鵜尾:NPO法人トイボックスさんには、当会が主催している「ファンドレイジング・スクール」第4期でのリアルケース・スタディの対象団体として昨年参加をしていただき、そのご縁でスクール生が終了後もチームでファンドレイジングの伴走支援を有償で実践させていただきました。まずはその感想からお聞かせいただけますか。
白井:目から鱗、でした。今まではファンドレイジングは友だちをなくすイメージしかなかったんです。寄付を依頼するとあの人ともう会いたくないって思われてしまうようなイメージだったんです。でも、今回ファンドレイジング・スクールでスクール生の皆さん関わっていただいて、「あ、全然違った!」って思いました。子どもたちを愛してくれる人たちからの寄付を堂々と募集していいし、違うことにエネルギー使いたいですっていう人はそれはそれでいい、と思うようになりました。リアルケース・スタディでは、スクール生の皆さんがトイボックスのファンドレイジング戦略を発表してくださったのですが、会ったこともない子どもたちを本当に大切に考えてくれているというのが心に響いてきて、お聞きしていて涙が出てきました。今も話しているだけで思い出して涙がでてくるのですが、ほんとに嬉しい。今まではスタッフたちだけで必死だったのが、みんなで子どもたちを守ってくれる、というのが分かってすごく嬉しかったですね。
これから何をやりたいかと考えたとき、やはりそれは子どもたちのことなんですよね。子どもたちにできるだけいい社会を残したい。貧困・差別・戦争が無い世の中を創りたい。そのためにどんなお金を集める手段があるのかを考えるようになりました。
鵜尾:今までのステージと変わってきているイメージでしょうか?
白井:そんな感じですね。今までずっとやり続けてきたことを、次は、どうやって社会に広げていくか、と考えています。その時に、ファンドレイジング・スクール生と出会い、実行して、社会の反応を体験することで、出来るかもと自信を得ました。
鵜尾:白井さんは新公連(NPO法人新公益連盟)の代表理事に就任されました。そこでも変化はありましたか?
白井:ずっと現場で子どもたちを支援してきました。その子どもたちが成長し、なかには、トイボックスの職員になっていたりします。そうやって、続けてきたことでようやく見えてきたものもあります。休眠預金専門委員にしても、就任当初は何もわかっていなかったけれど、委員会に出席し続けていることで、動きや課題もわかってくるようになります。新公連も同じです。役割を担うことで、自然に視座が上がってくる。最初はわからなくても、必死にやり続けていると知らない間に色々な世界が見えてくるようになる。
鵜尾:続けることで、見えてくるものがある。
白井:15年前、不登校の子どもたちの支援をすることは、15年も20年も早いって言われていました。そんな中、必死で引きこもりのお子さんがいらっしゃる家に通ってなんとか信頼関係作ってやっと子どもが外に出られるようになって、トイボックスのスマイルファクトリーに通えるようになったと思ったら、学校の先生から「〇〇さんが残念ながらスマイルファクトリーにお世話になっています」というようなことを言われて。早く学校に取り返したいと、私たちが責められている雰囲気でした。そういう時代から始まって、不登校の子どもは今や16万人います。国だけで対処できる問題ではなく、行政との関係も変わってきました。この団体が、うちの市から撤退されたらどうしよう、ぐらいの感じになっています。
鵜尾:一番大変なときに、大事にしてきたことは何ですか?
白井:大事にしてきたのは、断らないことでしょうか。いや、断れないんです。困っている子どもたちがいて、こういう場所が必要なときに、お金がないから、できないのではなく、何とかしないといけない。その課題に、本当に向き合って、「助けたい、支えたい」と思ったときに、そのための資金が必要であり、ファンドレイジングが必要です。
それでも、今までは怖くてできなかったんですよね。でも、色んな人達が関わってくれるうえで、指針を示し、もっと大きな輪の中で守ることができるんじゃないかなと今は思っています。家庭と自分たちだけで守ってるところから、もっと、コミュニティ全体の中で育てていくことを考えられるようになりました。
(第2回に続く)
(参照)
NPO法人トイボックス:https://www.npotoybox.jp/toybox/
ファンドレイジング・スクール:https://jfra.jp/school
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