アメリカ赤十字社でファンドレイザーとしてご活躍されているタイスリーさんにお話を伺いました。彼女のファンドレイザーとしての社会的使命や理想のNPOの形とは?
寄付者に思いが伝わるように、世代によって、寄付のお願いはもちろんお礼の方法も工夫している
赤十字は、戦争や天災時における傷病者救護活動を中心とした団体ですが、各地での紛争や自然災害が終わりを迎えることはなく、日々、どのようにサポートを必要としている人に、必要とされている支援を届けるのかということを考えて活動をしています。私は、ファンドレイザーとして、ここ最近特に意識をしているのは、世代に合わせたコミュニケーション方法をとることです。また、アメリカは人種も多様なので、様々な寄付の機会を設けています。例えば、10~20代は携帯電話で、30~40代はface-to-faceのコミュニケーションをはかるなど、世代に合わせたコミュニケーションの最適化を試みています。
また、寄付の依頼するときだけでなく、寄付の御礼も同様です。例えばアメリカの場合、若い世代は環境などに関心が高く、一方でシニア世代は家族や教育、軍隊についての関心が高いという傾向があり、世代によっても相手の関心を捉えやすいテーマも異なるので、寄付者側の立場になり、どういった方法でコミュニケーションをはかると伝わりやすいのかを一番に考えることが大切だと考えています。
実際に寄付をする年齢よりも下の世代へのアプローチも大切な理由は、早くからコミュニケーションを重ねることで団体に親近感をもってもらい、彼らが実際に寄付を考える立場にたったとき、一番に思い出してもらうことができるからです。彼らが寄付を考えはじめるような年齢になったときに初めて知った団体と昔から馴染みがある団体では、心理的な信頼感が違います。このように早期からのコミュニケーションをとることは遺贈寄付にもつながってきます。
寄付の持つ価値を理解してきている
アメリカでは以前はすべての財産を親から子へと相続させるのが一般的でした。しかし最近では自立的な思考が高まっており、子どもを大学に進学させたらその後の生活は、自分でできるということを前提に、財産の一部を非営利組織に寄付するなど、財産を身内だけでなく社会とシェアする文化が生まれています。これは、これまでに非営利組織が「あなたの寄付で、どのような大きな変化を起こせるか」についてきちんと説明を行ってきた成果だと思います。社会や人々が寄付の価値を理解しはじめているのです。またアメリカでは寄付をするとその分は税金が免除される仕組みがあり、それが寄付文化を支えていることもあります。ただ、どのように寄付先を決めるかについてはもう少し寄付者にも洞察力が必要だと思っています。
自らの価値観に基づいて、寄付先を選んでほしい
潜在的な寄付者も含めて寄付者には、自分の価値観にしたがって非営利組織を評価してほしいと思っています。
アメリカにはチャリティナビゲーターという非営利組織を点数化し評価するサービスがあり、多くの寄付者が寄付先を決めるのにここでの評価を考慮しています。ただこの評価は、非営利組織の提供しているサービスの質や社会に対するインパクトを必ずしも反映しているとは限りません。たとえば、ソーシャルワーカーや看護師など人を多く雇わなくてはいけない活動の場合、人件費がかさみます。つまり管理コストが高いので、良いサービスを提供していてもチャリティナビゲーターの評価は低くなってしまうという現状です。わたしたちファンドレイザーは、こういったこともあり、評価に関する議論を促進させようとしています。こういった評価自体は、寄付者が寄付先を選ぶ一つの指標を示すことができるので便利ではありますが、適切な評価でない場合、メディアでも一見ネガティブにみえてしまう部分だけが強調される場合もあり、ファンドレイザーにとって高い壁にもなっているのも事実です。
寄付者とともに、長期的なサポートを届けていきたい
9.11同時多発テロでは、多くのメディアが連日のように報道していたので、それらを見た人々は何かできないかと考えますので、私たちは、心が動いた時にすぐに行動にうつせる携帯電話での寄付を呼びかけたのです。集まった寄付は、埋葬のための資金援助、大黒柱を失った家族の生活援助、NYを離れ住居を探している人のための援助、カウンセリング等様々な用途に使われ、集まった寄付はあっという間に底をついています。その一方、こういった人災は、特にカウンセリングなど長期にわたるサポートが必要になります。メディアでの報道もほぼなくなり、目に見えにくい活動の必要性をどう寄付者に伝え、長期的にコミットしてもらえるか、寄付者を教育していくという観点も、ファンドレイザーにとって重要な役割になります。
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