帰国報告会の中で「日本のNPOが成果志向の組織へ変わるときにつまずくポイントはなんですか?」というご質問をいただきました。その場にいらっしゃった参加者と議論し、成果志向の組織へ変わるときにつまずくポイントを5つにまとめてみました。
世界ファンドレイジング大会レポート第4弾として、その「5つの壁」をご紹介したいと思います。
1つ目の壁:「成果」を追求する気がない
サークルや同好会など、社会課題解決を必ずしもミッションにしていない組織もあります。そういった組織はそもそも集い、活動すること自体が「成果」なので「追求」ということではないでしょう。一方で、本来であれば「成果」を追求したい・しないといけないと思われている組織でありながら、そうできていないということもあります。そういった場合は、周囲からの「外圧」が解決策として有効になるでしょう。NPOなどの公益組織が成果を追求する覚悟や姿勢でないと感じたら、その組織の支援者や助成財団、企業などの資金の出し手、そして何より受益者からの訴えが有効な解決策になると考えています。
2つ目の壁:自団体の「最終成果」が定義できない
ドラッカーはNPOを「自ら成果を定義しなければならない存在」としています。営利組織とは異なり、利益や売上だけでは成果が測れないためです。しかし、自らが出すべき最終的な成果を定義できている公益組織は決して多くはありません。また、「受益者がハッピーな状態」や「教育の質が向上した状態」という様々な捉え方ができる文言で成果を定義している場合もあるかもしれません。成果を出そうと考えても、自団体が出すべき成果が明確に定まっていなければ、求める成果を出すことはできません。その場合、そもそも自団体がどういう社会を実現したいのか、誰の役にたちたいのかを再度整理する必要があるでしょう。団体内でミッションを再定義したり、受益者にインタビューをしたりしてみるのもよいかもしれません。
3つ目の壁:具体的な「成果指標」が設定できない
自団体が出すべき最終成果が定義できたとして、次はそれを達成するための具体的な成果指標を設定する必要があります。例えば、「犬が殺されることのない日本社会を実現する」という最終成果があったとして、それを達成するために「捨てられる犬を○○頭に減少させる」や「全国に犬の保護施設を設置し、毎年○○頭を保護する」などの具体的な成果指標たてられるかもしれません。具体的でかつ測定可能な成果指標を設定することで、成果が出ているのか出ていないのか、最終成果にどれくらい近づけているのかを判断することができます。具体的な成果指標をどう設定すればいいのか分からない場合は、自団体が解決すべき問題の構造分析ができていない、問題解決仮説がたてられていない場合が多いです。自団体が取り組む社会問題の問題構造分析・問題解決仮説の再整理をオススメします。
4つ目の壁:「成果指標」を測定する手段を持っていない
具体的な成果指標を設定できたとしても、それを定期的に測定できなければ意味がありません。先程の例で言えば、「捨てられる犬を○○頭に減少させる」という指標をどう測定するか?という壁が出てくるでしょう。測定方法は、行政が出している既存の外部データを用いる、自団体独自や他団体と共同で調査を実施するなどの方法が考えられます。自団体独自で調査をする場合は、数多くのデータを集めることは難しいかもしれませんが、「白書」を作成することなどが有効でしょう。プロボノや中間支援団体が実施するリサーチ支援の力を活用できるとより効果的かもしれません。
5つ目の壁:「成果」を伝えられない
地道に活動を行い、誇るべき成果を出している団体は数多くあるはずです。しかし、その成果が受益者や支援者、社会全体に伝わっていないことがあります。既存支援者に感謝を伝え、新しい支援者を増やし、さらに成果を出していくためにも、正しく成果を伝えていく必要があります。そのためには、自団体で広報する「伝える力」が必要になってきます。その支援の一つとしてあいちコミュニティ財団さんが「ツムギスト」という取り組みもされています。
以上が、成果志向の組織へ転換するときにぶつかる5つの壁です。
ちなみに「成果を出せない」というのは論外なので省いています。頑張ってください。
他にもいろいろな課題があると思いますが、自組織がどこで躓いているのかを整理し、どう乗り越えていくのかを考えることで、活動の成果をさらに出すためのヒントとなれば幸いです。
次回は、最終回「ファンドレイザーのキャリアプランニング」に続きます。
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