投稿日:2024年12月17日

どこに寄付していいか分からないを社会からなくす~ 「認定NPO法人」を鍵に信頼の土壌をつくる挑戦

「寄付・社会的投資が進む社会の実現」に向けて、当会とともに挑戦するスペシャルパートナーであるリタワークス株式会社は、NPOや病院などに特化した複数のITサービスを展開しています。そのグループ会社であるコングラント株式会社は、NPOの資金調達を支援するクラウド型寄付管理システムを提供し、NPOと寄付者をつなぐ仕組みづくりに取り組んでいます。今回の対談では、お二人が描く寄付市場の未来像と、日本全国のNPOの活動と寄付者へ橋渡しするためのチャレンジについて、その想いを伺いました。

リタワークス株式会社 代表取締役・共同代表 中川 雄太

1992年生まれ、大阪出身。京都産業大学経営学部にて大室悦賀准教授(現長野県立大学教授)にCSRを学ぶ。大学卒業後約5年間、働く環境の総合商社で法人営業としてオフィス空間提案やICTでの業務改善提案を行う。2020年からリタワークスへ参画し、営業・ディレクターを経て2022年10月より同社経営陣へ参画。
コングラント株式会社 代表取締役CEO 佐藤 正隆

1980年生まれ、岡山県出身。2008年にWEB制作・システム開発のリタワークス株式会社を創業。同社の新規事業として寄付募集・決済・CRMのデジタル・ファンドレイジングシステム「コングラント」を開発し、2020年5月にリタワークス株式会社からコングラント事業をスピンオフし法人設立。代表取締役に就任。ジェネシア・ベンチャーズ、Sony Innovation Fund、KIBOW社会投資ファンド等からの投資実績あり。J-startup KANSAI、中小機構 FASTERに採択。東洋経済「すごいベンチャー100」2024に選出。

(聞き手)日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾 雅隆

「サービス提供の枠を超えて」寄付市場を進化させたい

鵜尾:両社とも、NPOのファンドレイジングに必要不可欠なサービスを提供しており、多くの団体に認知され、利用されています。ただ、今日はそうしたサービスの紹介にとどまらず、これからお二人が描いている未来や、寄付市場を発展させるための新たなチャレンジについてお話を伺いたいと思います。

中川:私たちは、ウェブサイトやオンライン寄付の仕組みをNPOの皆さんに提供することで、その団体の活動に関心を持ってもらい、支援を広げていくお手伝いをしてきました。しかし、今、私たちが注力したいのは、まだNPOに関心を持っていない人たちにも「NPOは信頼できる存在」であり、「もっと身近なもの」だと感じてもらえるようにすることです。一つひとつのNPOの活動が広く知られるよう支援を続けると同時に、寄付が社会の当たり前となる未来を目指して、挑戦を続けたいと思っています。そのチャレンジの一つが、「認定NPO法人」を中心に、データベースや情報発信の仕組みを提供しながら、活動や実績を社会全体にもっと分かりやすく伝えていくことです。


認定NPO法人データベース(https://data.congrant.jp/
全国の認定NPO法人が情報公開している情報をもとに財務情報を一覧化したもの

佐藤:コングラントの利用団体数は、サービス開始から7周年を迎える2024年、約2,800団体となります。(7周年サイトはこちら)ただ、今、私たちが注力しているのは、利用団体数を増やすことだけでなく、ファンドレイジングの質を高めることです。その中で鍵となるのは、認定NPO法人の皆さんにいかに活用していただけるかと考えています。現在、認定NPO法人の総数のうち約15%の団体に利用していただいていますが、この割合をさらに高めていきたいと考えています。そのためには、認定NPO法人の皆さんがより活用しやすい仕組みを提供し、ファンドレイジングの質を底上げする取り組みを進めていきたいと思っています。

「認定NPO法人」の可能性を解き放つ―取得しやすい環境づくり

鵜尾:認定NPO法人を取得する団体が増え、それを取得した団体がさらにファンドレイジングを進化させるという循環が、まだ十分に機能していないように思います。また、寄付者においても、寄付控除の仕組みについての認知はまだまだ低い状況です。認定NPO法人を取り巻く環境について、どのような課題を感じていますか?

