
「資金調達に課題はある。だけど、なかなかファンドレイジングに取り組む一歩が踏み出せない」―そんな声をよく耳にします。
本シリーズでは、実践プログラムに取り組んだ団体とファンドレイザーの皆さまにご協力いただき、現場で得られた成果や学びを紹介します。実際の体験談が、これから挑戦する団体やファンドレイザーにとって大きなヒントとなり、必要とする活動に必要な資金が届くチャレンジが、さらに広がっていくことにつながればと思います。
___今回の挑戦に踏み出した背景やきっかけを教えてください。
私たちは、大学としてファンドレイジング文化を醸成し、持続可能な資金調達の仕組みを築くため、「ファンドレイジング実践プログラム」への参加を決意しました。背景には、大学運営交付金の減少という厳しい現実があり、外部資金の確保が急務となっていたことがあります。そのような状況の中で本プログラムを知り、団体とファンドレイザーが協働して「成功体験をつかむ」というメッセージに強く共感し、参加を決めました。
プログラム参加以前、医学部支援基金委員会(委員長:医学部長) では、これまで十分な活動が行われておらず、学内でもファンドレイジングに関する認識は必ずしも十分ではありませんでした。しかし、現医学部長が寄付の必要性を認識されていたことが後押しとなり、大学としての意思決定プロセスを経て、組織的に本プログラムへの参加を決定しました。
___ファンドレイザーとの協働を通じて、組織やチームにどのような変化がありましたか?
プログラム期間中は、2名のファンドレイザーと協働しながら、大学のホームページ改修やクラウドファンディングの実施など、具体的な取り組みを進めました。クラウドファンディングでは、医学部の学生が主体となって活動し、最終的に374万円 を集めることができました。これは大きな成功体験となり、学内に「寄付を集めることは可能だ」という実感と自信をもたらしました。また、ふるさと納税の導入に向けて自治体との協議も進み、資金調達の新しい道筋を開くことができました。
特に印象的だったのは、週1回の定例ミーティングを通じて、学生や事務スタッフも交えたチームとして議論を重ねられたことです。ファンドレイザーは常に「ファンドレイジングの視点」で物事を捉え、私たちに新しい発想や視野を与えてくれました。その専門性と伴走は大きな刺激となりました。
振り返れば、このプログラムは単に資金を得るためのものではなく、組織として成長するための「きっかけ」でした。自分たちだけでは動かせなかったことが、外部の力を取り入れることで現実の成果へとつながり、学内に前向きなマインドが生まれました。
___プログラム期間中は、どのくらいの業務負荷がありましたか?
事務担当者の平均的な関与時間は、週あたり約3時間、私自身は、週あたり約8時間程度 の業務負荷でした。クラウドファンディングを実施した学生については、正確な時間数は不明ですが、準備・広報活動に一定の時間を割いていたと考えられます。
当初は「参加費用の100万円以上の寄付という結果を必ず出さなければ」というプレッシャーがありました。さらに、大学との契約手続きの関係で、実際に活動が開始できるまでに時間を要したこともあり、スタート時点では結果が出せるか不安を抱えていたのも事実です。
しかし、プログラムが始まると、ファンドレイジングの考え方やプロセスについて知らないことが多い中、2名のファンドレイザーの方が丁寧に疑問点を解消してくださり、安心して取り組むことができました。その結果として良い形で半年間を終えられたことは、非常に大きな収穫でした。
___プログラム終了後、どのような形で取り組みを継続しているのでしょうか?
プログラム終了後も、私たちは2名のファンドレイザーの方と継続して契約を結び、協働を続けています。
1名のファンドレイザーとは、寄付獲得のためのランディングページ制作を目的として契約しており、週1回のミーティングや進捗確認を行いながら、効果的な情報発信や寄付者へのアプローチ方法について伴走していただいています。
もう1名のファンドレイザーとは、「愛媛大学医学部支援基金等におけるファンドレイジング力向上に関するコンサルティング業務」として契約しています。主な業務内容は、寄付者像の解析、ファンドレイジングに関する助言や補助、イベント企画のサポート、さらに学内向けのファンドレイジング勉強会などの開催など、多面的に関わっていただいています。こちらも週1回の定例ミーティングを重ねながら、大学としてのファンドレイジング力の底上げを進めています。
___今後はどのような取り組みを行いたいですか? また、参加を検討している団体に向けてメッセージがあればお願いします!
今回の取り組みを通じて、学内でも徐々にファンドレイジングへの理解や意識の変化が芽生えてきました。今後は、この変化を一過性のものにせず、ファンドレイジング文化をさらに広げ、継続的な資金調達の基盤を強化していきたいと考えています。
ファンドレイザーのお二人には、これまでにも愛媛を訪問いただき講演を行ってもらいましたが、今後も現地での講演や支援活動を依頼し、学内のファンドレイジング文化の定着とスキル向上につなげていきたいと考えています。
参加を迷っている団体には、「まず一歩踏み出してみること」を心からお勧めします。ファンドレイザーと協働することで、自分たちだけでは気づけなかった視点や方法に出会えますし、確実に組織の変化を実感できるはずです。その一歩が、新しい可能性と仲間をもたらしてくれると思います。
本プログラム担当ディレクター岩元 暁子からの一言
「自分たちだけでは議論や実行が前に進まない。」そんな壁に直面する団体は少なくありません。そこに外部の視点、そしてファンドレイジングに特化した専門性が入ることで、新しい道筋が見え、“できる”という確かな手応えが生まれます。
今回の取り組みからも、外部人材が関わる意義と組織の変化がはっきり感じられました。本シリーズを読んでくださっている皆さまにも、行き詰まりを感じたときこそ、一歩踏み出す勇気を持っていただければと思います。
組織としてファンドレイジングの強化を目指す方へ
【連載記事】7ヶ月間の実践の現場から ~ファンドレイジング実践プログラム参加レポート
愛媛大学医学部編: https://jfra.jp/fundraisingjournal/6552/
志塾フリースクールラシーナ編:https://jfra.jp/fundraisingjournal/6566/
夢職人編:https://jfra.jp/fundraisingjournal/6568/
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