
「資金調達に課題はある。だけど、なかなかファンドレイジングに取り組む一歩が踏み出せない」―そんな声をよく耳にします。
本シリーズでは、実践プログラムに取り組んだ団体とファンドレイザーの皆さまにご協力いただき、現場で得られた成果や学びを紹介します。実際の体験談が、これから挑戦する団体やファンドレイザーにとって大きなヒントとなり、必要とする活動に必要な資金が届くチャレンジが、さらに広がっていくことにつながればと思います。
___ファンドレイジングに取り組もうと考えた理由は何でしたか?
私たちは大阪でフリースクールを運営しており、活動10年目を迎えました。これまでの資金調達は主に助成金に頼っており、寄付を集めるための基盤は十分に整っていませんでした。クラウドファンディングの経験も一度きりで、団体内にはファンドレイジングの必要性への理解が十分に浸透していないという課題がありました。そんな中でこのプログラムを紹介していただき、「組織としての基盤強化を図りたい」という思いから参加を決めました。
プログラム参加にあたっては、ちょうど助成金の採択が決まっていたため、それを活用しました。助成金の申請書の中に「ファンドレイジングに取り組む」という内容を盛り込んでいたこともあり、本プログラムの趣旨と目的がぴったり合致していたため、スムーズに参加を決めることができました。
___プログラムを通じて、どのようにチームづくりや組織の変化が進んでいったのでしょうか?
プログラム参加後は、2名のファンドレイザーと共に団体内に「ファンドレイジングチーム」を立ち上げ、各拠点からメンバーを集めて、7名の内部メンバーと2名の外部ファンドレイザー、計9名で取り組みを進めました。まずは自分たちのビジョン・ミッションの明確化からスタートし、団体の存在意義や目指す方向性を整理しました。その後、活動の柱ごとにチームを編成し、それぞれが主体となってキャンペーンを実施しました。
特に印象的だったのは、ファンドレイザーによる丁寧なヒアリングです。日々の活動を言葉にして伝える過程で、自分たちの強みや価値を再認識することができ、現場のメンバーも「自分たちはこんなに意義ある活動をしていたのだ」と誇りを持つようになりました。このプロセスを通して、組織全体に「寄付をお願いする意識」が芽生え、日常の活動の中にファンドレイジングを取り入れる文化が根づきました。
最終的に挑戦したクラウドファンディングでは、目標金額180万円に対して193万円(達成率110%)を集めることができました。これまで代表一人が中心となって支援者に声をかけていましたが、今回は多くのメンバーが関わり、小さな金額を多くの方から集めることに成功しました。この成果は金額以上に、組織全体で寄付を呼びかける力を獲得できたという点で非常に大きな意味がありました。
このプログラムは単に資金を集めるためのものではなく、団体の基盤を強化し、ファンドレイジング文化を組織に根づかせるための貴重な機会です。100万円もの投資をした経験がなかったため、投資に見合う効果が出せるのか正直不安はありましたが、結果的に、挑戦して本当によかったと感じています。参加を迷っている団体には、「ぜひ一歩を踏み出してほしい」と伝えたいです。
___参加には負担もあったと思いますが、それでも得られた価値や成果はどのようなものでしたか?
当団体では、本プログラムをきっかけに7名のファンドレイジングチームを新たに立ち上げました。メンバーはいずれも現場で活動するスタッフであり、通常業務と兼務していたため、一定の負荷はありました。
週1回のオンラインミーティング(1時間〜1時間半程度)に加え、イベント企画やクラウドファンディングの企画・実施など、実際のファンドレイジング活動に要する時間は1人あたり週1〜4時間程度でした。それでも、チームとしての一体感や新たな学びが得られたことが大きな成果となりました。
プログラム終了後も、伴走いただいた2名のファンドレイザーとは業務委託契約を締結し、継続してサポートをお願いしています。
契約内容としては、月に2回までの伴走支援を実施していただき、主にファンドレイジングチームの定例ミーティングに参加しながら、今後の資金調達計画や組織内の体制強化に向けた助言を行っていただいています。プログラム期間中に築いた関係性を継続し、実践の質を維持・発展させていくことを目的としています。
本プログラム担当ディレクター 岩元 暁子からの一言
ラシーナさんの挑戦から伝わってくるのは、「ファンドレイジングは、代表ひとりの努力ではなく“組織の力”でつくっていくものだ」ということです。日々の活動に向き合うスタッフが、自分たちの価値を言葉にし、仲間とともに寄付を呼びかける自信が持てたのは、今後を見据えると、金額以上の成果だと思います。外部ファンドレイザーの伴走は、その“組織としての前進”を後押しする大きな力になります。迷いがある団体にこそ、この変化の手応えを感じてほしいと強く思います。
組織としてファンドレイジングの強化を目指す方へ
【連載記事】7ヶ月間の実践の現場から ~ファンドレイジング実践プログラム参加レポート
愛媛大学医学部編: https://jfra.jp/fundraisingjournal/6552/
志塾フリースクールラシーナ編:https://jfra.jp/fundraisingjournal/6566/
夢職人編:https://jfra.jp/fundraisingjournal/6568/
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