中川:認定NPO法人になることのメリットを、NPO側だけでなく、社会全体に発信していくことは非常に大切だと感じています。認定NPO法人になるためには、これまでのNPOの認証段階から一歩進んで、情報の開示や届け出といった手続きが求められます。このプロセス自体が信頼の根拠を積み重ねることにつながっているのです。ただし、認定にかかる事務手続きが負担となり、ハードルを感じてしまう団体も少なくありません。私たちは、認定NPO法人であることの社会的な価値やメリットを広く伝えると同時に、団体が認定を取得しやすくするための手続き面でのサポートを強化していきたいと考えています。

佐藤:私たちは、認定NPO法人の制度がより活用しやすくなるよう、弁護士などの専門家と連携しながら、内閣府などへの働きかけを行っています。

クレジットカード寄付の受領日基準が改善され、税制控除の利便性向上へ
 
これまで、認定NPO法人の団体では、クレジットカードによる寄付について、寄付者が決済を行った「決済日」ではなく、決済代行会社から団体に入金される「入金日」を受領日として寄付金受領証明書(領収書)を発行する慣習がありました。このため、寄付者の認識とのズレが生じるほか、前年分の寄付金について確定申告で税制控除を申請できない問題が発生していました。
 
しかし、2023年12月22日、内閣府NPOホームページの「寄付金受領基準」に関するページで、「クレジットカードの決済日を寄付金受領証明書の受領日として扱える」ことが正式に明記されました。
 
(詳細はこちら

寄付市場の信頼と成長を支える鍵ー「認定NPO法人」の社会的認知を広げる

佐藤:認定NPO法人を取得したからといって、それだけで自動的に信頼が集まるわけではありません。ただし、例えば、私たちが提供するコングラントを利用する団体では、コングラントとクレジットカード会社の与信審査を通過していること自体が一つの信頼の証明となります。こうした仕組みも含め、社会全体で認定NPO法人への理解と信頼を広げていくことが、寄付市場を活性化するために欠かせないと考えています。
 
また、認定NPO法人の活動が社会でより一層信頼され、広く支援を得られるためには、一つの団体だけで成し遂げられるものではありません。その一環として、認定NPO法人同士が学び合い、ノウハウを共有できる「認定NPO法人のためのカンファレンス」のような場を作りたいと考えています。全国の団体が集い、成功事例や課題を共有することで、それぞれの活動の質を高め、認定NPO法人全体の成長を促進する場にしたいと思います。
 
私自身、企業の経営者と接する機会が多くありますが、「自社の本業に適した寄付先がわからない」「寄付先選定に必要な情報が不足している」という課題を非常に感じます。このような課題を解決し、地域課題や特定領域の見過ごされがちな課題に取り組む団体と企業が直接出会える機会をつくり、認定NPO法人を全国各地でさらに増やしていきたいと考えています。

中川:私たちは、NPOのファンドレイジングを支える新しい仕組みを生み出し、それを社会に広げていくことで、寄付市場全体の成長に貢献したいと考えています。ただし、私たちだけでは実現できません。多くの方々と力を合わせることで、初めて可能になると感じています。
 
認定NPO法人をはじめ、NPOの活動がもっと信頼され、支援を受けやすくなるためには、皆さんからの「こんな仕組みがあればいい」という要望や夢を共有していただきたいです。
寄付が社会の当たり前となる未来を目指して、一緒にチャレンジしていきましょう。


リタワークス株式会社は「寄付・社会的投資が進む社会の実現」に向けて、
当会と一緒にチャレンジするスペシャルパートナーです。

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