さて、「計画」って何でしょう…国語辞典では「ある事を行うために、あらかじめ方法や順序などを考えること」とあります。ファンドレイジングについての「実施計画」を組織の年間事業計画の中に盛り込むことはいうまでもありませんが、ファンドレイジングについては、「目標額の設定」も大事な計画の一部だと思います。つまり、ファンドレイジングの計画とは、「xx円獲得するために、あらかじめ方法や順序などを考えること」だということです。
そこで、ここではその計画策定について、目標額の設定と年間計画の策定を具体的に考えてみたいと思います。
「目標額の設定」というと、途方に暮れてしまわれる方もおられるでしょう。「とらぬ狸の皮算用だ」といった戸惑いを覚える方もおられるでしょう。でも、組織を運営していくうえでは、収支計画を立てないということはあり得ませんし、その収入の中で、どれだけを「寄付(あるいは寄付&会費)」(※共感型の資金の調達ということで会費も対象にしても可)によって集めるかということを考えなくてはなりません。ファンドレイジングには、人件費、ツールの作成費、通信費などのコストがかかります。獲得する目標額を定めておかないと、ファンドレイジングにかける適切な支出の設定を見誤ることにもなります。
では、その目標額はどのように設定したらいいのでしょう。
まず、昨年度の寄付金額をみてみましょう。表1は一例ですが、寄付金額を金額帯で分けて、それに対して何件の寄付があったのかをチャートにして確認してみましょう。
註)表1の①は、50万円の企業からの寄付が2件、30万円が5件あったので、合計250万円あったという内訳です。
余談になりますが、寄付の件数と金額を比率にしてみると、面白いことに気づきます。「2割の寄付者が寄付全体の8割を寄付している」ということです。経済学では、「パレートの法則」というのがあって、経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという説ですが、このパレートの法則は、NPOへの寄付にもあてはまるといわれています。「2割の寄付者が総額の8割の金額の寄付をしている」という経験則です。よって、戦略的にファンドレイジングを行うためには、この2割の人たちへのフォローがとても大事だということになります。
およその目標総額を決めて、前のチャートに当てはめてみます。表2は、新年度は約10%の増額を目標として前のチャートを改訂したものです。20万円以上の寄付者は、実際には、50万円の企業からの寄付が2件、30万円が5件でした。この金額帯を280万円にするには、単純に考えると「30万円の企業か個人からの寄付を1件増やす」ことが必要になります。
目標チャートができたら、具体的にその金額帯の寄付者候補をリストアップしてみましょう。まずは、前の年の寄付者が継続して寄付してくれるか検討。その上で、上乗せすべき対象者について考えます。
大口寄付(表1と2の①に含まれる企業など)は、確実に継続してもらう努力をすると同時に新規の開拓のための候補を、いくつかあげないとなりません。実際には候補者は多めにあげておかないと実現性が低くなります。
また、表 1と2の④は、1万5千円の年会員だとします。すると、チャート上では10人だけ新規会員を増やせばいいということになりますが、現実では、「継続しない」会員も出てきます。会員継続率については、「放置したら3割は継続しない」とも言われています。そこで、現会員への継続依頼をするとともに、新規開拓の対象を絞らねばなりません。
そこで、Step2「既存寄付者・潜在的寄付者の分析」の中でご紹介した「支援者ピラミッド」を活用してみてください。「まだ寄付をしたり入会はしていないけど、イベントなどには参加してくれている」といった人たちは、この新規開拓の対象者となるのではないでしょうか。そういう人たちに、どういう働きかけをしたらいいか?これは、Step4でご案内した、「潜在的寄付者をマッピングした支援者ピラミッドの各カテゴリーに合わせたアプローチの方法」を参考になさってください。
目標額が定まったら、いよいよ実施計画を立てることになります。
計画策定のポイントは、
① 年度初めに実施するものを必ず盛り込むこと。
② 月ごとの目標達成額を決めること。
③ うまくいかなかった場合の修正を素早く行うこと。
表3は一例で、「なかなか思いどおりにならない」というのが現実ですが、そうした場合も、年度の初めの方に諸計画を盛り込んでおいて、目標達成のチェックを行っていけば、うまくいかない場合にも素早く計画の修正ができます。
Commentsコメント