※「日本ファンドレイジング大賞」は、先駆的なファンドレイジングの取り組みを行ったNPOや企業を称え、その活動を広くご紹介することを目的に、2010年から実施しているものです。第11回目となる2020年は、「新型コロナウィルス支援大賞」が新設され、過去最多となる60件を上回るご応募が寄せられました。選考委員会による書類選考(予選)、および認定・准認定ファンドレイザーの有資格者によるWEB投票の本選を経て、上記の団体に各賞が贈られました。
イノウエ:新型コロナウィルス支援大賞、そして、日本ファンドレイジング大賞の受賞おめでとうございます。まずは、受賞されたお気持ちを聞かせてください。
奥田:NPOにとって、寄付は生命線として付託された活動の源泉であり、自由への担保だと思っています。寄付者にとっては、社会参加の入り口です。今回の受賞理由として、コロナ禍で仕事と住まいを失った人を支援すべく立ち上げたクラウドファンディングで1万人を超える方々から1億円以上の寄付を集めたことが評価されたわけですが、単にお金が集まったことだけが評価されたわけではなく、クラウドファンディングを通じて、抱樸を知らなかった多くの人々と繋がり、ともに未来を見る仲間が増えたことだと思っています。私自身も、これまでとは世界観が変わりました。
イノウエ:コロナ禍では誰しもが当事者となって、困難を分かち合い、その中で多くの人々が抱樸さんの活動を知って、希望の方向性として寄付を託したんだと思います。今回のクラウドファンディングでは、初めて抱樸さんに寄付した人が圧倒的に多かったと聞きました。これまでの日本で、生活困窮者支援やホームレス支援は寄付が集まりにくい分野と言われたところに新しい風穴を開けた、コロナ禍、オンライン状況下の2020年を象徴する取り組みだったと思います。
奥田:今回のクラウドファンディングは、抱樸だけでなく、全国の10団体がチームを組み、コロナによる関連死を食い止めるため支援付き住居提供を全国展開する取り組みを実行しました。実際、私たちも10,298人という寄付者の数には、感動しましたが、ひとつの団体が孤軍奮闘して取り組むという構図から抜け出し、小さな「社会」をつくって実践するという協働の形ができたのだと思っています。
イノウエ:多くの人々と協働するという点では、山田さんが率いる佐賀未来創造基金も設立当初から地域の資金の受け皿として、地域に根ざして「協働」という形に注力してきた団体です。設立からこれまでに2億円近くを集め21の分野で活動するCSO(Civil Society Organizations:市民社会組織)に累計8,500万円も助成しています。ファンドレイジング大賞だけでなく「ふるさとづくり大賞(総務大臣表彰)」や「地域再生大賞(共同通信社)」などを授賞されるなど、全国的な表彰が続いています。
山田:私たちは、災害、子どもの社会的孤立、空き家問題など、佐賀の地域課題解決のために活動している市民コミュニティ財団です。設立して7年になり、これまで地域の団体、行政、金融機関、企業、商店とも協働して活動してきました。ファンドレイジング大賞で、私たちの活動を高く評価していただいたことは、自分たちだけの力でなく、皆で取り組む「コレクティブインパクト」の形が評価されたと思っています。
イノウエ:お二人の団体共に、今回受賞によって変化したことはありましたか?
山田:地元の新聞に掲載され、色々な関係者からお祝いの言葉をいただいたことも嬉しかったですが、日々、自問自答や試行錯誤しながらも踏ん張ってくれているCSOや事務局などの仲間の励みになったことだと思います。また、これまでの大賞の多くは現場のNPOの方々が受賞してきました。それが昨年の「みんなでつくる財団おかやま」に続き、私たちのようなコミュニティ財団が受賞できたということがとても嬉しいです。というのも自分たちは表舞台に出ない縁の下と思っていますので、それがこうしてファンドレイザーの方々に評価されたことは大きな励みになりました。私自身も、投票権をもつファンドレイザーとして、受賞の重さがわかるだけに、まだ続いている新型コロナ禍での地域支援での次のチャレンジをしっかりやらないといけないと肝に銘じています。
奥田:受賞したことで、ファンドレイジングの分野の方々とのつながりが増えました。これまでは、寄付の動向もインターネットの活用方法も知りませんでしたが、初挑戦のクラウドファンディングではファンドレイザーの方々にたくさん支えてもらいました。そして、このクラウドファンディングをきっかけに、ややもすれば独り善がりに陥りがちだった抱樸の活動がこれまで以上に社会からも注目されていると感じています。多くの人々の支援にどう応えていくのか、現場で何を行っていくのかということです。
イノウエ:これまでの活動の結果を、自分たちが思う以上に、社会が価値を認めてくれています。約1,500名のファンドレイザーからの投票は、まさにその点を評価したものだったと思います。
奥田:これまで、企業からの支援は決して多くはありませんでした。ホームレスの支援は「企業イメージとそぐわない」と言われるからです。金融機関からの融資や借入でさえ最近になってやっとできるようになったのです。ホームレスや困窮者への差別とともに、支援する支援団体に対しても、社会からの排除意識があったと思います。生活困窮者にとっては、経済的困窮だけでなく社会的孤立が最大の問題です。OECDの調査では、日本の孤立率は15%を超えていてアメリカの5倍です。それが、コロナという危機感や心細さによって、生活困窮者やその支援がようやく身近に感じられるにようになったのではないかと思います。寄付や社会課題解決のもっと手前に、社会から孤立している人がいる、その認識が必要だと感じています。
後編に続く
株式会社ファンドレックスは「寄付・社会的投資が進む社会の実現」に向けて、
当会と一緒にチャレンジするスペシャルパートナーです。
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