投稿日:2021年7月30日

パンデミック時代でも、人とのつながりを途切れさせないオンラインを活用したファンドレイジング|特集・世界のファンドレイジングの今〜AFP ICON2021からの学び

鎌倉 幸子
認定ファンドレイザー
かまくらさちこ株式会社代表取締役

米国で毎年開催される世界最大のファンドレイジング大会「AFP ICON」、今年6月にオンラインで開催されたAFP ICON2021に参加した5人のファンドレイザーが、それぞれの視点で世界のファンドレイジングの今を伝えます。

パンデミック時代でも、人とのつながりを途切れさせない
オンラインを活用したファンドレイジング

かまくらさちこ株式会社代表取締役 鎌倉 幸子(認定ファンドレイザー)


2021年6月28日~30日の3日間、AFP(Association of Fundraising Professionals)主催で行われたICON(International Conference on Fundraising)に参加しました。私はかすかな期待を込めて、現地参加の枠で申し込んでいましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大が収まる見通しがないため、オンラインのみの開催となりました。

会場の熱気を感じられないのは残念でしたが、期間限定で後追い視聴ができるため、日本の真夜中に眠い目をこすりながら受講する必要もありません。また同じ時間に2つ以上関心のあるセッションがある場合でも、両方視聴できるためより多くの学びをいただきました。

新型コロナウイルス感染症の影響で、私たちの外出や対面での接触はいまだに制限されています。しかし、それはすべて「負」なのでしょうか。オンラインを活用すれば時間や距離を越えてコミュニケーションをとることが可能となりました。

パンデミックはまだ終息の見通しが立っていません。そんな中、オンラインの可能性を活かせるか否かで、大きな差が生まれてくるのではないか―そんな思いがあり、ウェブサイトの構築、クラウドファディング・Peer-to-Peer(個人が個人に呼びかけて団体の寄付を集める手法)などのオンラインを活用したファンドレイジングのセッションを中心に受講しました。そこでの学びを紹介します。

つねに「人」が中心であること

オンラインの活用と聞くと「すぐ役に立つテクニック」を教えてくれるイメージがあるかもしれませんが、どのセッションでも重要視していたのが「人」を考えぬくことです。

いままでかかわってくれている人は誰か、これから支援をしてほしい人は誰かを考え「ペルソナ」を設定し、その人はどんな人で、どこから情報を得ているのか、どのような情報が届けば心を動かしてくれるのかを抑えます。

届く手法を用いて届けたい人に届けたい情報を伝えるにはどのようにすればよいのかを確定させた後、クラウドファンディングのページの制作などの作業に入りましょう。

使うべきツールはみんな同じではない

Z世代(0~21歳)、ミレニアム世代(22~37歳)、Y世代(38~53歳)、ベビーブーマー(54~72歳)と世代ごとで使っているツールが異なります。

Z世代はほぼ全員がスマートフォンを持っており、インターネットへのアクセスはほとんどがスマートフォンを活用しています。逆に、ベビーブーマー世代はディスクトップを好んでいます。

また、世代ごとに使っているソーシャルメディアも異なります。「Crowdfunding: You Reap What You Sow」のセッションではよく使われるソーシャルメディアとして

・Z世代:Instagram、YouTube、Snapchat
・ミレニアム世代:Tumblr、Instagram、Pinterest
・X世代:YouTube、Twitter
・ベビーブーマー世代:Google+、LinkedIn

が、挙げられていました。

(※注)このセッションの資料の中にはFacebookについての記載がありませんでしたが、他のセッションではオンラインキャンペーンの拡散のためFacebookの活用が示されていました。

日本でも総務省が毎年出している「情報通信白書」の中に世代ごとのソーシャルメディア活用が示されている年があるので、それを参照し届けたい世代が使っているメディアを活用して情報を届けていきましょう。

ストーリーとインパクトを伝え、アクションにつなげる

クラウドファンディングのページをつくるとき、自己紹介の欄に団体の説明、そのあとに活動の紹介を書いて公開していませんか。

近年、日本でもオンラインを通じたファンドレイジングに人が参加・支援をする原動力は「困難な中にいる人に何かできないか」「がんばっている人を応援したい」「未来へ投資をしたい」という思いなのではないでしょうか。

セッションではページに入れるべき情報として以下のポイントが挙げられていました。

ヒーローメッセージ
トップに表示している写真に、団体が何をしているのか、その本質を表す短い文章をいれると、読んでいる人に強い印象を与えます。

ストーリー
ストーリーを見たり、聞いたりすると、その状況をイメージしやすくなります。関係者の声、現場の状況、活動の様子を「ストーリー」として語りましょう。YouTubeなどの動画を活用するとイメージが伝わりやすくなります。

団体の活動
具体的に行っている活動を説明します。

活動がもたらしたインパクト
活動が社会に与えたインパクトを示します。

起こしてもらいたいアクション
ここまで読み進め、関心を持った人に起こしてもらいたい具体的なアクションを示します。

オフラインでもオンラインでも伝えることに変わりはない

オフラインでもオンラインでも変わらずに伝えるべきことは支援者へのお礼です。

気持ちのこもったお礼を、迅速に伝えることで、寄付者の満足度が向上します。オンラインを活用すれば、寄付を受け取ってからすぐにコミュニケーションをとることが可能となります。

このように「人を想い」ながら、オンラインの強みを活かしたアプローチすることで、より強いきずなが生まれることもあるでしょう。

パンデミック時代はまだ続きそうです。終息したとしても、私たちの変化した習慣が完全に元に戻ることはないのではないでしょうか。

倫理観などファンドレイジングの原則を抑えながらも時代、時代にあった手法を活用していくのがこれからのファンドレイザーの役割だと、改めて考えるきっかけになりました。

【関連記事】特集・世界のファンドレイジングの今〜AFP ICON2021からの学び
情報(データ)の活用で加速する日本のファンドレイジング
行動科学から読み解く支援者目線のファンドレイジング
パンデミック禍でも増加する遺贈寄付
大学生の目で見る世界のファンドレイジング

Commentsコメント

Profileこの記事を書いた人

鎌倉 幸子

認定ファンドレイザー
かまくらさちこ株式会社代表取締役

青森県弘前市生まれ。アメリカ・ヴァーモント州のSchool for International TrainingでInternational and Intercultural Management修士号取得。1999年3月、シャンティ国際ボランティア会に入職。プロポーザル作成・申請・報告を担当。また法人営業、マンスリーサポーター、クラウドファンディングなど幅広いファンドレイジングを展開してきた。2016年1月より現職。ソーシャルセクターのファンドレイジングや事業計画から評価までの事業運営全般に対するコンサルティングを行っている。
寄付月間アンバサダー(青森県)/特定非営利活動法人本の学校 理事/公益社団法人シャンティ国際ボランティア会専門アドバイザー/特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)広報・ファンドレイジング分野専門アドバイザー
Web:https://sachi3.com/
Twitter:https://twitter.com/1192_sachiko

会員限定コンテンツを読むために

ファンドレイジングジャーナルオンラインを運営する「日本ファンドレイジング協会」とは?

より良い記事をお届けするために、
皆さまからのご意見をお寄せください

※いただいたご意見には全て対応できない可能性がございますので予めご了承ください。