論に至ったのです。そういった組織とパートナーシップを組むことで、ニーズを共有し合ってお互いに成長することができ、共有のビジョンの実現に向けて加速させることができるようになることを、今までの経験から学んでいます。
日本のNPOの意識を変えることにつながっていく
このプラットフォームでデータを共有し、情報として伝えていくことによって、ステークホルダーとの理解が深まり、コラボレーションが進み、コミュニケーションが加速していくと考えています。
例えば、このプラットフォームでは、プロジェクトの進捗状況もリアルタイムで共有できるので、それを受け取ったスタッフがステークホルダーに対して現場の状況をリアルタイムに伝えるというコミュニケーション方法が取れるようになります。
プロジェクトのプロセスが見える化することによって、一年に一度「報告書」が送られてくるだけの関係性に変化が起こり、団体そのものにより愛着がわき、信頼関係を育むことにつながっていきます。極端なことを言えば、信頼関係が構築できると、少しぐらいの失敗では、その組織とステークホルダーとの関係性は変わりません。一緒に課題に取り組む仲間になれるのです。
そうなれば、プロジェクト実施のプロセスでうまくいかないときに、外部からの提案やアドバイスを受け、状況を改善することや、万が一、成果をあげられなかったときに、原因を分析して、次のチャレンジでその経験を活かしていくことが可能になります。
これこそ、本気で社会を変えようとしているソーシャルセクターに重要なことだと考えます。
私は、だからこそ、”newdea”は、日本のソーシャルセクターの意識を変えることにつなげるプラットフォームになり得ると可能性を感じています。
コラボレーションツールも開発して、課題解決するスピードを上げていく
大手衣料品メーカーと、グローバルNGOの面白いコラボレーションがあったので、それをご紹介しましょう。
まず大手衣料品メーカーは、工場で働くスタッフの勤務意欲や品質管理に課題があることを感じており、スタッフに聞き取り調査を行いました。そこでわかったのは、女性スタッフが抱える課題です。女性は、家で子どもや畑の世話などに従事しなくてはならず、とても忙しい。そのため、工場での勤務に集中することが難しいというのです。そこで、その地域で同様の課題解決のために活動しているグローバルNGOとコラボレーションし、スタッフが抱える課題の解決に取り組みました。
データを集め、情報を共有し、それをプロジェクトに活かしていったのです。そうすると、あっという間に勤務意欲や品質管理を向上させることができ、さらには、その工場で働いている他社のスタッフにも好影響を与えたという実例があります。
一例にしかすぎませんがこの例からもわかるように、コラボレーションすることで社会課題の解決を加速させ、波及効果を生み出すことができるのです。今後は、同じ目的で活動しているNPO同士が情報を共有し、シェアできるツールを開発することによって、さらに加速度をあげて、課題解決が可能になるのではないかと思っています。今、そういったツールを開発している段階です。
また、よりよいプラットフォームを提供できるように日々開発を進めるうえで、「団体の状況(質)」も考慮しています。
例えば助成団体から助成金を得たいという理由から、このプラットフォームを使おうとする団体、つまり、目的が「社会に変化をもたらすこと」ではない団体は、小さいことばかりに気を取られてうまく成果を出せません。もちろんこのプラットフォームを活用することも難しい状況です。
逆に、ロジックモデルをつくり、本気で社会に変化をもたらそうとしている団体は、newdeaを活用することでより成長しています。
当初は、ある程度の成果を生み出せる団体に向けてこのプラットフォームを提供していましたが、現在は、成長できる団体を増やしていこうと、初期段階の団体のニーズに合わせた、より使いやすくシンプルなバージョンの製品も開発しています。
単にデータを集めるのではなく、情報として共有し、知識として活用してほしい
今後はさらにデータを可視化していきたいですね。ただ可視化するだけでなく、シェアし、このプラットフォーム上でデータをさらに加工することで、知的財産として活用できるようにしていきたいです。
今までの経験でこんなことがありました。
デンバーには、治安の悪い地区がありました。ある学校では、4割の生徒が退学し、その6割が刑務所に入ってしまうような状況だったわけです。そういった状況を改善しようと、近隣には、「放課後プログラム」を提供しているNPOもありましたが、一向に状況は改善されませんでした。
そこでnewdeaを導入しプロジェクト管理を行う中で見えてきた情報がありました。
そもそも、学校からその放課後プログラムを提供している団体までは7ブロック離れており、そこに行く間にギャングがいたのです。
助成金を投入し続けても改善しなかったのには理由があったのです。
その後、学校内で改良した「放課後プログラム」を提供できるようになると、その状況は劇的に改善したということがありました。
それはまさに、データを可視化し、情報として得ることで、見えてくるものがあり、必要なリソースもわかりやすく、最適な状況を作り出すことができるという実例です。
単に、資金調達が上手な団体ではなく、成果を出せる団体を増やしたい
10年後は、数十億人の職業につながるようなデータが集約されるプラットフォームにしたいですね。例えば政府が行う事業やサービスも、こういったプラットフォームでプロジェクトや社会的インパクトが可視化されることで、より良い公共サービスをより少ない資金で、提供できるようになると考えています。
将来的には、40%近いNPOがなくなり、社会的インパクトを出せるNPOのみが活動を続けているのではないでしょうか。
だれが一番資金調達に長けているかではなく、コラボレーションをしていかに社会的インパクトを出すかという方向に意識が変化していくと感じています。
社会課題の解決を加速させるために
最後に、私の夢についてお話すると、様々な理由から社会課題がありますが、貧困層の人々がその経済状況からひとつステップアップできるだけで状況は変わってくると考えています。
これまで説明してきたように、プロジェクトの状況や社会的インパクトを可視化することで、必要なリソースが明確になり、企業も参入しやすくなります。そこから仕事を誘発できれば、貧困層への就業にもつながり、貧困から脱することができるようになり、様々な社会課題の解決につながります。その実現が、私の夢です。
newdea Japan fundrex.co.jp/newdea
newdea Japan 発表イベントレポート fundrex.co.jp/1844/
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