前回、コモンズ投信株式会社・渋澤健会長に、コモンズ投信が行う社会貢献活動と、会長の考えるCSR(企業の社会的責任)・寄付と本業の投資の関係性を聞いた。
前回の記事はこちらから。
【寄付月間Giving December連載】学生チームが聞く寄付最前線 コモンズ投信編その1 http://jfra-web.sakura.ne.jp/fundraisingjournal/wp/691/
寄付月間については、こちらから。
http://giving12.jp/
続編である今回は、日本での寄付文化の遡及のために何が必要か、税制度や民族の違いに触れながら、さらに深くお話ししてもらった。
アメリカと比較して、日本で寄付が広まりづらい原因として指摘される税制。その仕組みとは?
金子:「本業である投資と社会貢献は同じもの」という会長のお考えは素敵なものですが、特に日本で共感してもらうことは難しいのではないでしょうか?日本で寄付文化を広げるためにはどうすればいいとお考えですか?
渋澤:よく日本で寄付文化が根付かないのは税制度のせい、と言われます。でも、実は日本でもけっこう税制面では優遇されているんですよ。
ただ、日本人にはあまり「税金を払っている」という意識がないのではと思います。なぜなら日本で企業に勤めていると、給料から税金が天引きされるからです。
その証拠に、一番自分が出していると感じられる消費税についての議論がとても盛り上がってるんじゃないかと思います。
例えばアメリカやイギリスは、低所得者の人は日本よりももっと税金を納めています。でも、その後還付、つまり取り戻さすことができる。教会や学校に寄付することでも、納めた税金が戻ってくるので年末はアメリカ人とかすごく熱心です。
寄付文化が根付くには、社会制度よりも、慣習や精神性の方が重要?
渋澤:税制度よりもメンタリティが問題だと思っています。
日本は寄付がお金に余裕のある人が罪滅ぼしでやるようなイメージがありますが、アメリカでは、もちろん巨額の資産を寄付する人もいますが、収入を占める寄付金額のパーセンテージとしては、低所得の人のほうが多いです。もちろん低額のものですが、幅広くみんながやるものだという認識があります。
なんといっても、アメリカは「国を創った」という建国精神が人々の中にあるのが大きな違いではないでしょうか。日本は税を払うにも、お殿様から年貢を持っていかれたね、くらいの感覚なのかなと。公(きみ)っていう言葉は元々「天皇」を意味しますよね。つまり、私益と公益を区別しています。だから、アメリカでいうpublic(パブリック:公衆、国民全体といった意味)とは実は起源も違うので根本的には違う概念だと思います。
農耕民族特有の季節感が寄付文化に影響する?
渋澤:日本は農耕民族に欠かせない水資源も豊富だし、大陸の民族ほどシビアでなくて、だからこそ、のほほんとしつつも四季に合わせて生きていける民族なんじゃないかと思います。
山にいる神様を起こすために騒ぐお祭りが顕著な例だと思います。決まった時に毎年ある、という季節感に連動した社会慣習、つまり周期性が寄付文化にも必要です。
金子:それが、まさに寄付月間ということですね!
渋澤:そうですね。毎年12月は寄付月間!と習慣づけすることが重要なのだと思います。
熱気や周りの非日常的な雰囲気だからこそ、より多くの「知らなかった」人に、知ってもらうことができる新しいことに取り組むきっかけを提供できる。
金子:とはいえ、多くの人が寄付について知り、行動することはどのようにして広げていけばよいのでしょう?
渋澤:まずは、「寄付をするという選択肢」や「社会起業家という職業」があるということを知ってもらうことが重要だと思っています。ですから、社会起業家フォーラムのような場で、「なんだ?!なにか起こりそう!」と思わせる熱気が必要です。
一方、通勤している日常の時に「街頭募金で寄付お願いします!!!」と言われても戸惑ったりしませんか?
谷口:僕も以前、まさにその経験をしました。
渋澤:でも、みんなが募金箱にお金を入れていたらみんな絶対しますよね(笑)
谷口・金子:たしかにそうですね(笑)
金子:たしかにコモンズ社会起業家フォーラムで出会った方々は、株式投資に興味があって、たまたまフォーラムに来て初めて社会起業家について知った方がいました。そういった方への仕掛けは意識しているのでしょうか?
伝えるために大切なのは、文字やロジックではなく、体感。
渋澤:何か難しい仕掛けがあるのではなく、場を提供して何かを知ってもらう、というアプローチは、個人の少額投資についてもあてはまります。みなさん知らないだけで、きっかけが必要なだけです。こういう投資先があるんだ、というのを見て・知ってもらうだけでだいぶその先の行動が変わります。
つまり、ロジック・文字じゃなくて環境・絵みたいなもので体感してもらうことが大事だと考えています。
谷口・金子:本日はありがとうございました!
(注)CSV=Creating Shared Value:ハーバード大学ビジネススクール教授のマイケル・E・ポーター氏が中心となって唱えている概念。従来CSR(企業の社会的責任)と経営戦略は別のものとしていたが、社会的意義のある活動を戦略として新たな価値創造を企業が行い、事業拡大を狙うべきであるとした。
参考:http://www.csvjapan.com/cn20/csv.html(出典:CSV Japanホームページ)
コモンズ投信で開催した寄付月間公式認定企画の当日の様子は下記にまとめています。
是非ご覧ください。
☆コモンズ「ソーシャル・アクション」白熱教室
http://park.commons30.jp/2015/12/blog-post_10.html
☆コモンズこどもトラストセミナー「寄付の教室」
http://park.commons30.jp/2015/12/blog-post_15.html
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