本記事は、Stanford Social Innovation Reviewで2010年にリリースされた Alan Tuck, Don Howard & William FosterのOutturn the Recession「https://ssir.org/articles/entry/outrun_the_recession#」を参照しています。過去30年の中で最悪だと言われた米国の2007~2008年の金融危機において、長期的に作用するその影響において多くのNPOが助成の打ち切りや減額を経験した反面、様々な方法をとって生き延びている団体が、実際どんなことを行ったかの7つの特徴を基軸に、現在的な視点を加えながら、「今自分たちは何をすべきか」を、全3部作(前編・中編・後編)でお届けします。
記事では、「不況下においては、非営利組織においても継続雇用が難しくなったりするが、短期的な思考に基づいて解雇するのは間違いで、長期的に組織の健全運営をしていくために、誰が貢献できるかを考えるべきという考え方がある」ことを示唆している。そしてとある知的障害を持つ人々へサービスを提供していた米国のNPOが、減収に伴い、どうしても雇用継続が難しくなったスタッフがいたが、組織において価値を生み出してるメンバーを解雇する前に、その団体は2つの分析を行った。その1つは、どのポジションをなくすべきかということと、2つ目は維持していくべきときに高いパフォーマンスを上げている人を明確にしたということだった。そのときに、高いパフォーマンスを上げていても、ポジションがカットされてしまう状況にあるスタッフに、別の役割を提供して、そのスタッフのスキルやエネルギーを維持することに成功した、ということを紹介していた。
これに関しても、どの程度状況が切迫しているかいよって、組織が下さなければいけない判断は異なる。しかし、近年のワークスタイルの多様化や、コロナ禍はある種、多様な場所や方法での「就労の形」を余儀なくした。ゆえに、組織内のコミュニケーションスタイルや、当たり前であった「習慣」的なものも、見直しのタイミングに来ていると言っていい。そのときに、「過去の慣例をどうオンライン上で擬似施行できるか」という、過去の延長線上で考えることも出来るが、「そもそもそのアクションやプロセスは何のためであったのか」というところに立ち返った時に、その物自体の方法を再考したり、そこに関わる人の関わり方やコミュニケーションの方法が変わることで、その人のポテンシャル等を引き出したり、別の機会を設けることも出来るかもしれない。または、適応できなければその逆もしかりといえるかもしれない。組織として「適応性」を高めつつ、従来のものさしでの判断については、問を投げかけて見る機会に来ているかもしれない。
不況下のファンドレイジングでは、「その団体をとてもよく知っている人たちが、大変な状況下でもその団体を継続的に支援してくれる人たちである。寄付者が声を掛けてくることを待ったり、新しいリソースをやみくもに探すよりも、長期支援者や、より団体を支援してくれる人たちにまずリーチし、声を訊くことが重要」と記事は語る。米国のファンドレイジング協会(AFP)が先日公開したことにも同様のことが語られており、そちらでは併せて、「寄付者はこう考えているだろうという推測(assumption)で行動せず、まず訊く(聴く)ことから始めるべき」としている。
関係性を深めて、ドナーピラミッドを上げていく、その中には対面も効果的だというセオリーに従ってきたファンドレイザーの前には今大きな壁が立ちはだかっているかもしれない。なぜなら対面でのコミュニケーションの機会が制限されていたり、レター等のお願いについても、オフィスに行くことが制限されることで難しくなっている人もいるかもしれないからだ。しかし、コミュニケーションがオンラインで行われる可能性が、コロナ禍の産物としても残っていくであろうことを考えた場合のコミュニケーションの設計や、コストはかかっても、誰にどのような形で優先的にアプローチすべきなのかは、組織として一考に値すると思われる。
また、ミレニアル世代に関しては、彼ら自身が相対的に過去の同世代よりも経済的に不安定であり、かつオンラインに慣れており、当事者性を伴う様々なアクティビズムに寛容であるということを考えた場合に、仮に多くの団体のドナーリストに名を連ねていたとしても、別の協力を得られる可能性等についても、考えてみることができるかもしれない。
最後に、記事では、「資金提供者(寄付者)をパートナーと考えるとき、ぐらつく組織基盤を強化するためにNPOは寄付のタイミングや目的などの戦略を変える必要もあるかもしれない。」としている。寄付の大部分が、事業の目標を達成するための寄付に位置づけられるが、事業で成果を安定的かつ継続的に出していくためには、日々の組織の管理費などの財源の安定が不可欠である。これは特に資金提供をする財団等にも考慮頂きたいことではあるが、管理費や人件費を制限する助成プログラムは未だに多い。しかし、米国の有名な5団体が管理費支援を率先して行うことを昨年度認めたように、受益者の生活に成果と変化を生み出す人と組織にコミットした助成を行うべきという視点も、是非大事にしてもらいたいと思う。
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