投稿日:2020年6月26日

行き過ぎた寄付のリスク

鵜尾 雅隆Masataka Uo
認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 代表理事

5月下旬の新聞各紙に次のような記事が掲載されました。

「兵庫県加西市が、新型コロナウイルスの影響で困窮する世帯の支援のために設けた基金に、市の職員が受け取る特別定額給付金10万円を寄付するよう求めた。西村和平市長は、「強制ではないが、職員が率先することで市民に説明がつくと考えた」と話し、職員からの寄付を財源に含めることを前提とした予算を組んでいた。「寄付はあくまで任意で、強制ではない」と説明している。」。

寄付先は寄付者の自由意志で決める

寄付が急速に進み始めると、こうした「行き過ぎた事例」というものが生まれます。別の例として、東日本大震災のときに、学校で生徒にも呼びかけ被災者支援の寄付を募った際に、クラスの中でまだ寄付をしていない生徒の名前を先生が黒板を書き出したことが問題となったことがありました。

このような事例は、一体何が問題なのでしょうか?

世界的に、「寄付者の権利」「ファンドレイジングの原則」というものが民間で制定されています。日本でも、日本ファンドレイジング協会が中心となり、多くの人達との議論を経て、2010年に「寄付者の権利宣言」が制定されました。

5か条の宣言の中で、最初に掲げられているのが「寄付者は、寄付に際して、寄付先、寄付目的、寄付金額、寄付物品を自分の意思で決めることができます」というものです。

寄付を考えるうえで、本質的に最も重要な価値観がこの「寄付先は寄付者の自由意志で決める」という点です。どんなに良い目的であっても、環境的にそうしたほうが良いと思われても、寄付を強制するという見え方のする取り組みは問題があるということを意味します。

寄付者の権利宣言

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鵜尾 雅隆 Masataka Uo

認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 代表理事

GSG 社会インパクト投資タスクフォース日本諮問委員会副委員長、全国レガシーギフト協会副理事長、非営利組織評価センター理事、JICAイノベーションアドバイザー、大学院大学至善館特任教授なども務める。JICA、外務省、NPOなどを経て2008年NPO向け戦略コンサルティング企業(株)ファンドレックス創業、2009年、課題解決先進国を目指して、社会のお金の流れを変えるため、日本ファンドレイジング協会を創設し、2012年から現職。認定ファンドレイザー資格の創設、アジア最大のファンドレイジングの祭典「ファンドレイジング日本」の開催や寄付白書・社会投資市場形成に向けたロードマップの発行、子供向けの社会貢献教育の全国展開など、寄付・社会的投資促進への取り組みなどを進める。
2004年米国ケース大学Mandel Center for Nonprofit Organizationsにて非営利組織修士取得。同年、インディアナ大学The Fundraising School修了。
著書に「寄付をしようと思ったら読む本(共著)」「ファンドレイジングが社会を変える」「NPO実践マネジメント入門(共著)」「Global Fundraising(共著)」「寄付白書(共著)」「社会投資市場形成に向けたロードマップ(共著)」「社会的インパクトとは何か(監訳)」などがある。

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