投稿日:2021年8月27日

新規層拡大のために知っておきたい「広告」と「広報PR」の違いとは?その効果と目的を解説

伊東 正樹Masaki Ito
認定ファンドレイザー
広報PRコンサルタント/ソーシャル・エンライトメント代表

新規層にどう認知してもらうかー。これは企業・NPOの種類を問わず、業界を越えて共通する課題です。特に最近では、新型コロナの影響で社会環境が変化する中、生活者とのコミュニケーション方法や、ファンドレイジングの仕方を模索している団体・企業も多いのではないでしょうか?

今回は潜在層などの新規層に対して、どのように情報を届けて興味・関心を持ってもらうのか、広告と広報PRの違いを踏まえてご紹介します。

受け手の印象が全く変わる。広告と広報PRの違いとは?

まずはこちらの図をご覧ください。

右側の女性になったつもりでイメージしてみてください。
ある日突然、このように言われたらどう感じますか?

男性   :「はじめまして、Aです。僕は最高の恋人だ」
女性の友達:「Aっていう男性がいるんだけど…。彼は最高の恋人になるわ」

この図は「広告:企業・団体が伝えたいことを発信する」、「PR:第三者が企業・団体の良いところを勧めてくれる」という両社の違いを分かりやすく教えてくれます。同じ内容でも誰から情報が伝わるかによって、受け手側の印象は大きく変わるのです。このように口コミなど第三者から間接的に伝わる言葉や情報の方が、信ぴょう性や信頼性が増す心理効果は「ウィンザー効果」と呼ばれています。

日本で「PR」というと、自己PRなど”アピール、プロモーション”の意味合いで使われることが多く、実は「Public =世の中、社会 Relations=関係」の略である事はほとんど知られていません。企業・団体が「社会と関係をつくる」、つまり良好な関係を構築することがPRの目的であり、決して売り込みすることではありません。

似ているようで全く違う。具体的な方法・内容は?

では、売り込みや宣伝をせずに、PRではどのように情報を届けるのでしょうか?ポイントは、第三者の代表である報道機関=マスメディアです。広告と広報PRの違いをもう少し具体的に見ていきましょう。

同じメディアという媒体を通じているにも関わらず、全く別物であることが分かります。広報PRは、メディアの編集部・ジャーナリストに情報を提供し、無償で取材を受け、第三者の視点で発信してもらうため生活者にとっては、情報の受け入れやすさ・信頼度が大きく変わります。広告が効果を最大限発揮するのは、相手が既にその商品・サービスに興味を持っているとき。最初の図でいうと、元から男性に興味がある状態であれば、「広告」という情報発信により両方想いになれるのです。

見ず知らずの人にどのように関心を持ってもらうか?関係性を築く広報

広告と広報PRの違いが分かったところで、どのように使い分けるのがいいのでしょうか?ここに本来の課題である「新規層に対してどのように情報を届けるか」「どうすれば興味・関心を持ってもらえるのか?」の答えがあります。

結論から言えば、「広報PR→広告」の順番で発信する、又は同時に行うのが理想的です。

ニュースや報道を通じて「最近はこんなものが流行っているのだな」「こういう社会問題が起きているのだな」と関心を持ったり、それを見た周囲の人から情報や口コミが入ってくることで、自然と興味が湧いてきます。また、メディアを通じて課題や背景、ストーリーなども紹介されるため、共感を得られるケースも多いです。すると情報を受け入れやすくなり、生活者や社会との間に関係性が生まれます。

マーケティングの世界では、生活者の購買行動として様々なモデルが提唱されていますが、いずれの場合でも最初のフェーズとして、認知→興味というプロセスが重要になってきます。「前に何かの記事で読んだな」「そういえば誰かが話題にしていたな」このような事前の認知・興味段階があって初めて、広告の威力が発揮されるのです。

このような状況で近年盛り上がっているのが、主にWEB広告を使ったデジタルマーケティングです。リスティングやSNS広告など、あらかじめ生活者のターゲット絞ることで、効率的に情報を届けることが可能です。従来のマス広告とは違い、中小企業や個人事業主であっても気軽に利用できるため、NPOも利用しない手はないでしょう。しかし、それでもやはり興味関心層にしか届けられません。

関心層を新たに生み出す。広報PR×広告のかけ合わせが重要

そもそも企業や団体が事業展開する分野に興味があるのは一部の人々です。また、社会貢献に関心があるのは、日本全体から見ると残念ながら、いわゆる”意識高い層”に限られているのではないでしょうか?ターゲティングを前提とした広告だけ継続することは、短期的なファンドレイジングに繋がっても、中長期的には限られた市場を取り合うような状態になってしまう可能性もあります。

(ピラミッドの基盤と周囲の土地作りは後回しになりがち)

ファンドレイジングのピラミッドでいうと、関係者に上に登ってもらう施策だけでなく、外からその土地に来てくれる人を増やすアクション、土台自体を作る施策を行っていく必要があります。

大事なことは、広報PRと広告をかけ合わせていくこと。いきなり広告ではなく、事前に非認知・非関心層に対して広報PRで情報を届けて興味関心を持ってもらい、生活者側に情報を受け入れてもらえるような認知的・心理的下地作りをしていくことが重要です。

広告はその手法や精度から「刈り取り型」と呼ばれることがありますが、特殊な分野やニッチな活動をしている業界・NPO団体では、「種蒔き型」の広報PR活動を同時並行で進めていくことが、これからの時代のファンドレイジングに必要不可欠になって来るでしょう。

次回(「認知度向上に必須!押さえておきたいプレスリリース作成の基本ポイントとは?」)は、その広報PRの具体的な手法についてご紹介したいと思います。

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Profileこの記事を書いた人

伊東 正樹 Masaki Ito

認定ファンドレイザー
広報PRコンサルタント/ソーシャル・エンライトメント代表

1989年神奈川県生まれ。日本国内への社会貢献の普及を目指す「広報PRファンドレイザー」早稲田大学卒業後(開発経済学/平和構築)、トヨタグループの商社にて営業・PRを担当した後、ライター経験を経て、業界で唯一、メディア経験者のみで構成されたPRコンサルティングファーム、株式会社カーツメディアコミュニケーションへ入職。ふるさと納税の普及啓発、NPOの認知促進、企業のソーシャルプロダクトなどCSV事業を中心に、業界最大手の一部上場企業から中小・ベンチャー企業まで、数多くのクライアントを担当。戦略策定や報道資料作成、記者発表会の企画運営など一連の業務に携わり、累計数千件以上のメディア露出を獲得。多岐に渡るプロジェクトや広報立ち上げ支援に携わった後に独立し、ソーシャル・エンライトメントを設立。“今、世の中に必要な「想い」が、埋もれない世界を創る。”という想いの下、NPOや中小企業を中心に広報PRをサポートしています。過去にテロ・紛争を目の当たりにした経験から、紛争解決系NPOにも従事。学校やイベントでの講演活動の他、社会貢献をコンセプトにしたカフェの立ち上げ・運営・PRオフィサーとしても活動。NPO法人アクセプト・インターナショナル広報ファンドレイジング局メディア部長/オルトコーヒーロースターズCo-Producer、PR

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