投稿日:2018年2月23日

童話「赤い鼻のトナカイ」の“ルドルフ”に思いを乗せた「ルドルフ基金」 ―サンタクロースが来ない子どもに「思い出」を届け、明るい未来を照らしたい。―

三島 理恵Rie Mishima
認定ファンドレイザー
CSR/NPOコンサルタント

ファンドレイジング日本2017でファンドレイジング大賞を受賞した、NPO法人チャリティーサンタは、2008年に任意団体として活動を開始。2014年にNPO法人化しています。活動開始当初は、クリスマスイブの夜にサンタクロースに扮したボランティアが、小さなお子様のいる家庭にプレゼントを届ける「サンタ活動」と、サンタ活動の際に家庭からお預かりしたチャリティー金で途上国の子どもを支援する「チャリティー活動」を行っていましたが、今は、「チャリティー活動」では主に国内の経済的に厳しい家庭の子どもたちや被災地の子どもたちにサンタクロースを届けています。
今回は、チャリティーサンタの代表・清輔(きよすけ)夏輝さんと、2015年9月からファンドレイジングを一緒に行っている株式会社シン・ファンドレイジングパートナーズの代表・河内山信一さんに、お話を伺いました。

全国に広がる輪は「主体性」と「つながり」で広がっていく
2008年に任意団体として活動をスタートし、チャリティーサンタの輪も各地へと自然と広がっていきました。一度経験した人が、地元でもやりたいとか、転勤先でもできないかと相談が増え、当初はその意欲に任せていました。ただその輪が広がってくると、課題も出てしまうこともあったのも事実です。「去年はやってみたけど、今年はもう続けない」という大人の都合では、待っている子どもにサンタクロースと会う機会をつくることができません。今では支部の立ち上げは、5人の仲間をつくり、3年間継続することなど約束をし、全体合宿で調印式もしています。全国の仲間とつなげることで、継続性などを担保するようにしています。

目指しているのは「無関心の打破」
私たちは、サンタクロースを待つすべての子どもに「サンタさんに会えた」という経験を届けるために活動をしていますが、それ以上に、大人たちの意識を変えたいと思っています。実際に多くの参加者から「プレゼントを渡した自分のほうがもらっているような気持ちになった」という声や、特に子どもと接点が少ない人からは「子どもを笑顔にできたんだということに感動した」という声も集まってきています。

「チャリティーサンタ」を届ける先が増えることがいいことなのかという問いで気づいた現実
チャリティーサンタという仕組みは、ボランティアをたくさん巻き込むスキームとして、まずは任意団体として形が出来上がっていました。サンタクロースになってくれる大人たちの52%は一度もボランティアをしたことがなく、ボランティアを定期的にしている人は20%程度という、「社会貢献」にこれまで意欲的に参加してこなかった層にも広がっていきました。当然、その広がりとともに「チャリティーサンタ」と出会う子どもたちも順調に増え、のべ2万人にまで到達しています(2018年2月現在)。
ただ、NPO法人化に伴い、事業や財源、組織のことについて考えている中で、メンターから言われたのが「サンタクロースを届ける子どもたちを増やすことがいいのか。本来、達成しなければいけないのは、何なのか」という問いでした。

私は、その時、すぐに答えが思い付きませんでしたが、これまでサンタクロースを呼んで頂いた家庭を調査したところ、届けていた家庭の世帯収入は平均よりも高いことがわかりました。また逆に、届けられていない家庭には「サンタクロースが来ない」家庭があるという仮説に辿り着きました。そこで、SNSを運営する企業の協力を頂き、SNSのひとり親家庭のコミュニティ等を通じてダイレクトメールを送り、クリスマスの生の声を拾い上げるアンケートを実施しました。
そうすると、「冬休みなどどこにも連れていっていない、ケーキを買うのがギリギリ。」、「楽しい思い出を作ってあげたい。」、「日頃子どもに我慢をさせている。特別な思い出を作ってあげたい。」などの声がたくさん寄せられ、
自分たちが届けられていない家庭が明らかに存在することに気がつきました。

サンタクロースという楽しい「思い出」を届けるために。そこで生まれたのが、寄付のプログラム「ルドルフ基金」です。子どもに届けるプレゼントの購入などの費用を、寄付によって応援するための基金です。
この「ルドルフ基金」のネーミングの由来は、童話「赤い鼻のトナカイ」の名前“ルドルフ”から名前をもらっています。ルドルフは、暗い夜道を真っ赤なお鼻で照らしてサンタクロースを届けることから、サンタクロースが来ない子どもへちゃんと届けることをイメージしています。

「サンタ白書」を発行して副次的効果もあった
「サンタクロース」をテーマにしているチャリティーサンタは、当然、子どもの夢は壊せません。そのため、団体PRはいつでもどこでもとはいかず、むしろメディア(特にテレビ・ラジオ)からの発信は22時~6時までと制限をかけています。そこで、この活動を広く知ってもらうために、メディアが別の角度から団体を取り上げる題材となるよう調査の結果をまとめた「サンタ白書」を作成しました。作成したサンタ白書をメディアに配り、それがきっかけでいい形での発信をしていただくこともできました。副次的効果は、翌年このサンタ白書で助成金が取れるようになったことです。寄付を考えている人たちにチャリティーサンタを選んでもらえるツールが出来たことがとてもいい影響でした。

今後は、企業との連携も強化していきたい
これまで、個人を中心として「サンタになる、サンタを呼ぶ、サンタを応援する」という3つの方法での参加を呼び掛けていましたが、これからは、企業等との組織連携も行っていきたいと思っています。
最後に、小さい団体という理由であきらめることなく、団体の成長に合わせてベストな方法でファドレイジングをしていくために、第三者的に団体を見てくれるファンドレイザーの存在は必要不可欠だと思っています。まだまだ成長途中の団体ですが、みなさんも一緒に、成長していきましょう。

NPO法人チャリティーサンタ
団体サイト:https://charity-santa.org/
サンタ活動サイト:http://www.charity-santa.com/

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Profileこの記事を書いた人

三島 理恵 Rie Mishima

認定ファンドレイザー
CSR/NPOコンサルタント

大学卒業後、国際協力機構に勤務。2009年6月から設立スタッフとして日本ファンドレイジング協会に入職し、事業の立ち上げ、広報全般を担うコミュニケーション・ディレクターとして従事。また、企業、NPO、行政、国際機関などと協働で行っている寄付キャンペーン「寄付月間-Giving December-」の実施にも尽力。現在は、企業やNPOの社会活動のコンサルタントとして、動物殺処分ゼロ、こども食堂、途上国の女性支援、スポーツ選手による社会貢献活動などの事業に携わっている。

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