投稿日:2015年8月7日

【レポート】いよいよ動き出す、遺贈寄付

7/30 第四回ファンドレイジングサロン~いよいよ動き出す、遺贈寄付~

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日本の年間相続額は37兆円~63兆円あるともいわれており、さらに40歳以上の約24%が相続の一部を寄付してもよいと寄付白書2013の調査でも回答しています。
しかし、実際の遺贈寄付額の全体は明らかになっておりませんが、約200億円ともいわれております。
遺贈寄付への取り組みが進んでいる欧米諸国では遺贈寄付収入が、寄付収入全体の50%になっている団体もでてきており、今後日本においても拡大していくことが予想されています。

 一部を寄付しても良いと考えている人と実際に寄付する人との間に存在するギャップ。このギャップが生まれる理由として、機会とマッチングの仕組みがない、遺贈寄付のトラブル回避の方法が分からない、成功体験が見えていないなどのの課題があります。この課題を踏まえて、実際に遺贈に関わっている3名の方から話を聞きました。(スピーカープロフィールは、下部をご参照ください)

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やがて大木に
国境なき医師団の荻野さんからは、遺贈寄付の難しさ、フィードバックの仕方、戦略について、ご説明頂きました。
増える傾向にある遺贈寄付ですが、一足飛びに結び付けるというよりは、寄付者との普段からの関係作りを地道に続けていく中で、最終的に遺贈寄付につなげており、「植林」をするイメージで、長期的な視野をもち、取り組んでいるとのこと。

気持ちに寄りそう
弁護士の芝池さんからは、遺贈寄付のコツと落とし穴について、実際に相談者に接する立場として、具体的なお話しを伺いました。入口であるNPO等が遺贈寄付について、正確且つ親切丁寧な説明が出来るかどうかが重要とのこと。ここでつまずくと、別の方向に誘導され、潜在的寄付者を逃してしまう可能性が高くなります。また、実際の寄付金の使途について、具体的にイメージできると良いとのことです。結局のところ、遺贈寄付をする意思のある方に安心感を与え、気持ちに寄り添うことが最も重要であるとお話くださいました。

地域のお金を、地域で循環させる
あしなが育英会の山北さんの説明でも、近年は遺贈寄付の増加傾向にあるとのことでした。ここでも本人の希望に寄りそうことを重視しています。遺言執行者が弁護士や信託銀行の場合、半分のケースが事前にチェックしているので、遺贈を受けることに不安を抱くことはないと、これまでのご経験から感じておられ、遺贈寄付にも地域のお金を、地域のためにつかっていく考えをしっかりもって取り組んでいきたいとのことでした。

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手を取り合って
遺贈寄付は今後も増える傾向にあり、団体にとって、重要な資金源になる予感がする一方、文化が定着するまでには、解決しなければならない課題があり、もう少し時間がかかりそうです。遺贈寄付をしたいという方たちの気持ちに寄り添うためにも、入口での役割が大きいことが良く分かりました。
過渡期である今は、遺贈に関わるそれぞれの立場で助け合いながら、質を高める努力をし、全体の底上げを図っていくことが重要になりそうです。最終的に全体的な広がりを見せ、遺贈寄付をする人、受ける人が相互に幸せを感じ、それを見て育った子供たちが将来、地域に還元していこう思える社会になるよう、皆さんと一緒に盛り上げていけたら嬉しいです。

(ライターインターン 坂上玲子)

●スピーカープロフィール(順不同、敬称略)
荻野一信
(特定非営利活動法人 国境なき医師団日本ファンドレイジング部シニアオフィサー)
横浜国立大学大学院 国際経済法学研究科開発協力コース修了(国際経済法学修士)、17年間の外資系企業勤務を経て、国境なき医師団日本に入団。
遺贈・相続財産の寄付及びメジャードナー(大口支援者)を担当。

芝池俊輝
(弁護士 弁護士法人東京パブリック法律事務所三田支所代表)
2002年に弁護士登録した後、札幌及び東京にて、家事、労働、医療の分野を中心に扱う。現在は、東京弁護士会の支援・協力によって設立された公設事務所に所属し、外国人事件や国際的な案件も多く取り扱っている。また、NPOのための弁護士ネットワークの理事として、NPOに対する法的支援にも携わっている。

山北洋二
(あしなが育英会 常勤監事、特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 理事)
高校・大学時代に、視力障害の学生への朗読サービス、献血推進のボランティア活動に参加。
1971年(大学3年生)に交通遺児育英の街頭募金に初めて参加したのきっかけで、72年に設立3年目の財団法人交通遺児育英会に就職。当時はNPOなんて言葉が無い時代で、周囲からは”まともな就職先”とは見られなかった。19年後の91年10月に交通遺児の恩返し運動で始まった「あしなが育英会」発足時の事務局長に就任。95年に理事、06年に常勤監事に就任。

●ファシリテーター
鵜尾雅隆
(特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会 代表理事)
国際協力機構、米国Community Sharesを経て、ファンドレイジング戦略コンサルティング会社(株)ファンドレックス創業。日本ファンドレイジング協会の創設に携わる。米国ケースウエスタンリザーブ大学非営利組織経営管理学修士、インディアナ大学The Fundraising School修了。寄付10兆円時代の実現に向けて、NPO・公益法人のコンサルティング、研修、講演などに全国各地を奔走中。著書に「ファンドレイジングが社会を変える」など。

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ファンドレイジングサロンとは、毎回テーマに沿ったスピーカーをお呼びし、ファンドレイジングに関する旬なお話をしていただく協会会員限定の企画です。
お酒と軽食を食べながらリラックスした雰囲気で、ネットーワキングと学びを深める場として、毎回好評をいただいております。
次回は、9月を予定。詳細は、ウェブサイト、メルマガ、facebookなどでご案内いたしますので、是非、チェックしてください!

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