投稿日:2017年6月22日

第4回 Step 3 理事・ボランティアの巻き込み

徳永 洋子Yoko Tokunaga
認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 理事

多くのNPOにおいて、現状では、事務局、時には事務局長が孤軍奮闘してファンドレイジングを担っているというケースが多々あります。しかし、NPOの活動が、必ずしも事務局のマンパワーだけではなく、理事やボランティアの参画を得ながら社会の課題解決に取り組んでいるのと同様、ファンドレイジングにおいても事務局の枠組みだけではなく、組織一丸となってのファンドレイジングを行うことで、その成果も上がるのではないでしょうか。そこで、理事とボランティアにいかに協力してもらうかということが大切なポイントとなってきます。

ともすると、理事会は「ご意見番」、事務局が行っていること等の報告を受けて承認するだけの場となってしまいがちです。事務局主導で諸事業を推進していくことは余分な手続きや説明などを省けることからスピード感を得られて、ついつい、それで良しとしがちですが、それでは、理事会という貴重な経営資源の活用を放棄することになってしまいます。

そもそも、理事は、地域の有力者であったり、活動分野の有識者であったり、社会的地位の高い人が就任する場合が多く、そういう人たちが団体のファンドレイジングに対して積極的に関わってくれるとファンドレイジングがうまくいきます。

また、ボランティアはNPOにとって大変ありがたい支援者ですが、「寄付とボランティア」は全く別のものと考えて、ボランティアをファンドレイジングに巻き込んでいくということに違和感を覚えるむきもあるかもしれません。ファンドレイジング業務の補佐作業者というあたりまでは巻き込めても、主体的にファンドレイジングに尽力してもらう、あるいは、ボランティア自身に寄付者となってもらうといった展開に至っていない団体が多いのではないかと思います。

そこで、ここでは、理事やボランティアにどのようにファンドレイジングに協力してもらうか、そのために何をしたらいいかを考えてみます。

1)理事の協力

理事にできること…具体的には、潜在的寄付者を紹介してもらう、寄付依頼の訪問、あるいは訪問に同行してもらう、依頼状・感謝状への署名、電話かけなど、理事が活躍できる場面はたくさんあります。

そのためには次の2つがポイントとなります。

① 理事会構成バランス

理事会の構成については、様々な立場の人が理事となっていることが、その人たちの持つ能力や人脈の活用につながります。

団体の創設時は、「同じ思いで集まった人」が理事に就任することが多いと思われますが、新しい理事の選出に際しては、現在の理事の属性(専門性、経済力、知名度、時間的余裕、所属セクター等)をチェックして、少しずつ抜け落ちている属性を埋めるようにするといいでしょう。もちろん、団体立ち上げ時にバランスに配慮した理事会構成を整えられたらそれに越したことはありません。

表1は、そのチェックのためのものです。

表1

この表を見ると、まず経済界の人がいないことに気づきます。地域の商工会の属しているような理事、企業に属する理事がいたら、ファンドレイジングに際して企業への働きかけに協力してもらえるかもしれません。また、年齢的にもやや偏りがち。ジェンダーバランスもいま一つです。そういうことから、寄付の呼びかけに際しての広がりが狭まっている可能性もあります。退任する理事の後任を選ぶ際、理事会を拡大する際、欠けている要素を補うようにしてはどうでしょう。また、「時間的余裕」という項目も大事かもしれません。実際に理事に働いてもらうにはそういう立場の理事も重要になってきます。

②理事に協力してもらうための6つのポイント

・多角的に優秀な人材で理事会を構成する
①と重なりますが、いろいろな人材がそろうことで「これは私の役割」といった役割分担の自覚も生まれます。同じような人の集まりだと、「誰かがやればいい」になりがちです。

・やる気をもって就任してもらう
「お名前だけでも・・・」というような就任依頼をしていては、急に協力を依頼しても戸惑われてしまいます。何を期待されているかを理解して就任してもらうことが大切です。

・熱心で優秀なCEOがいる
これは言うまでもないことですが、がんばる事務局を見て、応援しようということになるわけです。

・CEOが理事を鼓舞する
理事への感謝と期待、これなくしては動いていただけないというものです。

・理事同士の交流の機会をできるだけ多く設ける
理事会の、団体との一体感があってこそ、協力しようという気持ちが生まれるというものです。

・実際に仕事をする機会を用意する
お願いしないことには何をしていいかわかりません。具体的にしてほしいことを伝えないで、「お金集めよろしく!」と言われても行動には移せません。

2)ボランティアの協力

ボランティアは、団体のミッションや活動内容に共感し、惜しみなく労力を提供してくれる強力な支援者です。同時に、ボランティアは次の点でファンドレイジングを行う上で大切な存在です。

①ファンドレイジング業務のサポート
②ボランティアが寄付者になる
③ボランティアが寄付者を連れてきてくれる

寄付者データベースの作成、印刷物の作成や発送作業といったバックオフィス業務はファンドレイジングには欠かせません。こういう手間のかかるところをうまく分担してもらえたら効率よくファンドレイジングができます。また、寄付依頼パンフレットやウェブ上の表記、送金方法などについて、ボランティアの人たちに「モニター」になってもらって率直な意見を聞いてみましょう。ボランティアの人が理解できないような内容では、おそらく外部の人の理解を得られはしません。

また、ファンドレイジングの過程にボランティアを巻き込むことで関係性が深まり、ボランティアが寄付者となる、あるいは寄付者を募ってくれるといったことも期待できます。

実際、図1のように、ボランティアと寄付には相関関係があります。ボランティアに対して寄付をお願いするのは申し訳ないと思ってしまいますが、「支援したい」という気持ちは、寄付という形をとることもあるということですので、その気持ちをいただく努力もしてみましょう。もちろん、平素の活動協力への感謝とともに、他の依頼とは別のお願いをする配慮は欠かせません。

図1

さらに、寄付をするきっかけとして、「知人から頼まれた」というケースは少なくありません。パンフレットやイベント案内などの配布をボランティアに託してみてはどうでしょう。「あなたが応援しているところなら安心して応援できる」と思ってもらえるかもしれません。これまで接点のなかった人たちへのアプローチの機会となります。

次の記事(「第5回 Step 4 コミュニケーション方法や内容の選択」)はこちら

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Profileこの記事を書いた人

徳永 洋子 Yoko Tokunaga

認定ファンドレイザー
日本ファンドレイジング協会 理事

東京都出身。大学卒業後、三菱商事に勤務。1998年から日本フィランソロピー協会で視覚障害者向け録音図書のネット配信事業「声の花束」を担当。2000年よりシーズ・市民活動を支える制度をつくる会で、おもにNPOのファンドレイジング力(資金調達力)向上事業に従事。そのプロジェクトの一環として、日本ファンドレイジング協会設立を担当し、2009年2月、同協会設立と同時に同協会事務局次長となり、2012年6月より2014年末まで同協会事務局長をつとめた。現在、同協会理事。2015年2月にファンドレイジング・ラボを立ち上げた。

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