投稿日:2017年6月28日

第5回 Step 4 コミュニケーション方法や内容の選択

徳永 洋子Yoko Tokunaga
認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 理事

Step2では、寄付集めを行う際に事前に確認しておかないといけない、「誰を対象にして寄付を募るか?」という点について考えました。既存の寄付者の分析と潜在的寄付者の見極めが済んだら、さあ、いよいよファンドレイジング!

そこで、今回は、ファンドレイジングのためのコミュニケーション方法や内容について考えてみます。

限られた資源と時間を有効に活かすためにも、ここをきちんと整理して、準備を整えてからファンドレイジングに取りかかりたいものです。

1)ツールの選択と制作

寄付を募るためには、チラシ、パンフレット、ホームページ、Eメールなどのツールが必要となります。活動と支援の必要性を伝える訴求力のあるツールを用意したいものです。こうしたツールは、その媒体としての特性を踏まえて、目的や対象に応じて使い分ける必要があります。たとえば、チラシならば、制作費用も安価で済ませることができますし、特定の場所に置いてもらえたら、多くの人に気楽に手に取ってもらえるというメリットがあります。ですから、大量に配布するイベントの告知・集客に使うのには適しているかもしれません。
ただ、団体への入会を募るというのであれば、多少コストはかかりますが、やはり、もう少し細かな情報が掲載でき、「団体の顔」となるようなパンフレット形式がいいかもしれません。その場合は、振替用紙をはさみこんだり、あるいはパンフレット自体に振替用紙を刷り込んで、切り離してすぐに使えるといった、寄付者に親切な工夫も必要でしょう。
ホームページなら、団体概要や活動についてさらに写真や動画なども交えて説明できますし、関心を持ってくれる方々には多量の情報が提供できます。また一方的な情報発信に加えて、ウェブ上からのお問い合わせやメルマガ登録等を通じて、関心を持ってくださった人たちの個人情報を入手することもできます。さらに、入会や寄付だけでなく、物販等についてもウェブから送金や購入できるような仕組みも組み込めます。

いずれにせよ、こうしたツールは受け手にとってわかりやすいものでなければいけません。自らの熱い思いを強調するあまり、独りよがりな印象を与えてしまったり、専門用語が多くて分かりづらい、あるいは漢字が多くて読みにくいといったものになってしまっては、せっかく伝えたいことが伝わらず残念です。
文字の大きさ、全体的な印象にも配慮して、少しでも多くの人の共感を得られるように努める必要があります。こうしたツールをつくってみたら、ボランティアに見てもらう、あるいは、あえて、団体についてあまりよく知らない友人や家族などに見てもらって意見を聞いてみてはどうでしょう。
また、昨今は、自身の専門性を活かしてNPOでボランティアをする「プロボノ活動」も普及してきました。広報のプロの力を借りながら、統一された団体イメージのもとで、洗練された、わかりやすく、好印象を与えるパンフレットやウェブサイトを制作しているNPOも増えています。そういった人材を募ってみるのもいいかもしれません。

2)どうやってアプローチするか?

ファンドレイジングの基本は「Ask」と「Thanks」だそうですが、その「Ask」のためのアプローチの方法は、アプローチする対象によって違ってくると思います。たとえば、大口の寄付が期待される企業に支援をお願いする場合は、理事長や理事などが直接訪問したりします。団体を代表するような立場の人が出向くことで、信頼性も増し、こちらの熱意が伝わるわけです。だからと言って、一度だけ少額の寄付をしてくれた人に再度のお願いをするのに、いちいち理事長が出向くというのは現実的ではありません。
そこで、Step2 「既存寄付者・潜在的寄付者の分析」で作成した、団体の既存、あるいは潜在的寄付者をマッピングした「支援者ピラミッド」の各カテゴリーに合わせて、それぞれの平均的な寄付額を想定しながら、支援者拡大に向けたアプローチの仕方を計画してはどうでしょう。ここに、 一例をあげてみます。

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こういった整理をしておくと、各種ツール、とりわけ、ニュースレターやチラシといった制作費と発送コストがかかるものを効果的にファンドレイジングに投入することが可能になり、無駄が省かれることにもなります。また、ファンドレイジングについての理事と事務局の役割分担も明確になり、組織一丸となったファンドレイジングになっていくことも期待できます。

3)決済方法

ファンドレイジングに際して、共感を得るための各種ツールが出来あがり、それが適切なアプローチによって届けられたとしても、寄付の方法が難しければそこで尻込みされてしまいます。寄付をしようと思った人にとって便利な決済の方法を各種用意したいものです。寄付の方法には、口座への振込みのほか、自動引き落とし、クレジットカード決済、オンライン決済などの方法があります。費用がかかるものもありますが、寄付者に「面倒くさいなあ…」と支援を尻込みされることを考えたら、少々コストをかけてもいいのではないでしょうか。

次の記事(「第6回 Step 5 ファンドレイジング計画の作成」)はこちら

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https://jfra.jp/cfr/training/

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Profileこの記事を書いた人

徳永 洋子 Yoko Tokunaga

認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 理事

東京都出身。大学卒業後、三菱商事に勤務。1998年から日本フィランソロピー協会で視覚障害者向け録音図書のネット配信事業「声の花束」を担当。2000年よりシーズ・市民活動を支える制度をつくる会で、おもにNPOのファンドレイジング力(資金調達力)向上事業に従事。そのプロジェクトの一環として、日本ファンドレイジング協会設立を担当し、2009年2月、同協会設立と同時に同協会事務局次長となり、2012年6月より2014年末まで同協会事務局長をつとめた。現在、同協会理事。2015年2月にファンドレイジング・ラボを立ち上げた。

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