大学卒業後、損害保険業界で事故対応や営業をしており、NPOの世界とは全く縁のない生活を送っていました。ふとしたことから日本カーシェアリング協会と関わるようになり、この事業が世に広まっていけば、高齢者の事故を減らすことが出来るのではと思い転職を決意。なかでもファンドレイジングの分野でこの団体の力になりたいと感じ、転職直前に准認定ファンドレイザーの資格を取得しました。
しかし、参画してからは災害現場での活動などに忙殺され、思うように成果が出せずに悩む日々が続いていました。当団体は東日本大震災の復興の過程で生まれた団体であり、復興財源からの助成金への依存度が高く、復興期間終了後に活動を続けていくためにもファンドレイジングで結果を出すことが急務でした。行っている事業は、これからの日本にとって確実に必要になってくるという自信があったため、どのように共感してもらい、ファンを増やしていくか、即現場で活かせる実践的な経験を積むためにはどうしたらいいかを考えていました。また、NPOの世界に入る際に、家族に経済的な不安を感じさせないということを目標にしていたこともあり、自分自身の市場価値を上げていくうえで、ファンドレイジングに関する実践的な力を身に付けたいと思ったときに、スクールはとても魅力的なものに見えました。宮城県から通い続けられるかの不安はありましたが、講師陣もファンドレイジングの第一線で活躍されている方が多く、これ以上の環境はないだろうと思い入学を決心しました。
スクールのカリキュラムで、一番印象に残っているのは後半にある「リアルケーススタディ」です。実在するNPOに対して、チームに分かれ2カ月間かけてファンドレイジング戦略を練り上げ、提案を行います。私達(4期生)のリアルケーススタディの団体は、フリースクールを運営するNPOでした。前半の期間で、ファンドレイジング戦略に関する相当の知識のインプットを終えた私は、初回のチーム打ち合わせの際、さもわかったように団体の課題をあげ、こうしたらいいのではないかという案をあれこれ出していきました。ただ、講師からのアドバイスで、はっとしました。「せっかく良い内容のプレゼンテーションをしても相手が選ばなければ、提案としては失敗です」たった半年間、勉強しただけでわかった気になっていたのです。その団体に寄り添い、ボトルネックは何かを考え抜き、心からこの戦略を実践したいと思える提案をしなければ、とスイッチが入りました。本番のプレゼンテーションでは、私達のチームの提案を聞いて、「直接会ったこともない子どもたちのことをここまで考えてくれている」と、そのNPOの代表が涙を流し、喜んでくれました。リアルケーススタディはファンドレイジングの本質を教えてくれたように思います。
スクールを卒業し、これからが本当の意味でのスタートです。スクール在籍中に作成した自団体の戦略を実行し、活動を前に進めていきます。「車の寄付」という私達しか行っていない社会貢献の仕組みを日本中に広げていき、地域の中の移動や災害時の車不足の問題の解決に貢献できればと思っています。
私は、受益者はもちろんのこと支援いただいている方、スタッフも含めて、その団体に関わることが、それぞれの幸福度の向上につながっている、ということがファンドレイジングの本質なのではないかと考えています。9カ月間を経て、改めて感じたファンドレイジングの魅力、NPOの活動の魅力を多くの人に知ってもらえるように活動していきます。
スクールは、毎回出る課題に真剣に向き合うことで、間違いなくファンドレイジングに関する実践力を身につけることができます。私にとってそれと同じくらい大きかったのは、それぞれ異なる強みをもつ個性的な同期との出会いです。入学を迷っている方がいたら、是非飛び込んでみることをオススメします。
余談ですが、スクールへは、宮城県から夜行バスで通っていました。授業後、「バスの出発時間まで待つよ」という建前で、毎回懇親会(通称アフタースクール)が。スクール生のバックグラウンドは本当に多種多様。それぞれの現場の悩みや問題意識を共有したり、激励し合ったりと、とても充実した時間だったのを今でも思い出します。
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