投稿日:2019年11月8日

【シリーズ】ビジョン・パートナーに聞く「思い描いている未来」第1弾:公益財団法人さわやか福祉財団会長堀田力氏 vol.2

10周年を迎えた日本ファンドレイジング協会の「ビジョン・パートナー」の皆さんに思い描いている未来についてお聞きする本シリーズ。公益財団法人さわやか福祉財団 会長 堀田力氏のお話の第2回目です。

プロフィール

公益財団法人さわやか福祉財団 会長 堀田力

現、公益財団法人さわやか福祉財団会長・弁護士。高齢社会NGO連携協議会(高連協)代表、民間法制・税制調査会座長、認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議議長、日本プロサッカーリーグ裁定委員会委員長ほか。その他、東京の地域ケアを推進する会議委員長、社会保障改革に関する集中検討会議委員、社会保障審議会委員、教育課程審議会委員、医道審議会委員、中央社会福祉審議会委員、国民生活審議会委員、年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議委員、神奈川県ボランタリー活動推進基金審査会会長、高齢者介護研究会座長、政府税制調査会委員、東京都社会福祉協議会会長、日本ファンドレイジング協会代表理事ほかを歴任。

聞き手

日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾 雅隆

JICA、外務省、米国NPOなどを経て2008年NPO向け戦略コンサルティング企業(株)ファンドレックス創業、2009年、寄付・社会的投資が進む社会の実現をめざし、日本ファンドレイジング協会を創設し、2012年から現職。認定ファンドレイザー資格の創設、アジア最大のファンドレイジングの祭典「ファンドレイジング・日本」の開催や寄付白書・社会投資市場形成に向けたロードマップの発行、子供向けの寄付教育の全国展開など、寄付・社会的投資促進への取り組みなどを進める。

高齢化社会でこそ求められる共助社会

鵜尾:堀田先生はさわやか福祉財団を立ち上げられてからずっと歩みを積み重ねてこられました。行政も考えが変わってきて、それをうまく社会の中で自発的に生きるように転換するために財団が主催で開催した9月の大阪での「いきがい・助け合いサミット」でした。それも成功された今、ここから先の5年、10年のスパンのなかで、さわやか福祉財団や、堀田先生が見ておられるこれからの重要なチャレンジというのはどういったことなのでしょうか。

堀田:それはやっぱり、この失われている助け合い、共助を復活していくことです。子ども、障がい者などを助けると同時に、今、圧倒的に増えている高齢者に、最後までその方らしい生き方をしていただくには共助なしに考えられません。公助ではやれっこない。人口構造を考えますと、税金や保険料を納める若年層や中年層はどんどん減っているわけですから、介護保険制度で人を雇って支援を必要とするすべての生活を支えるなんてことはもうありえないのです。あとは自己責任を果たせない人ということで切り捨てるか、仲間たちで支えるか、それしか選択肢がない。家族という選択肢も、少子化のためありえなくなっています。自分たちをみんなで支えるしかない。日本の初めての歴史的体験である高齢社会において、各人の幸せをもたらすにはこの共助の復活以外にはありえないんです。そのことは地方の人ほど体で自覚しています。周りは高齢者ばかり、若い人は全部東京に出ていく、経済も財政もやっていけなくなる、どうするんだ、と。これは体でみんな感じていますので、そこで最後まで自分らしくこの地で暮らそうと思えば、個々のみんなで助け合ってやるしかないんじゃないですか、というのが地方にいくほどすっと頭に入るんですね。

鵜尾:ベースの共感があるということですね。そうだな、それはそうするしかないなという感じが、みんな腑に落ちてきているという。

堀田:今までは、助け合っていこうということまで考えがいっていなくて、地方に行くと不安ばかりでしたね。不安とあきらめですね。我々の時代で終わりなんだという、そういう暗い雰囲気が漂っています。だから講演などで話していても、最初のうちは何とかなると思っている人なんてほとんどいない。でもこういう助け合いのやり方がありますよ、といろいろ実例を話していくと、講演が終わるころには私たち頑張ってやりますって会場が盛り上がって、そのあと動いてくれますから。自分たちで勉強会を開いて動きだしますので、それを見ていると、今、地方は体で感じるところまで厳しくなっているのだな、というのをひしひしと感じます。

鵜尾:堀田先生がさわやか福祉財団を作ってきてからいろいろなところで講演されてきていると思いますが、最近、反応が変わってきていると思われますか?

堀田:前だとやや観念的だったのですが、ここまで高齢化が進んで、しかも国の財政悪化はみな知識としてわかってきていますから、もう即、今、自分の問題としてやろうという風に反応が直結してきていますね。社会がまさにそういう段階まで成熟してきているといいますか、老成してきているといいますか、そういう段階まで来ているという実感があります。ですからこれはきっと動いていくだろうと。今までの30年間はちょっと早いけどモデルをつくるか、という段階でしたが、今は特に地方へ行ったら、そこにいる人が最後まで地方で暮らせるかどうかという生活そのものに直結してきているという実感がありますね。

鵜尾:今回、大阪のサミットに出させていただいたときに、時代の転換が起きつつある中でさわやか福祉財団の積み重ねてきたもの、信頼性とか、全国のネットワークとかを強く感じました。一番感激したのは、ボランティアのスタッフです。我々が主催する「FRJ(ファンドレイジング・日本)」でも、東京の人たち中心のボランティア・スタッフが運営を担ってくれていますが、大阪でのサミットに行ったとき、「長崎でさわやか福祉財団のボランティアずっとやっています」とか、「北海道でやっています」というボランティアの人がたくさんいて、まさにさわやか運動を地域で支えてきている人たちが全国からスタッフとして集まって運営していました。あの積み重ね感がある、人のつながりでみんなで思いを託せる場があるんだなと、私は感じました。

ボランティア・スタッフが強力な活動の担い手に

堀田:みんなだいぶ年取ってきていますけど大事な仲間です。気持ちは変わらないですよ、初めて参加してくれたころから。彼らも最初は助け合いなんて、そういうのは必要なのか、などと言われていた。それでも頑張ってやってきて、時代が進み社会が老成化してきている中で自分たちは正しかったし、これからも絶対必要なんだと、全員が確信してくれています。だから、ああやって集まってきてくれて一生懸命頑張ってくれるのです。


9月に大阪で開催された 「いきがい・助け合いサミット in 大阪」の様子

鵜尾:確かにそれが表情や、情熱に表れていました。ずっとやってきたことが正しかったんだ、という。最初、地域で「何言ってんの」と言われていたかもしれないけれど、自分たちがコツコツがんばってきて、サミットの場でポスター・セッションやいろいろなセッションで「地域でこんなことやってます」と発表する場があった大阪のサミットは、今まで長いことさわやか福祉財団のネットワークで地域でかんばってこられた皆さんにとっても晴れの場であったということですね。

堀田:そこは信頼関係がしっかりできていると思いますので、頑張ってくれたと思いますね。まったくのボランティアですけどね(笑)。

最終回に続く
インタビュー第1回はこちら

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